雨上がりのパレード
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朝──隠神探偵事務所にて。
「織、晶。ちょっとニュース出してくれ」
「あ〜、今まさに観てるから。晶が画面に釘付けになってるよ。兄貴かも知れねぇってさ」
画面の右上には『怪奇現象発生!?溶けない氷漬けの像、現る!』というテロップが表示されていて、二人組の男の氷像が映されている。
「ねぇ隠神さん!ボク、現場に行ってみたい!兄さんがいるかも知れないし!一緒に来て!」
「あー悪い。俺はこれから依頼主に会いに遠くの村に行くつもりでな。何日か空けるから……同行は織に頼むわ」
「はあっ!?」
なんで俺が!と抗議の声を上げる織だったが、隠神はサッと出掛ける準備を済ませ事務所を出ていった。
「くそっ、さっさと行きやがった……なんで俺なんだよ……」
「いいじゃん、シキ〜。一緒に行こうよ〜!あの現場、ここから近い場所みたいだし。お願い〜!」
「だーっ!分かった!行けばいいんだろ、行けば!」
半ギレで返事をすれば晶は「やった〜!」と喜んで現場に向かうための準備を始める。
織も最低限の備えはしておこうと支度をしてから、怪奇現象があったという場所に向かった。
「うおっ、スゲーな……ここだけ真冬みてぇに寒ぃぞ」
「う〜ん……この感じ……」
「晶?どうした?」
「これ、兄さんがやったんじゃないと思う。なんか違う気配が……」
晶が何かを言いかけた時、コッ、とヒールのような音が聞こえ二人同時に振り向くと──
「「っ!?」」
「…………誰?」
サラッと長い髪を揺らしながら、その人物は織たちの前に現れた──雪みたいに白い肌に切れ長の蒼い眼、そして口紅を引いたように赤い唇の、嫌でも人目を引くほどの美少女が。
「……あ。そっちの子……もしかして、雪男子……?」
「え!?う、うん……!すごい、なんで分かったの!?」
「分かる……私が、雪女子の……半妖だから」
「「!!」」
雪女子の半妖──その言葉がどれだけ貴重な価値のある情報か、それが分からない二人ではない。
「じゃ、じゃあお姉さん!どこかでボクの兄さんを見なかった!?」
「……?お兄さん……?分からない……興味ない」
「あ……そっか……残念……」
あからさまに落ち込んだ晶だったが、すぐに気を取り直し少女に質問する。
「そういえばお姉さん、名前は?ボクは晶。15歳だよ。ほら、シキも自己紹介して」
「お、おう。俺は、蓼丸織。14……って、なんで年齢まで言わなきゃいけねぇんだよ」
「私は……氷室、紗雨。……15歳」
紗雨の年齢を聞き、晶も織も「えっ!?」と驚きのあまり声を上げた。
「紗雨さん、ボクと同い年なの!?み、見えない……!」
「どう見ても晶より大人じゃん……俺たちより背も高いし」
「うん、モデルさんかと思ったくらいだもん……あれ?」
紗雨との会話の中で、晶はふと何かを思い出したように一瞬だけ言葉を切る。
「え〜と、ちょっと待って。紗雨さん、半妖でも雪女子ってことは『雪の里』出身だよね?ボクと会ったことある?」
「雪の、里……?知らない。私が生まれた場所、東京だから」
「あ、そうなんだ。じゃあじゃあ──!」
「ってオイ!いつまで立ち話してるつもりだよ!?」
次から次へと紗雨への質問が尽きそうにない晶に、痺れを切らしたらしい織が声を上げた。
「ったく、同族に会えて嬉しいってのは分からなくもねーけど。せめてどっか座れるとこに移動しようぜ」
「あ、そうだね。じゃあ、え〜っと……どこがいいかな」
「事務所でいいだろ。近いし」
「……?事務所……?」
織と晶の会話を聞いて首をかしげる紗雨だったが、とりあえず二人に案内してもらうことにする。
「ここ……?」
「うん、そうだよ。隠神探偵事務所へようこそ〜♪さ、入って入って〜」
晶に促されるまま中に入った紗雨は、そのまま二階に上がりソファーに腰かけた。
「それで、話の続きだけど。紗雨さんって都会生まれだって言ってたよね。どこに住んでるの?」
「……郊外の、児童養護施設。生まれてすぐ、預けられた」
「え……そう、なんだ……」
「ん。でも……そろそろ、出ようと思ってる。今、新しく住める場所、探してるとこ」
その話を聞いて、それなら!と晶が喜々としてテーブルに身を乗り出す。
「紗雨さんも
「はあっ!?」
晶の身勝手な提案に、それとなく会話を聞いていた織がガタン!と椅子を倒すほどの勢いで立ち上がった。
「おい晶!お前それ本気で言ってんのか!?」
「え?ダメなの?」
「駄目に決まってんだろ!まず隠神さんに話を通さねーと」
「それもそっか。じゃあ、ちょっと待ってね」
そう言って晶はポケットから取り出したスマホを数秒ほど操作したあと、それを自身の耳に当てる。
「……あ、もしもし隠神さん?今、大丈夫?あのね、実は──」
それから数分後……晶は隠神との電話を切ったあと、織と紗雨に向き直り口を開いた。
「隠神さんも、戦力になるならオッケーだって」
「……そう。じゃあ、よろしく……?」
「うん!これからよろしくね、紗雨さん」
「マジかよ……」
新しい仲間が増えて喜ぶ晶とは対照的に、初の女子メンバーに戸惑いを覚え頭を抱える織なのだった。
2022.05.02
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