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アルクス・ピアノフォルテ(琴子)

「イイ?エリック」

「ひっ…んぐっ…や、やっ…」

すっかりアランに懐柔された身体を持て余し、身悶えるエリックの下肢を解放すると、アランは彼の身体を反転させ、壁に向かい合わせた。

ベルトを外されていたタキシードのズボンが、足首まで滑り落ちてわだかまる。残る黒いボクサーパンツも、アランは膝辺りまで下ろしてしまう。エリックはもはや抗議も出来ず、息を乱しながら掌を上げ、顔の前で壁に両腕を付き、何とか立っていた。

たっぷりとしたドレープのスカートの前をたくし上げ、アランは自身を取り出しながら言った。

「エリック、ちょっと膝曲げて?」

身長差がある為、そうしないと繋がる事は出来ない。

「嫌…だ…」

弱々しくも拒絶するが、再びアランの掌が前に回り、まだ物足りないとばかりに勃ち上がったままのそれを握って上下させると、

「んんっ、あっ…」

カクリ、と膝が折れて丁度良い高さになった。前への刺激を止めないまま、アランは『我慢出来ない』程熱くなっている自身を、エリックの後孔にあてがう。

エリックが前への刺激に翻弄されている内に、アランはじりじりと彼の中に入っていった。一瞬、突然の行為にエリックが息をつめ顎を上げるが、もうその甘い誘惑の訪れを、身体はひくついて待っていた。一度目の吐精でぬるぬるに滑り、アランの攻めとエリックの嬌声は止む事を知らない。

「ア、アラっン、あっ、ふっ…」

完全に繋がったが、アランは抽挿はせず、背後から壁に押し付けるようにして、下からぐっぐっと押し上げる。それでは、もどかしい快感しか得られない。

「あ、ぁん、アラン…アラン、人が来、るっ…早く、イカせっ…」

エリックは拳をぎゅっと握り締め、切なげに絶頂をねだるが、アランはその運動を止めないまま、くすりと笑った。

「まだだよ、エリック。俺の事だけ考えて…他に何も考えられなくなるまで、イカせてあげない」

しかし意地悪くたった一度だけ、強く突き上げた。

「っぁんっ!」

──ガチャ。

その時、ロッカールームのドアが開いた。入ってきたのは、アゲアゲなブライズメイド姿のロナルドだ。壁際で密着している二人を見て、声を上げる。

「あれ?どうしたんスか、エリック先輩、アラン先輩」

幸い、ボリュームのあるプリンセスタイプのおかげで、エリックの下肢は広がったスカートに覆われて見えない。アランは笑顔で振り返り、

「ああ、ロナルド。エリックさんがちょっと気分が悪いって言うから、介抱してたんだ」

と、彼の背中を擦る。全身が性感帯になるまでに感じ入っているエリックは、思わず低く呻いて黄緑の瞳を潤ませた。アランが振り返った事で、若干ズルリと抜け、エリックは声を漏らさぬよう必死に、壁につく強く握った拳で唇を押し潰した。

「ふーん。大丈夫っスか?エリック先輩」

グレル曰く『乳臭い』ミニはさっさと脱ぎ、いつもの黒スーツに着替えながら、ロナルドはエリックを気遣った。もっとも、この男の場合、本当に心配しているのかどうかは、怪しかったが。

「っ……大丈夫だっ…」

声が裏返ってしまわぬよう、必死に腹筋に力を込めて、エリックは言葉を紡ぐ。その切羽詰まった声音に、

「辛いんなら、医務室行った方が良いっスよ」

黒いネクタイを結びながら、ロナルドは勧める。ひたすら唇を噛み締めるエリックの代わりに、アランが答えた。

「ありがとう、ロナルド。ちょっと休めば大丈夫だから」

「そうスか?じゃ俺、お先です!」

着替え終わったロナルドは、『残業しない主義』な為、早々にロッカールームを後にする。

──バタン。

ドアが閉まった途端、アランは抽挿を始めた。バレなかったとはいえ、ロナルドに見られた事で、心とは裏腹に更に質量を増しているエリックをこねながら、下から激しく突き上げる。

「んぁ、はん、っアラン…っ!」

──ガチャ。

「あ、それから。もうちょっと声抑えないと廊下に丸聞こえっスよ、エリック先輩。じゃ!」

──バタン。

「なっ…!」

エリックは、普段は男臭く振る舞っている己のあられもない嬌声を聞かれてしまった事に、頬を真っ赤に上気させる。

「…だってさ、エリック。頑張って我慢して」

だがアランは止める気は毛頭なく、更に強くピストンしてエリックを追い詰め始めた。

「っあっ…ぁんっ…ん!」

堪らず天井を仰いだまま背をのけ反らせ壁を引っかくエリックに向かい、アランは含み笑って囁いた。

「ほら我慢して」

「ん…んんっ…!」

突かれる度に背をしならせ、唇を噛み締め声を押し殺す腕の中のエリックが愛しくて、アランは再び耳元で囁いた。

「そうそう、上手。…エリック可愛い…」

End.?
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