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シュリム・ブロッサム(春之様)

「あー、悪かった。ほら…してやるから、目ぇ閉じろ?」

「…ん」

言葉通りにすると、唇に待ち望んでいた熱が感じられた。角度を変え、次第に深く奪われる。やがてもっと熱く湿った舌が侵入してきて、上顎の奥を丁寧に這った。

「んんっ…はぁ…」

こらえ切れずに、甘い疼きが声となって漏れる。アランの身体の事は、アラン以上にエリックが知っていた。口に出せない分、大胆になってアランはエリックのブロンドを狂おしくかき乱す。同じようにブラウンをかき抱だきながら、エリックはゆっくりとアランの身体をベッドへと押し倒した。

縦長に細く1cmほど開いた隙間から、クロはそれを覗いていた。意図せずに赤い舌が覗き、チロリと上唇を舐める。医務室内では、エリックがアランのワイシャツのボタンを外そうとしていた。

「クロ先輩!報告書あとちょっとです!」

しかし背後からの大声に、医務室内外の三人は飛び上がらんばかりに驚いた。二人の視線が、ドアの隙間に覗くクロの黄緑とバチッと合う。エリックが一瞬で医務室のドアを開け、怒声を上げた。

「クロ!クロ…ウィザード!”W”はお前か!」

「えっ?!知らねぇよ、エリック誤解だ話せば分かる…!」

言い訳など聞く耳持たずに、痛いほど強く腕を掴まれ、クロは医務室内に引きずり込まれる。キョトンとして立っているシュリムに、エリックは咄嗟に命令した。

「シュリム、重大任務だ!誰か来ないか見張ってろ!」

これが、シュリムの波長と一致を見たらしく、彼は力強く応えて敬礼した。

「アイアイサー!」

再びドアを閉めると、エリックは獰猛に唸った。

「クロ…覚悟は良いな…」

胸倉を掴み上げる。体格で若干劣るのと、迫力に気おされ動けない。

「良いだろ、盛り上がっただろ、俺はお前たちのマンネリを防ごうと…!」

拳が振り上げられると、ベッドに力なくくず折れていたアランからも制止の声がかかった。

「エリック…!」

その時だった。廊下からシュリムの報告が届いたのは。

「エリック先輩!まだ誰も来てません!」

その間の抜けた報告に、エリックは脱力してクロを手離した。クロは大慌てで、脱兎のごとく退散する。

「た、助かった…シュリム、後は任せた!」

「…エリック先輩!クロ先輩が出て行きました!」

再度の脱力をして、エリックは疲れた声を出した。

「見りゃ分かる…。もう良いぞ、シュリム…」

「それは、見張りの任を解くという事ですか?」

「そうだ」

「アイアイサー!」

再び力強く敬礼をし、シュリムはクロの後を追って去っていった。大体、ひと気のない外れの医務室に、何をしにきたのだろう。『報告書がまだ出来ていない』事を報告しに、クロを探した結果としか思えなかった。

「クロの奴…」

エリックは医務室のドアに今度は入念に鍵をかけ、アランの元へ急いだ。

「大丈夫か、アラン」

肌蹴られた胸元まで、本来なら白い肌を朱に染めて、アランは呟いた。

「う、うん。…クロさん、バレてたんだ…」

「大丈夫だ、周りに話しでもしたらこういう目にあう、って、今実践で教えてやったからな」

フンと鼻を鳴らした後、エリックはアランの顎に親指をかけた。

「それより…続きしようぜ」

「えっ。だって、クロさんにバレてるのに…」

「だからそれは心配ない」

「んぁっ…!」

胸の尖りをもう片方の手で摘ままれ、唇にはキスが落ちる。淡く染まった身体は、羞恥だけでなく、確かに欲望にも脈打っていた。アランは僅かに暴れ抵抗したが、形ばかりであえなくエリックの手管に落ちる。

素直に身体を開いたアランに、エリックが押し入る。大声が出てしまわぬよう、優しくアランを揺すりあげながら、エリックはフッと唇の端で笑って、身体の下で声を押し殺している彼に囁いた。

「マンネリ打開か…確かに、お前から誘ってくるなんて、そうそうないよな」

「ん、ぁんっ…」

「”W”に感謝しなくちゃいけないかもしれねぇな…」

そう言って、ニヒルに笑った。

End?
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