連載【12月のDiary】

12月24日(土)
 
 結局俺は、クリスマスなのを忘れてるフリをして、さり気なくサシ飲みに誘う作戦を選んだ。
 アランを酔わせてどうにかしようという気はなかったが、俺自身が酔ってなきゃ、告白なんか出来やしない。

『告白』

 その響きにゾッとする。
 アランは優等生だからフったとしても変わらず接してくれるだろうが、俺がそれに耐えられるか分からない。
 何しろ、生まれて400年、1度もフラれたことのない人生だ。
 真剣に告白をされたこともあったが、そいつらは何て勇気があるんだろうと、今更尊敬してみたりする。

 デスクで帰り支度をしているアランにまずは予定を訊いてみたが、残念そうな顔をする。心臓が口から飛び出そうだった。
 だが俺が邪推したような答えではなく、クリスマスは毎年姉夫婦と過ごすのだと恐縮する。
 そして、何を思ったか俺に断ってスマホをいじり始めた。すぐに、LINEの着信音が鳴る。
 快諾を貰ったから、俺も一緒にどうかと言う。
 アランが姉夫婦と仲がいいのは知っていた。俺の話を日常的にしているのは、知らなかったが。

 ニコニコと誘いかけてくるアランには悪いが、ほぼ死神としての人生を独りきりで生きてきた俺は、そこにどう存在していいか分からない。
 邪魔しちゃ悪いから、なんて心にもない嘘で断って、背を向ける。
 だがその背に声がかかった。

 アランは、ニューイヤーズデイなら空いてると言った。
 クリスマスと同じくらい、大切な日だ。それを、俺と過ごすという誘い。
 信じられない思いで振り返ると、アランは思わずつられてしまうような、ビッグスマイルで俺を見上げていた。ほんのりと目元を上気させ。
 俺が呆気にとられていると、気恥ずかしそうにアランは頬をかき、コートと鞄を持って立ち上がった。
 じゃあ新年に。LINEします。と言葉を残して、アランはクリスマスの夜に消えていった。
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