Trickstar
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「……ワン、ツー、ワン、ツー……ここで、ターン……っと」
キュッキュッとレッスン用のシューズで音を立て振り付けの確認をしていると、ぱちぱち、と誰かの拍手が聞こえて振り返る。
「お~!すごいすごい!流石だね、転校生♪」
「ん……あ~……明星くん、いつの間に……」
「近くを通ったら音楽が聞こえて来たから、誰かいるのかな~と思って」
そしたらあんずだった☆と、にこやかに話す明星くんは笑顔を崩さず言葉を続けた。
「今の振り付け、Trickstar(俺たち)の曲だよね。次のレッスン、あんずと一緒ってこと?」
「うん。氷鷹くんに頼まれて……頑張る」
そう言って私は首にかけていたタオルで汗を拭うと、もう一回、とばかりに曲を流す。
「あれ?そういえば、何であんずが振り付けを覚えてるの?パフォーマンスするのは俺たちだよね?」
「振り付け……理解してないと、的確なアドバイス……できないと思うから」
曲に合わせて踊りながらも淡々と答えると、明星くんが私に尊敬の眼差しを向けてきたのが分かった。
「あんずってクールに見えて意外と考えてるんだね、尊敬しちゃうよ~♪」
「なんか今サラッと失礼なこと言われた気がする……まぁいいけど……っ、」
そんな会話をしながら振り付け確認を続けていると、サビのターンのところで右の足首に痛みを感じ立ち止まる。
「……捻(ひね)った」
「だ、大丈夫!?ごめんね、俺がいながら……」
「ん……明星くん、悪くない。私の不注意。……湿布と包帯出して、テーピングお願い。そこのカバン、入ってるから」
「分かった。え~と……」
そう言って明星くんは私のカバンから言われた通りの物を取り出し、テーピングしてくれた──決して手際がいいとは言えない出来だったけど。
「……あとで保健室行こう」
「う、ごめん……これじゃ俺たちだけじゃなくて他の『ユニット』のプロデュースも『ままならない』よね……どうしよう、ホッケ~に怒られる……」
言いながら落ち込む明星くんをこれ以上見たくなくて……私は彼の頭に、ぽん、と軽く手を置き口を開く。
「私、言った。明星くん、悪くないって。だから、落ち込むことない」
「あんず……、でも……さっきまで、あんなに頑張ってダンス覚えてくれてたのに……」
「ん~……まだ私に悪いと思うなら、保健室まで肩貸して。一人じゃ歩けない」
「、分かった!任せて!」
私の提案にそう返事をすると、明星くんはダンスレッスンルームから保健室まで付き添ってくれた。
佐賀美先生に診てもらうと、全治一ヶ月と言われて「極力歩き回るのは控えるようにしろ」とも言われてしまったけど……明日が休みで良かったかな。
「……思ってたより、重傷だった。帰り、どうしよう……」
「じゃあ俺があんずを『おんぶ』してあげ」
「遠慮する」
「言い切る前に!?……あ、そっか。親御さんに迎えに来てもらうんだね」
スマホを操作し始めた私を見た明星くんはそう言うと、終わるのを待つように丸椅子に座る──さながら、飼い主に「待て」と言われて待つ「ワンちゃん」みたいだ。
(……かわいい)
そう思うと私はまた明星くんの頭に、ぽん、と軽く手を置いて今度は『くしゃくしゃ』撫で回した。
「わわっ、何!?急にどうしたの、あんず!?」
「ん~……かわいいから?」
「疑問系!…ていうか、それなら俺よりあんずの方がかわいいって~。中身クールだけど♪」
言いながら明星くんは、お返しとばかりに私の頭を撫で回してきた。
「お~い。お前ら何イチャついてんだ~?……転校生、親御さん迎えに来たみたいだぞ。明星、正門まで送ってやれ」
「言われなくてもそのつもりだよ~☆」
先生の言葉にそう返した明星くんは、保健室に来た時同様に私に肩を貸して正門まで送ってくれる──そして車に乗るまで付き添ってくれた。
「ん……ありがと。助かった」
「いいよ。あんずの怪我が治るまでは、俺が全力でサポートしてあげるからね!」
「……うん。任せた。……じゃあ、また」
「うん!またね~☆」
そう言ってお互い手を振り、その日は別れたのだった。
その後──明星くん経由で怪我のことを聞いたらしいクラスの皆が、代わる代わる私のサポートを買って出てくれたことは、言うまでもない。
What I can do
(その笑顔が見れるなら、出来ないことはないんだよ)
2018.06.22
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