親友の好きな人(京楽 浮竹)
28.魂魄消失事件
浮竹と京楽は、いつもの居酒屋で酒を酌み交わしていたが、そこに千草の姿は無かった。
「千草はどうしたの?」
京楽は浮竹に酒を注ぎながら聞いた。
「さあ、忘れるなんて事はないと思うが……」
浮竹も心配そうだった。
男二人がダラダラ飲んでいると、1時間以上遅れて千草がやってきた。
「ごめんなさい。急な仕事が入って」
千草は申し訳無さそうに席についた。
「仕事なんて明日でもいいでしょうに…」
京楽が千草に酒を注いだ。千草は一気に飲み干すと、お猪口を置いて浮竹と京楽を見た。
「それがそうもいかないのよ…。原因不明の怪事件で」
「何があった?」
浮竹が声を潜めて千草に尋ねた。
千草は周りの気配を気にしてから、身を乗り出して京楽と浮竹にしか聞こえない声量で話した。
「流魂街の魂魄が『消えた』の、蒸発や神隠しじゃないわ。衣服だけ残して、体だけなくなった……今、総務と元柳斎様で調査部隊を計画してる。先駆けて先遣隊が10名出立したわ」
「それを送り込んでたのね…」
京楽は尻の後ろに手をついて、体を後ろに傾けた。目は何かを考えている風だった。
「それは今日知った事か?」
浮竹は変わらず身を乗り出して、声を低くして千草に尋ねた。
「流魂街に討伐に出た隊士が、草むらに落ちてる着物を見つけたの。全部帯が結んであったそうよ。住人の話では1月くらい前から同じ事が起こってるって……」
「何故気づけなかったんだろう。流魂街の魂魄は、遠隔で追跡できるだろう」
「遠隔で反応が出るのは魂魄が死亡…霊子に戻った時だけ、知らないうちに数だけ減っていたの」
「不気味だな……」
「……とにかく、私は休憩でここに来たけど、また戻るから、総務に」
千草は箸を手に取り、目の前の皿に手を出した。
「ひゃー、泊まり込みかい?」
「そうよ。原因が分かって解決するまで、全ての記録を取らないといけないから。先遣隊からの地獄蝶がいつ飛ばされてくるか分からないし」
千草はかき込むようにして、胃に食べ物を流し込んだ。千草が勢い良く飲み食いしている姿を、男二人はポカンと見ていた。
「勇ましいね、君の彼女」
「そうだろ」
「浮竹が可愛く見えてくるよ」
「やめろ」
食事を終えた千草はサッサと総務に戻って行った。
しかし朝になっても、先遣隊からの連絡は一切来なかった。
「先遣隊からの連絡が途絶えました。こちらの連絡にも反応ありません」
朝になると、千草は真っ先に元柳斎の元に向かい報告をした。
「そうか……九番隊に、調査部隊の派遣要請を出せ
」
「はっ」
千草はすぐに九番隊に連絡をし、調査部隊を向かわせた。
調査部隊が出立してすぐに、10着の死覇装が発見された。九番隊調査部隊はそのままその場に野営すると連絡が来た。
夕方、浮竹と京楽が総務に来た。二人は、菓子や寿司を差し入れに持ってきてくれて、総務部員は喜んで、代わる代わる食事をとった。
「状況は?」
浮竹が霊子観測計を見ている千草の横に立ち、顔を見ながら聞いた。
「まだ何も。先遣隊の遺族にも、連絡すらさせてもらえないの」
「死体がないと、死亡通達ができないからな……」
千草も浮竹も緊迫した様子で話し込んだ。その時、京楽の筋肉質な手が浮竹と千草の肩を掴んだ。
「そんな肩に力入れてたら、この先持たないよ、千草。ご飯食べてきなよ、僕らがいるうちに」
千草は京楽を見つめて、うなずいた。
「そうさせてもらうわ。ありがとう」
千草が食事に向かうと、京楽は浮竹に並んだ。
「…どう思うよ。この件」
「情報が、少なすぎるな」
二人は窓から外の景色を眺めた。
日が暮れ始めた頃、霊子観測計がけたたましく鳴った。
「総務官!!九番隊調査部隊の霊圧が……消失しました…………」
信じられないという声で、部下が報告した。その場にいた全員が立ち上がり、霊子観測計と報告した部下を見た。千草はすぐに斬魄刀を手にとった。
「消失した時刻と地点を特定して、皆は記録を続けて。私は総隊長に報告に行くわ」
千草は速やかに指示を出すと、扉に向かった。
「千草、俺が行こう。君は総務に残れ」
浮竹が千草を追い、遅れて京楽も立ち上がった。
「どちらにしても行くわ。全隊長に収集がかかるだろうし、事態が二転三転したら記録も正確な指示もできない」
隊首室に向かう階段で、後ろにいた京楽が千草に並んだ。
「千草。間違っても現場に出ちゃいけないよ。君は『最後の砦』なんだから」
「……分かってるわ」
3人は隊首室につくと、元柳斎に事の顛末を報告し、元柳斎は速やかに隊長を収集した。
元柳斎の指示で3人の隊長と1人の副隊長、そして鬼道衆の有昭田が現場に向かった。
千草が総務部に戻ろうとすると、夜一に呼び止められた。
「総務官殿、お忙しいとは思うが、一つお願いが」
「何?」
「総務部で、精霊艇の出入りを把握する事は可能かの?」
「ええ、逐一監視しているわ」
「これから精霊艇を出る者がいないか、見ていてほしい」
「……分かったわ」
千草は総務部に戻り、部下と共に全ての魂魄を監視していたが、精霊艇を出たのは指示が下ったメンバーだけだった。
