レオナルド・F・ライファス(シオン様)
おまけ。
翌日、てっきり休むと思っていたウィリアムが包帯姿のまま出勤してきて、ロナルドは昨日の出来事が夢だったのではないかと疑い始めていた。髪は常通りピシリと七三に整えられ、厳しい表情で坦々と淡々と話す。思わずロナルドが、日課通り管理課まで着いて行ってしまうほどだった。
「今日は何ですか、ロナルド・ノックス」
そして相変わらず律儀に、ウィリアムはその真を問う。
「あの…スピアーズ先輩。昨日…」
「おはようございます、ウィリアム先輩。ロナルド」
管理課の入り口をくぐると、待っていたようにすぐ声がかかった。
「おはようございます、レオナルド・F・ライファス」
「お、おはよう。レオ」
「朝礼の申し送り事項の確認、ありがとうございました。レオナルド・F・ライファス」
「いえ、ウィリアム先輩。それより、大事を取って休まなくて良かったんですか?」
「早急に、退院しなくてはならない理由がありまして」
ロナルドは、昨日の会話を思い出し、ギクリとした。続きは、退院してから。ウィリアムは、そう言っていなかったか?
「レオナルド・F・ライファス」
「はい」
見詰めるロナルドの目の前で、ウィリアムがレオナルドの耳にそっと、何事かを吹き込んだ。またロナルドの中に、止められない嫉妬が音を立てて逆巻く。そしてウィリアムは、ロナルドに目もくれず、奥にある自分のデスクへと去ってしまった。
「おい、レオ!お前、スピアーズ先輩とどういう関係だよ!!」
思わず声を殺して怒りを見せると、レオナルドは唇に拳を当ててぷっと噴き出した。
「ロナルド?二人は付き合ったんじゃないんですか?皆には内緒に、と言われただけですけど…」
「え!」
そこで初めて、昨日の出来事が夢じゃないとの確信を持ち、ロナルドは大きなまなこを更に丸くした。
「良かったですね、ロナルド。また今度、シャンパンで乾杯しましょう」
「う、うん…」
デスクに着いて無表情に仕事をこなすウィリアムを遠くに眺めて、ロナルドは気もそぞろに返事を返す。レオナルドが、また笑った。
「信じられないみたいですね、ロナルド。でもちゃんと、私も聞きましたから。…口が開いてます、ロナルド…」
くすくすと漏らし続けるレオナルドに指摘され、ロナルドは開きっ放しだった口をつぐんだ。そして、レオナルドを振り返って飛び掛かる。
「こら!笑うな、レオ!!」
「おめでとう、ロナルド…、ちょっと、よしてください…」
笑うなと言いつつくすぐり始めるロナルドに、レオナルドが珍しく声を上げて笑う。
「そこ!ふざける時間があるのなら、仕事なさい!」
騒ぎの張本人の静かなる怒声が飛んできて、二人は揃ってお行儀の良い返事をしてみせた。そして、それぞれの仕事場へと帰っていく。意味あり気な目配せを送り合いながら。
おまけ終わり。
翌日、てっきり休むと思っていたウィリアムが包帯姿のまま出勤してきて、ロナルドは昨日の出来事が夢だったのではないかと疑い始めていた。髪は常通りピシリと七三に整えられ、厳しい表情で坦々と淡々と話す。思わずロナルドが、日課通り管理課まで着いて行ってしまうほどだった。
「今日は何ですか、ロナルド・ノックス」
そして相変わらず律儀に、ウィリアムはその真を問う。
「あの…スピアーズ先輩。昨日…」
「おはようございます、ウィリアム先輩。ロナルド」
管理課の入り口をくぐると、待っていたようにすぐ声がかかった。
「おはようございます、レオナルド・F・ライファス」
「お、おはよう。レオ」
「朝礼の申し送り事項の確認、ありがとうございました。レオナルド・F・ライファス」
「いえ、ウィリアム先輩。それより、大事を取って休まなくて良かったんですか?」
「早急に、退院しなくてはならない理由がありまして」
ロナルドは、昨日の会話を思い出し、ギクリとした。続きは、退院してから。ウィリアムは、そう言っていなかったか?
「レオナルド・F・ライファス」
「はい」
見詰めるロナルドの目の前で、ウィリアムがレオナルドの耳にそっと、何事かを吹き込んだ。またロナルドの中に、止められない嫉妬が音を立てて逆巻く。そしてウィリアムは、ロナルドに目もくれず、奥にある自分のデスクへと去ってしまった。
「おい、レオ!お前、スピアーズ先輩とどういう関係だよ!!」
思わず声を殺して怒りを見せると、レオナルドは唇に拳を当ててぷっと噴き出した。
「ロナルド?二人は付き合ったんじゃないんですか?皆には内緒に、と言われただけですけど…」
「え!」
そこで初めて、昨日の出来事が夢じゃないとの確信を持ち、ロナルドは大きなまなこを更に丸くした。
「良かったですね、ロナルド。また今度、シャンパンで乾杯しましょう」
「う、うん…」
デスクに着いて無表情に仕事をこなすウィリアムを遠くに眺めて、ロナルドは気もそぞろに返事を返す。レオナルドが、また笑った。
「信じられないみたいですね、ロナルド。でもちゃんと、私も聞きましたから。…口が開いてます、ロナルド…」
くすくすと漏らし続けるレオナルドに指摘され、ロナルドは開きっ放しだった口をつぐんだ。そして、レオナルドを振り返って飛び掛かる。
「こら!笑うな、レオ!!」
「おめでとう、ロナルド…、ちょっと、よしてください…」
笑うなと言いつつくすぐり始めるロナルドに、レオナルドが珍しく声を上げて笑う。
「そこ!ふざける時間があるのなら、仕事なさい!」
騒ぎの張本人の静かなる怒声が飛んできて、二人は揃ってお行儀の良い返事をしてみせた。そして、それぞれの仕事場へと帰っていく。意味あり気な目配せを送り合いながら。
おまけ終わり。
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