【天使と悪魔】
「エリック……しゃん」
「馬鹿、離せ!」
思わず、怒号に近い言葉が漏れる。それほどエリックには、余裕がなかった。その聞いたことのない強い語気に、アランはビクッと身を竦めた。端正な顔がクシャッとたわめられ、吐息が漏れる。
「ふえっ……」
エリックが驚きに息を飲む。
「あ、悪りぃ、アラン」
「ふぇぇえ」
アランは両手で顔を覆って、赤ん坊のように泣き出した。女を泣かしても何とも思わないエリックだが、これには狼狽えて、恐る恐るアランの頭など撫でてみる。
「怒鳴って悪かったよ。頼むぜアラン……お前、泣き上戸か?」
ぶつぶつと詫びるエリックの言葉を聞いて、やがてアランは顔の上から両手を退けた。だが顔の両脇に拳を作って無防備に横たわる様は、あらぬ妄想をさせて、エリックには目の毒だ。反射的に目を逸らしたが、再び項に手がかかった。
「エリックしゃん」
「あ?」
「本当に、悪いとおもってまふか?」
「ああ、悪かった。謝るから……離せ」
「許ひません」
エリックは敵わないといった風に、瞑目し額を押えて溜め息をつく。
「どうしたら、許してくれるんだ」
「……キス」
「え?」
「キスしてくれたら、許してあげましゅ」
思わずエリックの瞳が、剣を帯びる。視線が交わった。
「おい。アラン。お前、俺が誰だか分かってて言ってるのか?」
「エリックしゃん」
「酔ったら……誰にでも、そうやって強請るのか?」
「俺がお酒飲むのは……エリックしゃんの前だけです。エリックしゃん、が、好き、だから」
舌足らずなアモーレに喜ぶべきかどうか心が揺れて、瞼を閉じるアランに迷ったが、小さく笑って唇で触れた。前髪に。そっと。眼下で、そのくすぐったさに、アランがふにゃっと笑う。
「掴まれ。抱えるぞ」
「馬鹿、離せ!」
思わず、怒号に近い言葉が漏れる。それほどエリックには、余裕がなかった。その聞いたことのない強い語気に、アランはビクッと身を竦めた。端正な顔がクシャッとたわめられ、吐息が漏れる。
「ふえっ……」
エリックが驚きに息を飲む。
「あ、悪りぃ、アラン」
「ふぇぇえ」
アランは両手で顔を覆って、赤ん坊のように泣き出した。女を泣かしても何とも思わないエリックだが、これには狼狽えて、恐る恐るアランの頭など撫でてみる。
「怒鳴って悪かったよ。頼むぜアラン……お前、泣き上戸か?」
ぶつぶつと詫びるエリックの言葉を聞いて、やがてアランは顔の上から両手を退けた。だが顔の両脇に拳を作って無防備に横たわる様は、あらぬ妄想をさせて、エリックには目の毒だ。反射的に目を逸らしたが、再び項に手がかかった。
「エリックしゃん」
「あ?」
「本当に、悪いとおもってまふか?」
「ああ、悪かった。謝るから……離せ」
「許ひません」
エリックは敵わないといった風に、瞑目し額を押えて溜め息をつく。
「どうしたら、許してくれるんだ」
「……キス」
「え?」
「キスしてくれたら、許してあげましゅ」
思わずエリックの瞳が、剣を帯びる。視線が交わった。
「おい。アラン。お前、俺が誰だか分かってて言ってるのか?」
「エリックしゃん」
「酔ったら……誰にでも、そうやって強請るのか?」
「俺がお酒飲むのは……エリックしゃんの前だけです。エリックしゃん、が、好き、だから」
舌足らずなアモーレに喜ぶべきかどうか心が揺れて、瞼を閉じるアランに迷ったが、小さく笑って唇で触れた。前髪に。そっと。眼下で、そのくすぐったさに、アランがふにゃっと笑う。
「掴まれ。抱えるぞ」