1st Anniversary!!
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俺は今、なぜ目の前で涼が泣いているのか……まったく見当がつかず困惑していた。
“小さく弱き者は守る”──それが俺の信念だというのに。
(何故、彼女は泣いている?……もしかして俺は、気付かないうちに傷付けてしまうようなことをしてしまったのだろうか)
思えば事の発端は、涼が大神への憧れから夢ノ咲学院に転校を決めたことを聞いた時だった気がする。
動機は不純だとしても、俺は何とか彼女に協力できればと思い、涼を何度か『UNDEAD』のライブに誘って大神と話す機会を設けてやっていた。
嬉しそうに大神と話す涼を見て、俺は満足していた──少なくとも、最初のうちは。
「大神くん!今日のライブも最高にカッコ良かったです!」
「ったりめーだ!俺様を誰だと思ってやがる。俺様はいつだってカッコいいんだよ!」
涼に褒められ、ふふん♪と誇らしげに胸を張る大神。
「……………………」
見慣れている光景のはずだというのに、いつしか俺は胸の辺りに痛みを感じるようになっていた。
涼が大神しか見ていないのが辛く、悲しいと……そう思い始めていた自分に戸惑いを感じたこともある。
(俺は……俺のことも彼女に見て欲しいと、俺だけを見ていてくれと……叫びたくなった時もあった)
だが、そんなことをしたら涼の恋路を邪魔してしまうことになる──彼女は、大神が好きなのだから。
(俺に許されるのは、ただ惚れた女の幸せを願うことだけだ)
その思いを伝えた瞬間、涼は静かに涙を流し泣き出してしまった。
「……っ、……バカ……アドニスの、バカぁ……」
「む。俺はバカではない」
「バカだよ……っく……人の、気も知らないで……そん、なこと、言わないでよ……!」
泣きながらそう言って、涼は俺の胸に飛び込んで……背中に手を回し抱きついてきた。
「っ、やめろ涼。お前が好きなのは大神であって、俺じゃないだろう」
「それが!バカって言ってるの!」
なぜ怒られたのか理解できない俺を、彼女は未だに涙の跡が光る顔で見上げ再び口を開く。
「確かに夢ノ咲に転校を決めたのは大神くんがいるからだよ。でも、ここに来てアドニスと出会って……不器用なりに優しくしてくれた、守ってくれてた」
「ああ。女は守る。それが俺の信念だからな」
「それが無くても、私が好きなのはアドニスだから」
「っ!」
耳を疑った……俺は都合のいい夢でも見ているのかと、そんな馬鹿げた考えが
「そう、だったのか。すまない。お前の気持ちも知らずに……泣かせてしまったのか」
謝罪を口にしながら、俺は涼の頬を包み込むように手を添えて、未だに消えない涙の跡を親指で拭ってやる。
「…………アドニス」
「なんだ?」
「まだ、返事もらってない」
「ああ。そうだったな。涼……目を閉じろ」
「う、うん……」
俺の言葉に従い目を閉じた彼女に、告白の返事と一緒に気持ちを込めて、その柔らかな唇に深く情熱的なキスを送った。
Be My Steady
(お前が望むなら、俺はずっとそばにいよう)
2019.03.18
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