※連載中【死神と文通を】

拝啓。

 お久しぶりです。
 なかなか君の返事が来ないから心配してたけど、色んなことに勇気が出なかったんだってね。
 シャイな君らしい文面で、顔がほころんでしまいます。
 あの『手』の主に告白したんだね。
 結婚を前提にお付き合いしてるだなんて、とっても素敵なニュースです。
 教えてくれてありがとう!
 なんだか俺たちまで幸せになっちゃいました。

 気が早いけど、結婚式は挙げるのかな?
 ぜひ出席したいところだけど、俺たち決まった休暇がない仕事だから、たぶん行けないと思います。
 ごめんなさい。
 このコロナ禍があけたら少し暇が出来ると思うから、そのときには絶対君に会いに行きたいと思っているのだけど。

 俺たち日本が大好きだから、そのときはもし良かったら、君のパートナーも一緒に四人で満喫したいと思っています。
 日本支部に出張に行った同僚が、渋谷に新しいランドマークビルが出来たって言ってたから、凄く楽しみにしています。
 スクランブル交差点を初めて見たときは、興奮したなあ。
 一度に何百人も、ぶつかりもしないでひとが横断して。

 外国のテレビ番組で、『ぶつかったらどういう対応をするか』っていう実験を各国でやった話はもうしたかな?
 日本で検証しようとしたら、どんなにぶつかりにいってもスッとかわされて、『日本人は全員ニンジャ』って結論になって笑ったことがあったなあ。

 おっと、脱線しちゃった。
 ふふ、君は凄く恥ずかしがるだろうけど、プロポーズの言葉が聞きたいな。
 君が幸せだと俺たちも幸せだから、いっぱい惚気てくれると嬉しいです。

 それでは、季節の変わり目だから、お身体に気を付けて。
 寒くなってくると、『死』に関わる俺たちの仕事も忙しくなるんだ。
 気分が落ち込んだら、朝のお日様を浴びてみてください。
 それと、パートナーとハグしてみて。
 君の幸せを願っています。

敬具。

二〇二三年九月二十四日 アラン・ハンフリーズ

追伸。
 やっぱり気が早いけど、幸せな花嫁のアイテム『何か借りたもの』を同封します。
 誕生日にエリックが買ってくれた、ゴールドのブレスレットです。
 着けてくれたら嬉しいな。
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