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レイラ・ローズ(レイラ・ローズ様)

*    *    *

死神の正装、喪服に着替え、エリックはまんじりともせず一人派遣協会のデスクで頬杖をつき待っていた。エリックの方は多少強引に手早く終わらせたが、アランたちの潜入捜査がいつ終わるのかは、神のみぞ知る事だった。ひょっとしたら、何日もかかるかもしれない。

レイラが一緒だから多少安心だったが、同時にある意味心配でもあった。レイラは普段から、アランを可愛がっている。恋心でも抱かれたら、厄介だ。

その時。懐かしい気配が近くに溢れ、束の間舟を漕いでいたエリックは、一気に眠気が吹き飛んだ。気配の軌跡を辿って小走りに駆け出すと、それは男子更衣室に向かっていた。

「アラン?!」

扉を開けると、アランがループタイをきっちりと締めている所だった。

「アラン、大丈夫だったか?!おっさんに手ぇ出されなかっ…」

「エリック!!」

エリックの言葉を待たず、アランが彼の首根っこに飛び付いた。その華奢な腰に腕を回し、エリックもアランを受け止める。どちらからともなく、夢中の口付けが交わされた。すっかり息が上がって、アランがぐったりとエリックに体重をあずけるまで。

「エリック…会いたかった」

「俺もだ、アラン。変な事されなかったか?」

「う、うん。レイラさんが一緒だったから、平気だよ」

「そうか…レイラに感謝だな」

回収課に戻ると、レイラもスーツに着替えて待っていた。アランを支えるようにしてやってくる二人を見て、レイラは彼らの再会を祝して、内心うふふとその瞬間を想像する。それとは別に、任務の仕上げも主導した。

「エリック先輩、『リトルジョン』の文書はありますか?」

「ああ。これだ」

油紙に包まれた紙切れを胸ポケットから取り出す。中身には、テロリスト掃討作戦の『穴』、警備の手薄な地区が記されてあった。

「『グランパ』の指令はここに」

アランも、握っていた羊皮紙を差し出す。次のテロリズム作戦に関する各国の同志への密命が、限られた羊皮紙の表面に、びっしりと書き込まれているのだった。

それを二人は、掌の上で灰にした。青白い炎がゆらりと立ち上って、瞬く間にそれらは跡形もなくなった。

「これでしばらくは、テロは起きないわね」

「ああ。両陣営からの指令書が同時に消えたとなれば、奴らも用心するだろう」

「ずっと平和なら良いのに…」

アランが悲痛な声音を出して、この潜入捜査は終わったのだった。レイラが、一変して明るく言う。

「お疲れ様。アラン、報告書は私が書いておくわ。エリック先輩と二人で帰って良いわよ」

「えっ。でも…」

「レイラ、アランが世話になったな。礼を言う」

滅多に改まって礼など言わないエリックに声をかけられ、レイラはニッコリと微笑んだ。よほど心配だったのね。そう思って、二人を急かす。

「さ、後は私に任せてちょうだい。これでも、筆記はダブルAなのよ」

「ああ、サンキュ、レイラ。甘えさせて貰う」

早く二人っきりになりたいエリックは、思わずアランの腰に腕を回して、照れたアランに足を踏まれていた。アパートに帰ったら真っ先にシャワーを浴びて、ベッドになだれ込むのは言わずもがなのエリックだった。

End?
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