【君といつまでも】

【日本 八月十四日・十五日】

 今回は十六日までの出張だったから、二日間は一生分と思えるくらい、俺たちはキスとハグを繰り返した。仕事終わりには、スクランブル交差点や新しく出来た渋谷のランドマークビルを楽しんだり、旅行みたいな気さえする。
 だがものより思い出派だったから、写真は一枚だけしか撮らなかった。都会の絶景をバックに、頬を寄せ合った自撮り写真。

「あ」

 俺のスマホを確認して、アランが声を上げる。

「ちょっとエリック、俺目ぇつぶっちゃってる。撮り直してくれよ!」

 俺は笑ってスマホを頭上に高く掲げる。身長差があるから、アランも手を伸ばすが届かない。必死になってスマホを取り上げようとするアランが可笑しくて、俺は声を上げて笑っていた。

「いいんだよ。目ぇつぶってたって、お前はお前だ」

「やだよ! 一枚しか撮らないのに、その一枚がそんなのだなんて、絶対嫌だ!」

 俺たちはしばらくそうやって揉めていたが、やがて俺は向き直ってアランを強く抱き留めた。大人しくなったアランからそっと身を離し、端正な顔を覗き込んで頬を撫でる。

「いいんだ。写真なんかまたいつでも撮れる。俺には、お前が居ることが大切なんだ」

「エリック……」

 そうして雑踏に紛れて、キスを交わす。
 その夜は、障子に映るふたりの影が陽炎のようにずっとゆらゆら揺れていた。上下を入れ替えて、飽くことなく愛を確かめる。まるで地球最後の日みたいに。

『愛してる』

 何度言ったか分からない。
 空が白みはじめるまで睦み合って、俺たちは半ば気を失うようにして眠りについた。
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