連載【12月のDiary】

12月19日(月)

 考えてる。あれからずっと考えてる。
 アランは八方美人ではないが優等生気質だから、毎朝群がってくる同僚や先輩にも笑顔で朝の挨拶を交わす。
 俺が睨みをきかすようになってから、世間話をしようという猛者はだいぶ減ってきたが。
 それでも俺より先輩の奴は、負けじと声をかけてくる。
 
 考えても、答えが出ないのが現状だ。
 アランはセイレンケッパクで、きっと恋愛なんかしたこともないんだろう。
 さり気なくそんな話題を振ってみたら、アランにしては珍しく明言を避けて笑われた。
 下心がバレて軽蔑されたかと思ったが、そのあと違う話題で盛り上がったから、そういう訳でもないらしい。

 クリスマスの予定を訊こうと思っていたが……またはぐらかされるかと思うと、恐くて訊けない。
 恋愛に対して「恐い」と思ったのは初めてだった。
 いや、そもそも俺は、恋愛をしたことがないのだろう。
 本来ならガキの頃に通過しておくべきだった手順を、踏んでいない。
 どうしたらいいのか……分からない。
 百戦錬磨と言われた俺が?
 なんてこった。

 今更愛を囁くなんて小っ恥ずかしいことは出来ないし、合コンみたいに欲に任せて誘惑するなんてもってのほかだ。
 でもそろそろ予定を押さえておかないと、何処の馬の骨に持っていかれるか分からない。
 考えろ。どうしたらいいか。
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