※連載中【死神と文通を】

 拝啓。

 今日は。
 久しぶりの休みで、寝て起きたら夕方でした。
 それだけ疲れていたんだなって、びっくりです。
 君も疲れをためていませんか?
 休みの日くらい、俺みたいに夕方まで寝たら良いと思います。
 おうちのことでも忙しくて、そうもいかないかもしれないけど……。

 前に手紙を書いたあと、居ても立っても居られなくて、実はレスキュードッグのホームページにメールを出してしまいました。
 「クロシバの保護犬は居ませんか」って。
 そうしたら、日本犬のブリーダーが経営破綻して、二十頭くらい保護したばかりだっていう返事が来ました!
 日本犬には詳しくなくて、何犬かまで分からないから、待ってくれって。
 本当はそれを伝えようかと思ったんだけど、ぬか喜びだったら悪いから、まだ手紙を出しませんでした。
 結果を言う?
 ふふ、ドキドキしませんか?


 結果。
 クロシバのお母さんが居ました!
 お腹に赤ちゃんの居るクロシバのお母さんだから、出産・授乳を終えたあとにどうだろうという打診でした。
 そのあと、生まれた子犬にも一匹クロシバが居ると教えて貰ったけれど、仔犬はみんな欲しがるだろうから、予定通りお母さんをうちの子にすることにしました。
 推定二歳、長生きして欲しいなあと思います。

 名前の候補ありがとう!
 なるほど、日本にも黒いお菓子はあるんですね。
 ANKO、OHAGI、YOHKAN、KINTSUBA……。
 どれも変わった響きで好きだけど、画像検索してみて、黒白のバランスがぴったりだなあと思ったのが『おはぎ』でした。
 今、うちのおはぎは、仔犬たちにせっせとミルクをあげています。
 一回エリックと見に行けたんだけど、三十分くらい「偉いね」「可愛い仔犬だね」って話しかけていたら、なんと一匹くわえ上げて抱かせてくれました。
 母犬は警戒心が強くなるって本で読んだけど、言葉と心が伝わったのかなって、凄く嬉しかったです。
 早く一緒に暮らせることを心待ちにしています。

 おはぎの命名は君。
 家族に名前をくれたのだから、君も家族同然な気持ちです。
 日本ではオリンピックをやっているけれど、東京の感染者が日曜日としては過去最多だと聞きました。
 家族である君を心配しています。
 もうコロナ禍が始まって一年半以上経つから、思うように外出出来なかったり、仲間と会えなかったりするだろうけど、俺たちは君の家族です。
 孤独ではないことを、知っていてくださいね。
 それでは、また。
 君の無事を、毎日祈っています。

 敬具。

二〇二一年七月二十五日 アラン・ハンフリーズ
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