愛すべきおバカに5題
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今日も部活が終わって帰ろうとしたら、またしても日向くんに呼び止められた。
期末テストが近いから勉強を教えて欲しいと改めてお願いされた私は、自分の復習も兼ねて見てあげることにする。
「で、なんでウチで勉強会やってんの」
私の部屋で日向くんの勉強を見ていたら、少し遅れて帰って来た蛍の第一声がそれだった。
「別にいいでしょ。蛍に迷惑かけてる訳じゃないんだから」
「……まぁそうだけど」
そう言って蛍は溜め息を吐くと、向かいにある自分の部屋に入っていく──それを見届けたあと、私は日向くんに向き直って口を開いた。
「はい、じゃあ続きやるよー。問5、次の()に当てはまる漢字一文字を書いて四字熟語を完成させなさい」
「えーと……?あの、凛さん……これ何て読むの?」
「…………は……?」
練習問題として私が作成した国語のテスト用紙とにらめっこしながら、そう言って首をかしげる日向くんに呆れて物も言えなかった。
「あのさ……君、日本人だよね?ていうかこれ、西谷さんが着てたTシャツに書いてあったでしょ」
「え?……あーそっか!なんか見たことあるなーって気はしてた!えっと、確か……こっちがこうで、これがこうだった気が……」
言いながら思い出しているのか、日向くんは空いている手で自分の頭を軽く押さえている。
「……できた!ねぇねぇ凛さん、見てみて!合ってる?」
自力で解けたのが嬉しいのか、日向くんは笑顔を浮かべて私に答え合わせをしてもらおうとテスト用紙を見せてきた。
そんな彼を見て『かわいい……!』と内心で悶えたのは私だけの秘密だ。
(『バカな子ほどかわいい』ってよく言うけど、日向くん見てるとホントにそうだなって実感するなぁ)
そう思いながらテスト用紙を受け取り、答え合わせすると……見事に全問正解だった。
「すごいよ日向くん、全部合ってる!」
「ホント!?」
「うん。この調子で期末テストも頑張ろうね」
言って私が日向くんの頭を撫でると、彼はちょっと驚いたように目を見開いたあと「えへへ」と照れくさそうに笑うのだった。
そして、あっという間に期末テストの本番を迎えてから数日後──答案用紙の返却日が来たのだけど。
「どうしたの、微妙な顔して……もしかして点数あんまり良くなかった?」
放課後になり今日から再開される部活に行く前に廊下で蛍と合流した際、そう聞かれた私は「ううん」と首を振る。
「点数はいつも通り良かったよ」
「ふーん。じゃあなんでそんな顔……そういえば日向、今日はまだ凛のとこ来てないみたいだね?もう放課後だけど」
「………………」
蛍にそう言われる前から、私は少し複雑な気持ちでいた。
(てっきりまた結果報告に来ると思ってたんだけど……どうしたんだろ)
もしかしてあまり良くない感じだったのかな?それとも私の教え方が間違ってた?
そう思いながら悶々としていた時だった。
「……ねぇ、あれ日向じゃない?」
「えっ!?」
蛍が指したのは向かい側の校舎の廊下で、日向くんが部室に向かおうとしているのが見え、私は急いで追いかけた。
「日向くんストーップ!」
「っ!!」
声をかけると、日向くんの肩がビクッ!と跳ねたように見えたけど……あ、これもしかしてテスト失敗したパターン?
「日向くん、テストどうだった?」
「あー、えっと、その……ごめんなさい!」
そう言って謝ったかと思うと、日向くんは逃げるように走り去ってしまった。
「……逃げられたね」
「……………………」
あからさまな日向くんの態度を目の当たりにして、私は少なからずショックを受ける。
「……蛍。私、今日の部活休むわ」
「は……?なに言って……あ、ちょっと……!?」
蛍が引き留めようとしていることにも構わず、私は足取り重く先に下校するのだった……。
2019.08.12