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【2018・年賀状企画】

*    *    *

 時刻は、午後六時。定時だ。

 どちらから示し合わせた訳でもなく、エリックとアランは並んで家路を辿っていた。

 グレルは書類の山に囲まれてヒイヒイ言いながら、ロナルドも残業ではあったが鼻歌をくゆらせながら、対照的な二人に挨拶をしての帰路だった。

「アラン、せっかく久しぶりに一緒に帰れるんだ。一杯呑んで行かねぇか?」

「あ……良いですね。俺、あんまり呑めませんけど、それでも良かったら」

 エリックは眼球だけを上向けて、数瞬考えた。

「……じゃあ、俺んちかお前んちで呑まねぇか? 潰れてもそのまま眠れるし」

 だがそう言った後、エリックはしまったといった顔をした。

「あ、でも俺んち、足の踏み場がねぇや」

 アランは、クスリと漏らす。

「良いですよ、じゃあ、俺の部屋で呑みましょう。お酒とおつまみ買って」

「悪りぃな。礼に、つまみは俺が作る」

「え、エリックさん、料理出来るんですか?」

 大きな黄緑の目を更に見開いて、アランが意外を訴える。エリックは、少し得意気に片頬だけで笑った。内緒だったが、アランはこの自信たっぷりの笑みが好きだった。

「ああ。簡単なものだけどな。作って貰ったら、必ずレシピを訊くようにしてるんだ。合コンで外食が多いから、体調管理も兼ねて」

「あ……そうですか」

 アランの笑顔が僅かに曇る。

(そうか……エリックさん、合コンで知り合った女性に、ご飯作って貰ってるんだな……)

 そう思うと、何だか棘が刺さったように、心がチクリと痛むのだった。

「ニューイヤーだからな。シャンパンで乾杯しよう。アラン、嫌いなものあるか?」

 道のりの先にあるスーパーマーケットに目を向けて、エリックは気にした風もなく楽し気に訊く。痛みはチクチクと僅かに残ったが、そんなエリックにつられて、アランもせっかくの機会を楽しむ事にした。

「ありません。あったとしても、口の方をエリックさんに合わせます!」

「何だそりゃ。幾ら後輩だからって、パートナーなんだ。気は遣うな」

 本当に嫌いなものはなかったが、アランはその言葉に乗せられて、細やかな我が儘を言ってみるのだった。

「好きなお酒があるんです。シャンパンじゃなくても良いですか?」
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