雨上がりのパレード
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夏羽たちが調査任務に向かった数分後──
「それで、貴様はいつまでここにいる。別件で受けている依頼があると言っていただろう」
「……あの子たち、危険な目に合わせたら……タダじゃおかない」
全身に冷気を纏いながらそう言い、ミハイを一瞥したあとで紗雨は依頼主の元に向かうのだった。
そうして受けた依頼──隣街の廃工場で暴徒と化した怪物の討伐をものの数分で終わらせたあと、帰路についた紗雨はふと夏羽たちのことが気になり足を止める。
(……何だろう……ざわざわ、する……)
胸騒ぎを覚え急ぎバグバイト電子の本社ビルに向かい中に入ると、晶も織も廊下に倒れ夏羽に至っては蚊の怪物に苦戦しているようだった。
「……あれは、
『おっと、余計な真似はするなよ紗雨。夏羽は今、強くなろうとしている最中なのだからな』
足下に走ってきたラジコンカーから音声が聞こえ、紗雨はそれがミハイの声だと瞬時に理解する。
「……言ったはず……危険な目に合わせたら、タダじゃおかないと……」
『ふん、まあ見ていろ』
紗雨の冷淡な声音にも一切動じず、ミハイは夏羽に注目するよう促した。
「──ああぁあぁぁああ!!」
「……!」
雄叫びを上げた夏羽の髪が赤く変色していくのと同時、腕を掴む力が増したのか蚊婆が苦しみだす。
『覚醒』した夏羽の力は凄まじく、今まで苦戦していたのが嘘のようにいとも簡単に蚊婆を倒してしまうのだった。
それからすぐに事後処理の為に来たという狐の怪物・野火丸と知り合った紗雨は、織が一番危うい状態だと言われ全身に冷気を纏い抱き起こす。
(……織の顔色、少しだけ良くなった……良かった……)
安堵した紗雨は夏羽と手分けをして、未だに気絶したままの二人を連れ帰るのだった。
翌日の早朝、目を覚ました紗雨は着替えを済ませるとキッチンに直行し夏羽や織たちの食事を調理し始める。
というのも、この探偵事務所にはまともに料理できる人物が自分以外に一人もいないことを知った紗雨が「これから料理は私がやります」と自ら名乗り出たためだ。
(施設でも、年長だったし……先生に感謝、かな……)
そんなことを思いながら、フライパンでこんがり焼いたベーコンの上に卵を割って落とす。
(……できた。あとは、盛り付けるだけ……ん?)
ふと視線に気付き顔を上げると、いつの間に起きていたのか……隠神が頬杖をついて調理中の紗雨を見ていた。
「…………あの、何か……?」
「いやぁ、やっぱ雇って正解だったなと思って。事務所の飯が一気に華やかになったしな」
「はぁ……料理は、彩り重視って……先生が、言ってたので……」
「晶から聞いてた施設の先生か。……紗雨。ひとつ、聞いていいか」
いつもの緩い雰囲気から一変し真面目な顔つきになった隠神を見て、紗雨は反射的に姿勢を正す。
「その先生ってのは、お前が半妖ってことは知ってたのか?」
「はい。先生は私の……父方の祖母でも、あるので……」
「!」
「……話は、以上ですか。そろそろ、行かないと……」
「ん、ああ……そういえば今日か。引き留めて悪かった。あとは俺がやっとくから、行ってこい」
「はい……行ってきます……」
そう言って軽く頭を下げた紗雨は事務所をあとにし、ある場所へと向かうのだった。
2022.06.11
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