※連載中【死神と文通を】

 拝啓。

 こんばんは。
 仕事が忙しくて、夜中に書いています。
 手紙は夜に書くもんじゃないって言うけれど、当分休みがないので、許してくださいね。

 クロシバのこと、教えてくれてありがとう!
 黒犬か黒猫をずっと飼いたいって思っていたんだけど、俺は犬も猫も好きだから、決め手がないまま長い時間が経ってしまいました。
 でも、クロシバのことを調べて……何て言うのかな。
 こういうの、「キュン」って言うのかな。
 キュンとしています。
 飼い主にもベタベタしないシバ距離、気まぐれなところ。
 犬なのに中身は猫みたいで、犬も猫も好きな俺には、ピッタリだと思えます。
 本気で、クロシバを飼おうか考えています。
 日本みたいにペットショップで犬や猫を取り扱っていないロンドンでは、ブリーダーかレスキューアニマルから引き取るのが普通です。
 飼うとしたら、保護犬を迎えたいと思っています。
 クロシバの保護犬がいるかどうかは、分からないけれど。

 君は、ネコちゃんに『チョコ』ちゃんって名前をつけていたよね。
 俺もそういうスイーツ系の名前をつけたいんだけど、日本のスイーツで、チョコみたいに黒いものはあるかな。
 候補を幾つか教えて欲しいです。
 ふふ、まだ飼っていないのに気が早いって、君に笑われそうだけど。
 でも俺は今すぐ、レスキュードッグに電話をかけたい気分です。

 お仕事、慣れてきたみたいで良かったです。
 エリックが色々言ったみたいだけど、君は優しいから、そう簡単にはいかないよね。
 実は俺も頼まれたら断れなくて、新人の頃はいつもサービス残業してました。
 でも、それじゃ誰のためにもならないんだって、エリックに説得されて。
 必要以上に抱え込まず、自分の出来るだけの量の仕事をするようになったら、今までサボってた同僚も仕事をするようになってくれました。
 まあ……これはあとから知ったんだけど、エリックが屋内階段に呼び出して、ひとりひとりお説教して回った結果らしいんだけどね。
 君にもそんな味方が居ればいいなと、遠い空から祈っています。
 
 こっちでは、二十一日にイングランドで予定されていた感染対策措置の全面解除が、七月十九日まで延期されました。
 この一ヶ月の間に、ワクチンの接種を進めるみたいです。
 日本は、高齢者から摂取しているって聞きました。
 君がワクチンを打てるのは、いつになるんだろう。
 少し不安だけど、趣味も我慢して頑張ってる君だから、心配はないと思います。

 それでは、眠ります。
 明日内容を確認したら書き直したくなっちゃうと思うから、思い切って封をしてしまいます。
 君も俺も、よく眠れますように。
 おやすみなさい。

 敬具。

二〇二一年六月十五日 アラン・ハンフリーズ
5/14ページ
スキ