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アロウ・ラウンドカラーズ(彩矢様)

花から花へと渡り歩く蝶のように、ロナルドはヒラヒラと手を振って人事課を出ていった。その背を見送って、アロウは頬杖をついてもうひとつ吐息する。

(合コンか…)

短い面接のみでその死神の適性を見極め、本人の希望にも配慮し、いち早く各課に配属するのが人事課の仕事だ。その後の配属がえも考慮する。簡単な仕事ではない。それを初めからそつなくこなすアロウは、ウィリアムにも一目置かれる存在になっていた。

合コンに行けば、たちまち女子派遣員に引っ張りだこだ。だけどそれは、『アロウ・ラウンドカラーズ』というブランドへの羨望なのだ。誰もアロウの内面を知ろうとなどしなかった。

「アロウさん」

考え込んでしまっていた思考を、凛とした声音が現実に引き戻してくれた。アロウは慌てて顔を上げる。

「おはようございます」

「…アランか。おはよう」

アランは一週間ほど前、エリックとパートナーになれないかと聞きにきていたのだった。その真意に気付かずにはいられないほど、頬を真っ赤に上気させて。一週間前よりはやや薄桃に色を変えて、アランはデスクの前に立っていた。

「あの…ありがとうございました。エリックさんとパートナーにしてくださって…」

アロウは、面白そうに目を細める。

「で?何か良い事あったか?」

「はい、あ、あの…。エリックさん、夜遊びしなくなりました」

ぽそぽそと紡がれる些細なノロケに、アロウは一癖ある表情で微笑んだ。

「もっと良い事あるように、頑張れよ」

「…はい!」

アランが会心の笑みを見せている頃、ロナルドは、今度は管理課に顔を出していた。回収課所属だというのに、タイムカードを押したっきりで、まだ回収課内で仕事の準備をする素振りもない。

「お願いします!一生のお願いっスから!」

先程アロウにしてみせたのと同じように胸の前で指を組み合わせるが、こちらにはまるで効かなかった。ウィリアムは、始業のベルも鳴らぬ内から仕事に取り掛かりながら、坦々と淡々と言った。

「貴方には何度『一生』があるんですか。合コンなどという非効率的なものには参加しないと、再三申し上げておりますが」

「スピアーズ先輩が断り続けるから、『一生のお願い』が続くんです!頼みますよ~。先輩、絶対モテますって」

「不特定多数にモテても嬉しくありません。…さあ、そろそろ始業ですよ」

そう、ぽんと言い置くのと同時に、書き込んでいた書類をトンと揃え、ウィリアムはそれを手に立ち上がった。朝礼の為に回収課に向かうウィリアムに、ロナルドが着いてくるのがワンセットになっているのであった。
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