※連載中【死神と文通を】

 拝啓。

 お元気ですか?
 日本では今、コロナの感染者がとても少なくなってるって聞きました。
 だから今年は英国でも有名な、『渋谷ハロウィン』が行われるだろうって、イベントに詳しい同僚が教えてくれました。
 あ、トリック オア トリート!
 ふふ、一番始めに書くべきでしたね。
 キャンディと、君がいつかフレーバーティーが好きだと言っていたから、ストロベリーティーの茶葉を贈ります。
 だから、イタズラしないでくださいね。
 
 英国では本来ハロウィンは、所説あるけど、秋の収穫祭(十一月一日)の前日に催される悪霊や魔よけのためのお祭りだったとされています。
 君は、仮装をしたでしょうか?

 俺たちはね、『渋谷ハロウィン』について調べてて、『地味ハロウィン』って発想に大笑いしちゃいました。
 『ビニール袋をネコチャンと見間違えるひと』とか、『本社から来た偉いひと』とか、こんな発想は日本人ならではかもしれませんね!
 だから俺たちも『地味ハロウィン』してみました。
 俺と、エリックと、おはぎの写真。入れておきますね。
 何だか分かるかな? 答えを待ってます。

 ……え?
 いやっ、待って、こないだエリックが書いた手紙、忙しくてチェックする暇なかったんだけど!
 パートナーって、そういう意味じゃないよ!
 その、仕事上のパートナーって意味!
 えっ。
 「子どもが生まれたらこんな風かな」って……エリック、そんなことまで書いたのか……ちょっと、お説教が必要かもしれない……。

 ビックリしたかな。もう、白状するしかないね。
 俺たち、プライベートパートナーなんだ。
 ルームシェアって言ってたけど、いわゆる同棲。
 言ってなくて、ごめんなさい。
 でも隠してた訳じゃなくて、改めて言うべきことでもないかなって思ってました。
 日本は同性婚の認められていない国だから、君が不快な気分になったらどうしようとか考えてしまって。
 わ……改めて読んだら、凄く祝福してくれてて、ありがとう。
 結婚はまだなんだ。
 おはぎが来たことで、子どもみたいだってエリックが言うから、いつかプロポーズしてくれるかなって待ってるんです。
 エリックは永い間孤独なひとだったから、俺から結婚を迫るような真似はしたくなくて。

 あ……ごめん。
 恋愛相談みたいになっちゃったね。
 君も仕事や家族のことで大変なのに、自分が情けないです。
 どうか忘れてください。
 
 君ももし仮装をしていたら、写真を送ってくれると嬉しいです。
 楽しみだな。 
 それでは、また。
 お身体に気を付けて。
 ハッピーハロウィン!

 敬具。

二〇二一年十月三十一日 アラン・ハンフリーズ
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