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※連載中【死神と文通を】

拝啓。

 久しぶりだね。
 エリックが手紙を出したって言っていたから、君からの返事を待っていたんだけど。
 早めの大掃除をしていたら、なんとレターケースから、君宛ての手紙が出てきました!
 エリック! って、思わず大きな声が出ちゃった。
 困ったものです。 
 一応、エリックの手紙も入れておきますね。

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 よお!
 元気か?

 誕生日プレゼント、喜んで貰えて嬉しいぜ。
 うちのベランダにも、ナスやらキュウリやら、沢山プランターがあるんだ。
 最初はアランがせっせと作るのを眺めてるだけだったけど、今は俺も水やったり、世話してる。
 特に今は忙しいし、帰りが遅くなって店が閉まっちまうことが多いから、ちょっと野菜があると助かるんだ。
 料理の担当は俺だからな。彩りが整って重宝してる。

 ただ、ひとつ困ったことがあって、おはぎがキュウリを食っちまうんだよ。
 アランが慌てて毒じゃないか調べてたけど、食べても大丈夫で、野菜好きの犬ってのも居るらしいんだよな。
 実がついて、大きくしようと待ってるそばから、おはぎが食っちまう。
 アランは怒るに怒れず、食べかけのキュウリを見せて子どもに言い聞かせるみたいに説教してるけど、おはぎは行儀良く座って残りが貰えるもんだと思ってる。
 アランにゃ悪いけど、笑っちまうな。
 いつも結局、おはぎのキラキラした目に負けてる。

 ミニトマトの写真、サンキューな。
 初めてでこんなにたくさん実がつくのは凄いって、アランが褒めてたぜ。
 肉も野菜も食って、免疫あげておけよ。
 じゃあ、またな。
 コロナに負けんなよ。

×○×○ 5月26日 エリック

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 これが、エリックが出したって言い張ってた手紙。
 俺は君からの返事がないので、忙しいのかな、何かあったのかな、って凄く心配してたのに。
 エリックってたまにこういう大ポカをするから、ため息が出ちゃう。

 ところで……ミニトマトの写真の隅に写っていた、男のひとの手は、誰だろう?
 君には兄弟は居ないはずだし、お父さんにしては若々しいし。
 照れ屋の君の、細やかな報告なのかなって、深読みしちゃいます。
 俺の勘違いだったらごめんなさい。
 でももしパートナーが出来たのなら、教えて欲しいな。照れずに。
 
 コロナ禍で、恋人と逢えなくなってしまったとか、外国から帰ってこられなくなって離ればなれとか聞いていたけど、今はもう日本でも緩和ムードだって日本支部のヒトに教えて貰いました。
 あ、俺たちの仕事、世界中に支部があるんだ。
 俺もエリックも、何度も日本支部に出張に行ったことがあるから、知り合いも多いし日本のことが少し分かる。
 第八波が来てるんだってね。

 本当に……いつになったら、このパンデミックは終息するんだろう。
 俺たちの仕事が、ひとの死に関わる仕事だっていうのは説明したよね。
 毎日、毎日、死亡者の増減で、一喜一憂するような生活から早く脱したい。
 もちろん毎日死亡者が居るのは当たり前だけど、あまりにも数が多すぎて。
 特にコロナで亡くなる子どもを見ると、涙をこらえなくてはなりません。
 
 後遺症もあるっていうから、君にも罹患して欲しくない。
 社交辞令じゃなく、このパンデミックが終わったら、俺たち本当に君に会いに行こうと思ってるんだ。
 どうか、気を付けて。
 君が健やかに過ごせますように。

敬具。

二〇二二年十一月二十八日 アラン・ハンフリーズ
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