雨上がりのパレード
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
紗雨が探偵事務所の新メンバーに加わってから数日──
「……先生。今まで、ありがとうございました」
「ええ。元気でね、氷室さん」
「ん。お世話に……なりました」
ぺこ、と施設の職員に軽く頭を下げてから紗雨は門の外で待っている織と晶の元に足を向ける。
「……お待たせ。付き合わせて、ごめん」
「いいよいいよ〜。ボクも子ども達と遊べて楽しかったし。じゃあ織、そろそろ帰ろっか」
「だな。あー、腹減ったー」
そうして三人で帰路についた織たちだったが、事務所の近くに来た時に晶が「そういえば」と話を振った。
「今日って隠神さんが任務から帰って来る日だっけ」
「そうだな。じゃあ晩メシはピザにしようぜ。ちょうど職員の人から貰ったチラシがあるからな!」
嬉々としてデリバリーピザのチラシを掲げて見せた織に、晶は「え〜?」と怪訝な顔になる。
「それ単に織が食べたいだけでしょ〜?ねぇ、紗雨さんは何が食べたい?」
「……何でもいい。ピザも、食べたい……」
「ほら見ろ!紗雨さんだって、ピザ食いてぇって言ってんじゃん。これはもう『今夜はピザにしろ』って神様から俺へのお告げ……」
言いながら事務所の二階のドアを開けた織は、中にいた『客』を見て動きを止めた。
「……え〜っと……誰?」
続けて中を覗いた晶がそう聞くと、その『客』の少年が答える前に隠神が口を開く。
「お〜、お前ら遅かったな。……で、そっちが例の奴か」
「あ……氷室紗雨、です。えっと……初めまして」
「おう。よろしくな。しかし……晶から聞いちゃいたが、ホントに15歳?サバ読んでない?」
「………………おじさん、凍らせていい?」
言いながら、スッ……と冷気を
「あー待て待て今のナシ!俺が悪かった!謝るから氷漬けはやめてくれ!」
「……分かれば、いいです」
そう言って紗雨が戦闘モードを解いたのを見て、隠神は「ふぅ~……」と安堵の息を吐く。
「てか隠神さん。何なんだよ、コイツは!なんで俺の服着てんだよ!?」
「いいだろ別に。お前、似たようなのいっぱい持ってんじゃん」
「お気に入りなんだっつーの!勝手に着せてんじゃねー!」
「あ、そうだったのか。じゃあ返す」
「いらねーよ!俺、他人が着た服とか着れねーから」
少年に対し刺々しい態度で接する織を見て、隠神は今度はどこか呆れたような溜め息を吐いた。
「はあぁ〜……ったく、仲良くしてくれよ?こいつも今日から
隠神のその言葉を聞いた織たちは、一拍の間を置いて三者三様の反応を示す。
「……はあっ!?」
「え、ホント?その子、新メンバーだったんだ!早くも後輩が出来たね、紗雨さん!」
「後輩……名前、まだ聞いてない」
紗雨がそう言うと、ハッとしたように少年が自己紹介を始めた。
「日下夏羽です。よろしくお願いします」
ぺこ、と頭を下げた夏羽に続いて「ちなみに」と補足するように隠神が口を開く。
「こいつは
「そうなんだ!半妖ってことは、織と紗雨さんと一緒だね」
「一緒……?」
晶の言葉に反応を示した夏羽に対し、紗雨は小さく頷いた。
「……私は、雪女子……雪女の半妖。で、織は……」
「アラクネっつー蜘蛛の半妖だ。言っとくけど同じ半妖だからって変に仲間意識とか持つなよ。俺そういうのムリだから」
言って踵を返し奥の部屋へと消えていく織を見送ったあと、素直じゃないなぁ~と呟きながらも晶は視線に気付き夏羽に向き直る。
「何?」
「あ、いえ……綺麗な『女の人たち』だなと思って」
「へっ……?『たち』って、ボクも入ってる……?」
「はい」
夏羽がはっきり返事した瞬間、会話を聞いていた隠神は「あちゃ〜」と目元を片手で覆った。
「ボ、ボク……これでも『男の子』だからぁーー!!」
わぁぁん!と泣きながらバタバタと織と同様に奥の部屋へと消えた晶を見送り、紗雨は「ご飯は……?」と静かに呟くのだった。
2022.05.04
3/6ページ