【へし切長谷部】背徳の独占欲
「何故俺以外の刀が、貴女の周りで働いているんでしょう………ね、主」
長谷部は部屋をぐるりと一周すると、私が座っている机の端に我が物顔で腰をおろした。
そして、大きく反りながら天井をぐるりと仰ぎ見るようにすると、瞳をこちらに向けた。
──この問いとも言えないような投げ掛けの、彼の真意は何なのだろう
私は暫く考える
「私には貴方しかいないわ」
そんなことを言えば、支配欲に犯された長谷部は満足げに私を見つめるのだろう
だけどそれでは物足りない
私は貴方のものでありたいけれど、貴方には私をもっと渇望して貰わねばならないの
それは主と刀という主従の関係の時点で満たされているはずなのに…
それでもなお、求める
もっともっと愛して欲しい、「貴女が欲しい」と言って欲しい、独占欲できつくきつく縛って欲しい…
私なしでは一秒足りとも生きられないように─
けれど、私は何事も無いかのように机の上の資料に目を通しながら言う。
「だって、本丸を運営していくには人手が必要でしょう?出陣だって、貴方一人では何体もいる遡行軍とは戦えないはずよ」
真っ当なことを言っているような、私のその言葉の裏の、真理
──私も所詮、貴方と同じ……
長谷部の方は一度も見なかった。
彼の瞳を見てしまえば、心の中すべてを見透かされるような気がした
「へぇ……」
そう言った長谷部の声からは、彼の心情を読み取ることは出来なかった
そこにあるのはただの憂い
私は決して顔を上げない
けれど突然覆い被さった長谷部の、視界を奪うように無理矢理なキス──
それはそれは、とても甘美な味がした。
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