ルーナ・ヴェルディ(月椿様)
* * *
ウィリアムへの報告を終え、エリックとアランは、薄暗くなり始めた協会の正面玄関を出た。最新型の明度感知式の街灯な為、まだギリギリ明かりは灯っていない。
アランが、置いてきたルーナを思い、そして思い出した。
「そう言えばルーナさん…花が咲いたって言ってなかったっけ?」
「ああ、そうだな!珍しい事もあるもんだよな、"あの"ルーナが」
「見に行ってみないか?」
「良いな」
2人は、協会裏の花壇へと足を向けた。同間隔で綺麗に植えられた花たちだが、みな見事に枯れる寸前だった。しなびて、まともにピンと立っているものなどない。
「あれ?」
「変だな」
幾ら目を凝らしても、蕾すら見付けられなかった。その時。風がざあっと吹いて、大きな花がひとつ丸ごと、アランの頭に落ちてきて髪を飾った。エリックがハッと顎を上げる。花壇の真横に永い間沈黙を守っていた樹木が、大輪の花を咲かせていた。
「『咲かずの椿』が…!」
「え?」
「知らねぇのか。『咲かずの椿』っていって、滅多に咲かねぇんだ。その分、咲いた時は何かが起こるって言われてる」
「じゃあ…」
「ああ。ルーナが調査に行ったのは、偶然じゃねぇと思う」
「そうか…」
アランは感慨深げに言って、髪に咲く花を取ろうとするが、エリックがそれを阻み、彼の手首を掴んだ。
「ん?何?」
「…似合ってるぜ。綺麗で」
「なっ…」
「そうだ。花見しようぜ。ルーナも言ってた」
腕を掴んだまま、アランの髪飾りに顔を埋める。アランと、アランの使うリンスと、椿の花の匂いが交じり合って、エリックに悪巧みを企てさせた。
「…良い香りだ」
「ん…」
唇が触れ合う。アランもその気にさせるよう、うなじを撫でるように刺激しながら、顔を傾けて強引に舌を忍ばせ、アランの歯列をなぞる。戸惑ったように後ずさるアランだが、うなじにかけた掌が後を追った。
椿の下には、ルーナが誂えたものか、ブルーシートが敷いてあった。知り尽くしたアランの性感帯をなぞると、掠れて押し殺した嬌声が上がり、膝が折れる。ふわりとアランをブルーシートに横たえさせると、エリックは唇を触れさせながらアランのループタイを緩めた。
「やっ…エリック駄目…!こんな所で…!」
エリックに塞がれていた唇をそむけ、何とかアランがエリックを制止する。しかし密着し合った肌が共に上気している事は、エリックにワイシャツを肌蹴られるとすぐに伝わってしまった。
「大丈夫だ、あの感じじゃもうルーナは来ねぇだろ」
鎖骨に軽く歯を立てると、ビクリとアランが跳ねる。
「んぁっ…」
薄暗い中では、一際その喘ぎが艶っぽくエリックの耳を奪った。
ウィリアムへの報告を終え、エリックとアランは、薄暗くなり始めた協会の正面玄関を出た。最新型の明度感知式の街灯な為、まだギリギリ明かりは灯っていない。
アランが、置いてきたルーナを思い、そして思い出した。
「そう言えばルーナさん…花が咲いたって言ってなかったっけ?」
「ああ、そうだな!珍しい事もあるもんだよな、"あの"ルーナが」
「見に行ってみないか?」
「良いな」
2人は、協会裏の花壇へと足を向けた。同間隔で綺麗に植えられた花たちだが、みな見事に枯れる寸前だった。しなびて、まともにピンと立っているものなどない。
「あれ?」
「変だな」
幾ら目を凝らしても、蕾すら見付けられなかった。その時。風がざあっと吹いて、大きな花がひとつ丸ごと、アランの頭に落ちてきて髪を飾った。エリックがハッと顎を上げる。花壇の真横に永い間沈黙を守っていた樹木が、大輪の花を咲かせていた。
「『咲かずの椿』が…!」
「え?」
「知らねぇのか。『咲かずの椿』っていって、滅多に咲かねぇんだ。その分、咲いた時は何かが起こるって言われてる」
「じゃあ…」
「ああ。ルーナが調査に行ったのは、偶然じゃねぇと思う」
「そうか…」
アランは感慨深げに言って、髪に咲く花を取ろうとするが、エリックがそれを阻み、彼の手首を掴んだ。
「ん?何?」
「…似合ってるぜ。綺麗で」
「なっ…」
「そうだ。花見しようぜ。ルーナも言ってた」
腕を掴んだまま、アランの髪飾りに顔を埋める。アランと、アランの使うリンスと、椿の花の匂いが交じり合って、エリックに悪巧みを企てさせた。
「…良い香りだ」
「ん…」
唇が触れ合う。アランもその気にさせるよう、うなじを撫でるように刺激しながら、顔を傾けて強引に舌を忍ばせ、アランの歯列をなぞる。戸惑ったように後ずさるアランだが、うなじにかけた掌が後を追った。
椿の下には、ルーナが誂えたものか、ブルーシートが敷いてあった。知り尽くしたアランの性感帯をなぞると、掠れて押し殺した嬌声が上がり、膝が折れる。ふわりとアランをブルーシートに横たえさせると、エリックは唇を触れさせながらアランのループタイを緩めた。
「やっ…エリック駄目…!こんな所で…!」
エリックに塞がれていた唇をそむけ、何とかアランがエリックを制止する。しかし密着し合った肌が共に上気している事は、エリックにワイシャツを肌蹴られるとすぐに伝わってしまった。
「大丈夫だ、あの感じじゃもうルーナは来ねぇだろ」
鎖骨に軽く歯を立てると、ビクリとアランが跳ねる。
「んぁっ…」
薄暗い中では、一際その喘ぎが艶っぽくエリックの耳を奪った。