アロウ・ラウンドカラーズ(彩矢様)
【ルーティーン】⚠ロナウィル⚠エリアラ
アロウ・ラウンドカラーズの一日は、死神派遣協会のエレベーターホールで、ウィリアムと挨拶を交わす事から始まる。始業のきっちり三十分前、いつも同じ一番奧のエレベーターで。
「おはよう、ウィリアム」
「おはようございます、アロウ・ラウンドカラーズ」
ウィリアムとは同期だったが、彼は誰に対しても敬語で接するものだから、それは毎朝のルーティーンになってしまっていた。アロウは長身をやや屈めて、くせのある赤毛の前髪をエレベーター内の鏡に映ししきりに撫で付けながら、ウィリアムに問う。
「で?何か良い事あったか?」
ウィリアムが、坦々と、淡々と答える。
「特にありませんよ」
実はここまでが、毎朝のルーティーンなのだった。人事課と管理課は階が違う為、二人は黙礼して別れる。永い付き合いだからこそ成り立つ、毎朝の儀式なのだった。
「おはようございます!ラウンドカラーズ先輩」
いつもはギリギリに出勤する筈のロナルドが、人事課の入り口で忠犬よろしく待っていた。表情は何かを期待して輝き、まさに尻尾があったならブンブン振っていた事だろう。実はこれも、たびたびある事で、アロウはおざなりに返事を返す。
「ああロナルド、おはよう」
「情れないじゃないっスか~!ラウンドカラーズ先輩!もっとテンション上げていきましょうよ~」
人事課に入ってデスクにつき、ブリーフケースから書類を取り出し並べて分類し、着々と仕事の準備を進めるアロウに、ロナルドはまとわりつくようにして笑顔を見せていた。だがアロウは、にべもない。
「うるさい」
「お願いしますよ~!昨日入ったブルネットのショートのコ、合コンに誘いたいんス。名前と所属、教えてください」
「今は忙しい、帰れ」
「そんな~!だから始業前に来たのに!」
ロナルドは両手を胸の前で組み合わせ、わざとらしく瞳を潤ませて『祈り』のポーズだ。今のアロウはロナルドにとって、まさしく全能の神にも等しい存在なのだろう。そんなロナルドに、仕事の準備を終えたアロウは、ひとつため息をついてから書類に落としていた目線を上げた。
「…今度おごれよ」
「やりぃ!」
見た目はネクタイもきっちりと締められ、有能でウィリアムとも親しい事から、周囲はアロウをウィリアムと同じような目で見ていたが、その実『有能』の薄皮を一枚めくれば、ウィリアムとは違った俗っぽい一面が彼にはあった。ロナルドのいう新人の名前と所属を、そらんじてみせる。数日分の情報なら、資料など見なくとも全て覚えているほど、アロウは頭脳明晰だった。
「流石ラウンドカラーズ先輩!今度合コン、招待するっスね~」
アロウ・ラウンドカラーズの一日は、死神派遣協会のエレベーターホールで、ウィリアムと挨拶を交わす事から始まる。始業のきっちり三十分前、いつも同じ一番奧のエレベーターで。
「おはよう、ウィリアム」
「おはようございます、アロウ・ラウンドカラーズ」
ウィリアムとは同期だったが、彼は誰に対しても敬語で接するものだから、それは毎朝のルーティーンになってしまっていた。アロウは長身をやや屈めて、くせのある赤毛の前髪をエレベーター内の鏡に映ししきりに撫で付けながら、ウィリアムに問う。
「で?何か良い事あったか?」
ウィリアムが、坦々と、淡々と答える。
「特にありませんよ」
実はここまでが、毎朝のルーティーンなのだった。人事課と管理課は階が違う為、二人は黙礼して別れる。永い付き合いだからこそ成り立つ、毎朝の儀式なのだった。
「おはようございます!ラウンドカラーズ先輩」
いつもはギリギリに出勤する筈のロナルドが、人事課の入り口で忠犬よろしく待っていた。表情は何かを期待して輝き、まさに尻尾があったならブンブン振っていた事だろう。実はこれも、たびたびある事で、アロウはおざなりに返事を返す。
「ああロナルド、おはよう」
「情れないじゃないっスか~!ラウンドカラーズ先輩!もっとテンション上げていきましょうよ~」
人事課に入ってデスクにつき、ブリーフケースから書類を取り出し並べて分類し、着々と仕事の準備を進めるアロウに、ロナルドはまとわりつくようにして笑顔を見せていた。だがアロウは、にべもない。
「うるさい」
「お願いしますよ~!昨日入ったブルネットのショートのコ、合コンに誘いたいんス。名前と所属、教えてください」
「今は忙しい、帰れ」
「そんな~!だから始業前に来たのに!」
ロナルドは両手を胸の前で組み合わせ、わざとらしく瞳を潤ませて『祈り』のポーズだ。今のアロウはロナルドにとって、まさしく全能の神にも等しい存在なのだろう。そんなロナルドに、仕事の準備を終えたアロウは、ひとつため息をついてから書類に落としていた目線を上げた。
「…今度おごれよ」
「やりぃ!」
見た目はネクタイもきっちりと締められ、有能でウィリアムとも親しい事から、周囲はアロウをウィリアムと同じような目で見ていたが、その実『有能』の薄皮を一枚めくれば、ウィリアムとは違った俗っぽい一面が彼にはあった。ロナルドのいう新人の名前と所属を、そらんじてみせる。数日分の情報なら、資料など見なくとも全て覚えているほど、アロウは頭脳明晰だった。
「流石ラウンドカラーズ先輩!今度合コン、招待するっスね~」