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ルーナ・ヴェルディ(月椿様)

「馬鹿ネェ。アンタ、いい加減学習しなさいヨ」

「は…はひっ!ありがとうございます!」

傷口を真っ赤なハンカチで縛って貰い、ルーナは夢見心地だった。チワワは、アランには好意的に尻尾を振り、ルーナには散々振り向いては吠えていった。

「ワンちゃん…」

少し肩を落とした背中を、アランが慰めようと思った時だった。

「あ!お団子屋さんがあります!あそこで聞き込みしましょう!」

落ち込みは一瞬で、一軒の店舗を指差すと、一直線に向かい入っていった。肩に置こうとしていた掌を所在無く下げ、アランは呆気に取られたように呟く。

「ルーナさん…」

「アラン、いちいちあのコの喜怒哀楽に付き合っちゃ駄目ヨ。あのコはお気楽なんだから」

「はぁ…」

などと本人には聞かせられないような話をしていると、満面の笑みのルーナが店から出てくるのが見えた。今度は一直線に、グレルの元へ帰ってくる。まるでルーナ自身が、忠犬のようにも見える行動だった。

「お待たせしましたー」

「…で?何で出てきたら、両手いっぱいの荷物な訳アンタ?」

「だって、タダでお話だけ聞く訳にはいきませんから!お勧めは胡麻です!はい、グレルさんどーぞ★」

串に3つ並んだ団子を無邪気に差し出され、グレルはため息をついた。

「遊びに来てるんじゃないのヨ?」

「でも、死亡予定者は、ここでお団子を両手いっぱいに買って、そこのベンチでお酒呑みながらお花見してたって…」

「もう分かったのか?!」

驚きの声を上げるエリックに、ルーナはのんびりとした口調で話す。

「うん、時刻もぴったり」

グレルも驚きを隠せずに、しばらく赤いルージュの引かれた唇をぱくぱくさせてから言った。

「ア、アンタ…意外とやるのネ…」

「やった、グレルさんに誉められちゃったじゃないですかー!」

──ぺちっ。

「痛てっ」

テンションの上がったルーナに背中を叩かれ、エリックが小さく抗議した。が、ルーナの耳には入っていないようで、

「じゃ、何か分かるかもしれませんから、同じ状況を作ってみましょう!」

賛同の言葉が上がる前に、すでに先頭をきってベンチへ向かう。大ぶりの桜の樹下に3人並んで座ると、ルーナがそれぞれに団子を握らせた。若干手狭だが、ルーナも縁の方に座り、胡麻団子をぱくつく。見上げれば、満開の桜。それをうっとりと眺めながら、ルーナは呟いた。

「へぇえ………美味しい」

「"綺麗"じゃねぇのかよ!」

エリックが団子を取り落としそうになりながら、突っ込んだ。だがやはり、ルーナには効かない。
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