浮竹と京楽は、いつもの居酒屋で酒を酌み交わしていたが、そこに千草の姿は無かった。
「千草はどうしたの?」
京楽は浮竹に酒を注ぎながら聞いた。
「さあ、忘れるなんて事はないと思うが……」
浮竹も心配そうだった。
男二人がダラダラ飲んでいると、1時間以上遅れて千草がやってきた。
「ごめんなさい。急な仕事が入って」
千草は申し訳無さそうに席についた。
「仕事なんて明日でもいいでしょうに…」
京楽が千草に酒を注いだ。千草は一気に飲み干すと、お猪口を置いて浮竹と京楽を見た。
「それがそうもいかないのよ…。原因不明の怪事件で」
「何があった?」
浮竹が声を潜めて千草に尋ねた。
千草は周りの気配を気にしてから、身を乗り出して京楽と浮竹にしか聞こえない声量で話した。
「流魂街の魂魄が『消えた』の、蒸発や神隠しじゃないわ。衣服だけ残して、体だけなくなった……今、総務と元柳斎様で調査部隊を計画してる。先駆けて先遣隊が10名出立したわ」
「それを送り込んでたのね…」
京楽は尻の後ろに手をついて、体を後ろに傾けた。目は何かを考えている風だった。
「それは今日知った事か?」
浮竹は変わらず身を乗り出して、声を低くして千草に尋ねた。
「流魂街に討伐に出た隊士が、草むらに落ちてる着物を見つけたの。全部帯が結んであったそうよ。住人の話では1月くらい前から同じ事が起こってるって……」
「何故気づけなかったんだろう。流魂街の魂魄は、遠隔で追跡できるだろう」
「遠隔で反応が出るのは魂魄が死亡…霊子に戻った時だけ、知らないうちに数だけ減っていたの」
「不気味だな……」
「……とにかく、私は休憩でここに来たけど、また戻るから、総務に」
千草は箸を手に取り、目の前の皿に手を出した。
「ひゃー、泊まり込みかい?」
「そうよ。原因が分かって解決するまで、全ての記録を取らないといけないから。先遣隊からの地獄蝶がいつ飛ばされてくるか分からないし」
千草はかき込むようにして、胃に食べ物を流し込んだ。千草が勢い良く飲み食いしている姿を、男二人はポカンと見ていた。
「勇ましいね、君の彼女」
「そうだろ」
「浮竹が可愛く見えてくるよ」
「やめろ」
食事を終えた千草はサッサと総務に戻って行った。
しかし朝になっても、先遣隊からの連絡は一切来なかった。
「先遣隊からの連絡が途絶えました。こちらの連絡にも反応ありません」
朝になると、千草は真っ先に元柳斎の元に向かい報告をした。
「そうか……九番隊に、調査部隊の派遣要請を出せ
」
「はっ」
千草はすぐに九番隊に連絡をし、調査部隊を向かわせた。
調査部隊が出立してすぐに、10着の死覇装が発見された。九番隊調査部隊はそのままその場に野営すると連絡が来た。
夕方、浮竹と京楽が総務に来た。二人は、菓子や寿司を差し入れに持ってきてくれて、総務部員は喜んで、代わる代わる食事をとった。
「状況は?」
浮竹が霊子観測計を見ている千草の横に立ち、顔を見ながら聞いた。
「まだ何も。先遣隊の遺族にも、連絡すらさせてもらえないの」
「死体がないと、死亡通達ができないからな……」
千草も浮竹も緊迫した様子で話し込んだ。その時、京楽の筋肉質な手が浮竹と千草の肩を掴んだ。
「そんな肩に力入れてたら、この先持たないよ、千草。ご飯食べてきなよ、僕らがいるうちに」
千草は京楽を見つめて、うなずいた。
「そうさせてもらうわ。ありがとう」
千草が食事に向かうと、京楽は浮竹に並んだ。
「…どう思うよ。この件」
「情報が、少なすぎるな」
二人は窓から外の景色を眺めた。
日が暮れ始めた頃、霊子観測計がけたたましく鳴った。
「総務官!!九番隊調査部隊の霊圧が……消失しました…………」
信じられないという声で、部下が報告した。その場にいた全員が立ち上がり、霊子観測計と報告した部下を見た。千草はすぐに斬魄刀を手にとった。
「消失した時刻と地点を特定して、皆は記録を続けて。私は総隊長に報告に行くわ」
千草は速やかに指示を出すと、扉に向かった。
「千草、俺が行こう。君は総務に残れ」
浮竹が千草を追い、遅れて京楽も立ち上がった。
「どちらにしても行くわ。全隊長に収集がかかるだろうし、事態が二転三転したら記録も正確な指示もできない」
隊首室に向かう階段で、後ろにいた京楽が千草に並んだ。
「千草。間違っても現場に出ちゃいけないよ。君は『最後の砦』なんだから」
「……分かってるわ」
3人は隊首室につくと、元柳斎に事の顛末を報告し、元柳斎は速やかに隊長を収集した。
元柳斎の指示で3人の隊長と1人の副隊長、そして鬼道衆の有昭田が現場に向かった。
千草が総務部に戻ろうとすると、夜一に呼び止められた。
「総務官殿、お忙しいとは思うが、一つお願いが」
「何?」
「総務部で、精霊艇の出入りを把握する事は可能かの?」
「ええ、逐一監視しているわ」
「これから精霊艇を出る者がいないか、見ていてほしい」
「……分かったわ」
千草は総務部に戻り、部下と共に全ての魂魄を監視していたが、精霊艇を出たのは指示が下ったメンバーだけだった。