※連載中【死神と文通を】

拝啓。

 こんばんは、お元気でしょうか。
 しばらく仕事が急がしくて、久しぶりの手紙です。
 日本での感染爆発は、頭打ちしたって聞きました。
 いつまで経ってもコロナ禍ですね。
 俺たちの仕事も忙しいです。
 その、ひとの死に関係する仕事だから。
 
 おはぎは、今月で四歳になりました。
 ちょうど冬毛が抜ける季節で、毎日ブラッシングをすると、喜んでお腹を見せてくれます。
 それから……実は今日、俺も誕生日を迎えました。
 年齢が幾つかは、想像にお任せします。
 君より少し上くらいかな。
 エリックがケーキを焼いてくれました。
 意外かもしれないけど、エリックは料理が得意なんだ。
 毎日の食事も、エリックが作ってくれます。
 俺もたまに作るけど、パンケーキとかベーコンエッグとか、それくらい。
 おはぎにも、犬用のケーキを作ってくれました。
 それで三人で、バースデーパーティーをしました。
 今は、エリックが食器を洗ってくれています。
 片付けくらい俺がやるって言ったんだけど、誕生日の主役はジッとしてろって言われちゃいました。

 君の誕生日は確か、四月だったよね。
 手紙が出せるかどうか分からないから、少し早いけど今の内に言っておくよ。
 お誕生日、おめでとう。
 コロナ禍だけど、少しでも去年より良い一年になるように、祈っています。
 プレゼントを入れておきますね。
 君が、家に居ることが多くなって家庭菜園をやりたいと言っていたから、ミニトマトとバジルの種を。
 トマトは水が多過ぎると美味しく育たないけどバジルは水が大好きなので、一緒に植えるとバジルが余分な水を吸ってくれて、トマトが甘く育ちます。
 試してみてくださいね。

 忙しいのと、感染者が増えてることもあって、なかなか君に会いに行けません。
 残念だけど、仕方ないですね。
 俺たちは、君を守りたいと思っているんだ。
 離れていても、いつも一緒だよ。
 じゃあ、引き続き気を付けてお過ごしください。
 いつか、この混乱が終わることを信じて。
 
敬具。

二〇二二年三月十日 アラン・ハンフリーズ
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