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レイラ・ローズ(レイラ・ローズ様)

──ヴーッ。だが程なくして、手の中の携帯がモーター音を微かに立てて振動した。ひどく驚いたが、考える前に指が動いて携帯を耳に当てていた。

「エリック?!」

『アラン…?!お前今、潜入捜査中じゃ…』

半日ほど離れただけなのに、懐かしさにアランは泣きじゃくった。

『おい、落ち着け。そんな地区で携帯使ってて、大丈夫なのか?』

エリックの優しい声音が余計に涙腺を刺激して、アランはしばらくまともに喋れなかった。そんなアランを見離さず、エリックは根気強く待つ。やがてアランが事情を話すと、エリックはようやく安堵を声に滲ませた。

『そうか…レイラってグレルさんと仲良いし、お見通しなのかもな』

アランは、そう思うと顔から火が出る思いだったが、今はエリックの声を聞けている事の方が嬉しかった。

「エリック…そっち、最前線なんだろう?君こそ大丈夫?」

エリックは少し笑った。

『鉛の弾ぐらい、何発くらっても平気だろ、俺たちは。それよりアラン…俺、テントから大分離れてるんだけどよ…お前は?』

「え…うん。俺も、凄く離れてる」

『じゃあ…』

エリックの瞳が、暗闇に光った。

『姫始めの続き、シようぜ』

「えっ?!」

アランが思わず声を高くすると、携帯の向こう側から、忍び笑いが聞こえてきた。顔を真っ赤にして、アランが慌てて唇を押さえると、まるで見えているかのように、エリックが囁いた。

『ほら、それが俺の手だ。何着てる?上着を捲って、お前の可愛い乳首を擦れ。優しく、な』

「え…え…」

『ほら、早く。お前だって、中途半端じゃ辛いだろ…?月が綺麗だな…』

そう言われた瞬間、アランの中の理性の糸がぷつりと切れた。エリックと、同じ月を見ている。そう思うと、堪らなかった。

「…ぁっ…エリック…」

『イイ子だ…お前が好きなように、軽くつねってやる』

「んっ…!」

アランは言葉通りに指を操られ、腰砕けに草地に横たわった。息を荒くしながら、携帯の向こうのエリックに哀願する。

「エリック…下も、下も触って…っ」

『ああ、今触ってやる…ズボンの中に手を入れて…お前のピンクのを、扱いてやる。もう、我慢汁でベトベトだな…』

「んぁ、あぁっ、あっ…」

『脈打ってるな…もうイきそうか?』

「ぅんっ、イく、エリック、イッちゃいそう…!」

『まだ駄目だ。俺の太いのを、ブチ込んでからだ。今朝ヤってたから、簡単に入るだろ?入れるぞ…』

「あ!あ…あ…!」

アランは、五本の指を何かを摘むような形に窄めて、自らの蕾に埋めていった。ギリギリ、イイ部分に指先が当たる。

『動くぞ…思いっきりだ』

注挿が始まる。

「っあ、あ、あぁん、エリック…!」

同じ月の下で、エリックも自身を握り込んで扱いていた。互いの息遣いが、携帯越しに鼓膜を揺らして、眩暈がする。

『俺のはどうだ?言ってみろ』

「エリック、の…太くて…おっきくて…ん…あ、イッちゃう…!」

涙声で、アランが喘いだ。

『仕方ねぇな…イッて良いぞ。俺も、中に出してやる…』

「あ、っぁ、中に、エリックの、いっぱい出して…っ!あぁっ…!!」

絶頂の叫びに、エリックの吐息も続いた。

『お前のナカ、凄ぇイイ、アラン…っ』

今度は愉悦の深さに嗚咽するアランの泣き声が、しばし携帯から聞こえていた。エリックも息を荒らげ、動悸がおさまるまで、無言でそれを耳にする。やがて──ぽつりと、アランが言った。

「月が…」

『…ああ、綺麗だな』

まるで寄り添っているように、甘い低音でエリックも囁き返す。月の放つシン…とした燐光だけが、二人を包み込んでいた。

『おやすみ…アラン』

「エリック…おやすみなさい…」

そうして項に腕を回し、口付けを交わして、エリックとアランは抱き合って眠る。心も身体も満ち足りて、溢れそうになるほど幸せの内に瞳を閉じた。

*    *    *

旅団の朝は早い。まだ朝焼けに空が燃え始める頃から、辺りは朝食を摂ったり、早々にテントを畳む人いきれが響いていた。

アランはいち早く起きて、争奪戦の様相を見せていた肉と乳のスープの朝食を、レイラの分も確保して、テントに戻ってきたのだった。

「レイラ、入るよ」

返事が返って、アランはテントの入り口をくぐる。中では、レイラが就寝時に解いたキャラメルブラウンの長髪を一本に編み上げている所だった。鏡もないのに、口にくわえていたリボンで器用に一纏めにする。初めて見る女性のプライベートな身支度に、アランは見てはいけないような気がして、ギクシャクとスープをテントの床に置いた。

「アラン、夕べ待ちきれずに眠っちゃったんだけど、床で眠れた?」

「あ、うん。遅くなってごめん。これ、返すよ」

アランはポケットから携帯を出して、レイラに手渡す。心なしか目元が淡く染まっているのは、エリックとの話が長引いた事を恥じてだろうか。そんな風に思って、レイラは敢えて何も聞かずに携帯を受け取った。そして、胸の谷間にそれをしまう。

「レイラ、そ、そんなトコに入れてるの?」

動揺するアランに、レイラがあっけらかんと言った。

「ええ。だって、行き倒れが携帯なんか持ってちゃ、おかしいでしょ?」

「そ…そうだね」

女性にはうぶなアランが可笑しくて、レイラは少し噴き出した。クスクスと漏らしながら、アランと同様に床に座って、アランの寝床から居間に変わった即席の食卓を囲む。

「長引くと、体力勝負ね。食べましょ、アラン。いただきます」

「うん。いただきます」

二人は手を合わせて、けして美味とは言えぬ朝食を平らげた。
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