アルクス・ピアノフォルテ(琴子)
【New Year Wedding】 ⚠アラエリ⚠※R18※
「ちょっと!女優のアタシがモブって、どういう事ヨ!」
死神派遣協会。新年早々、回収課の片隅で、グレルは癇癪を起していた。
ウィリアム・グレル・エリック・アラン・ロナルドがひとかたまりに集まり、皆一様にホワイトボードを見つめ、だが様々な反応を示している。
「仕方がないでしょう。公正な投票の結果なのですから」
ウィリアムはいつものポーカーフェイスを崩さず、ピシリと眼鏡を押し上げる。
「てゆっか、何で俺がブライズメイドなんスかね」
「一番小さいからじゃないですか」
「うわっ。スピアーズ先輩、チビにチビって言った!ソレ異様に罪重いっスよ!」
さして興味もなさそうに感想を述べたロナルドだったが、ウィリアムに痛い所を指摘され、抗議を上げる。
「し…しょうがねぇな。投票の結果だもんな…」
「そうですね。楽しみですね、エリックさん!」
一方、僅かに動揺しながら顎髭を撫でるエリックに、そのエリックを見上げ、言葉通り楽しそうに声を弾ませるアラン。
ホワイトボードには、
『花婿…エリック』
『花嫁…アラン』
『神父…ウィリアム』
『介添え…ロナルド』
『聖歌隊6…グレル』
云々と書き連ねてあった。
「何で目出度い新年の仮面劇で、このアタシが『聖歌隊6』なんか演んなきゃなんないのヨ!『花嫁』がアタシで、『花婿』がウィルじゃなきゃ認めないワヨ!!」
深紅のコートの裾を咥え、なおも悔しげに地団太を踏むグレルに、ウィリアムが再びチラリと冷たい流し目と共に言い放つ。
「私は、むしろ聖歌隊で良かったんですけどね。多数決ですから。仕方ありません」
死神派遣協会では、元日の0時ぴったりにも、誰が言い出したともなく一番オフィスの大きな回収課に各課の死神たちが集結し、『忘新年会』と銘打った馬鹿騒ぎが行われたが、余りにも乱痴気騒ぎだった為、再度正式に、格式あるような仮面劇を催そうという事になったのだった。
『仮面劇』とは、音楽・踊り・歌・演技を含み、飾られた舞台上で演じられる、16世紀から17世紀のヨーロッパで隆盛をきわめた、宮廷の祝祭の出し物だ。
『結婚』をモチーフとした作品も多く、今回はそれが候補に上がり、果たしてどう配役すべきかと、想定外の役回りに人事課が頭を悩ませていた所、秘書課や庶務課などから「多数決」という案が提示され、現在に至るのだった。
配役について、あれこれと五人の間で交わされる会話を、密かに回収課の入り口で、盗み聞く二人がいた。
「やったわね、ホープ!組織票ゲットで、ついにエリック先輩とアランくんがウェデングよ!」
両拳を口元に当てキャッキャとはしゃぐアルクスに対し、ホープは冷静に状況を分析した。
「忘新年会の時の彼らの『姫始め』隠し撮り写真を、袖の下として大量に秘書課と庶務課にバラまいたからね。まあ、予想通りの結果かな」
そして、顔を見合わせ、
「「グッ!」」
と、共に力強く親指を立て、企みの成功を祝し、ウィリアムに仕事そっちのけなのを見咎められる前に、回収課を後にした。
「ちょっと!女優のアタシがモブって、どういう事ヨ!」
死神派遣協会。新年早々、回収課の片隅で、グレルは癇癪を起していた。
ウィリアム・グレル・エリック・アラン・ロナルドがひとかたまりに集まり、皆一様にホワイトボードを見つめ、だが様々な反応を示している。
「仕方がないでしょう。公正な投票の結果なのですから」
ウィリアムはいつものポーカーフェイスを崩さず、ピシリと眼鏡を押し上げる。
「てゆっか、何で俺がブライズメイドなんスかね」
「一番小さいからじゃないですか」
「うわっ。スピアーズ先輩、チビにチビって言った!ソレ異様に罪重いっスよ!」
さして興味もなさそうに感想を述べたロナルドだったが、ウィリアムに痛い所を指摘され、抗議を上げる。
「し…しょうがねぇな。投票の結果だもんな…」
「そうですね。楽しみですね、エリックさん!」
一方、僅かに動揺しながら顎髭を撫でるエリックに、そのエリックを見上げ、言葉通り楽しそうに声を弾ませるアラン。
ホワイトボードには、
『花婿…エリック』
『花嫁…アラン』
『神父…ウィリアム』
『介添え…ロナルド』
『聖歌隊6…グレル』
云々と書き連ねてあった。
「何で目出度い新年の仮面劇で、このアタシが『聖歌隊6』なんか演んなきゃなんないのヨ!『花嫁』がアタシで、『花婿』がウィルじゃなきゃ認めないワヨ!!」
深紅のコートの裾を咥え、なおも悔しげに地団太を踏むグレルに、ウィリアムが再びチラリと冷たい流し目と共に言い放つ。
「私は、むしろ聖歌隊で良かったんですけどね。多数決ですから。仕方ありません」
死神派遣協会では、元日の0時ぴったりにも、誰が言い出したともなく一番オフィスの大きな回収課に各課の死神たちが集結し、『忘新年会』と銘打った馬鹿騒ぎが行われたが、余りにも乱痴気騒ぎだった為、再度正式に、格式あるような仮面劇を催そうという事になったのだった。
『仮面劇』とは、音楽・踊り・歌・演技を含み、飾られた舞台上で演じられる、16世紀から17世紀のヨーロッパで隆盛をきわめた、宮廷の祝祭の出し物だ。
『結婚』をモチーフとした作品も多く、今回はそれが候補に上がり、果たしてどう配役すべきかと、想定外の役回りに人事課が頭を悩ませていた所、秘書課や庶務課などから「多数決」という案が提示され、現在に至るのだった。
配役について、あれこれと五人の間で交わされる会話を、密かに回収課の入り口で、盗み聞く二人がいた。
「やったわね、ホープ!組織票ゲットで、ついにエリック先輩とアランくんがウェデングよ!」
両拳を口元に当てキャッキャとはしゃぐアルクスに対し、ホープは冷静に状況を分析した。
「忘新年会の時の彼らの『姫始め』隠し撮り写真を、袖の下として大量に秘書課と庶務課にバラまいたからね。まあ、予想通りの結果かな」
そして、顔を見合わせ、
「「グッ!」」
と、共に力強く親指を立て、企みの成功を祝し、ウィリアムに仕事そっちのけなのを見咎められる前に、回収課を後にした。