【大好きな君へ】
「エリックさん、ロマンティストで意外でした。好きなひとのことを書くなんて。上手くいくと良いですね。情熱的で……なんだか、そのひとが羨ましくなっちゃいました」
そうして、後ろ頭をかいて小さく舌を出し、お前はそれを冗談にする。お前は嘘がつけない。やはり冗談にしようとして、失敗していた。まさか……お前も、俺を? そう勘づくと居ても立ってもいられなくなって、俺はお前の手首を握って屋内階段を目指した。十二階建ての死神派遣協会で、階段を使う者は殆ど居なく、いつもガランとしている。向き直ると、お前はひどく戸惑った表情をしていた。
「あの……」
俺は黙ってても女が寄ってきたから、告白というものをしたことがない。勢いがなければ出来ないだろう。何か言いたげなお前を制して、俺は想いを確認した。
「アラン。お前、俺のことが好きか?」
しまった。告白しようと思っていたのに、先に気持ちを訊くのは卑怯だろう。真っ赤になって固まってるお前の横髪をゆるゆると撫でると、キュッと目を瞑られた。思わず本心が口をつく。
「狼の前で目を瞑るなよ」
「え……」
恐る恐るといった風に、上気した瞼が薄らと開かれる。
「んッ」
また横髪を撫でると、掠れた声が漏れた。
「お前が好きだ。俺は今まで節操なしだったけど、今はお前だけが好きだ。付き合ってくれないか」
お前は両掌で口元を覆って、やっぱり固まってる。
「黙ってるんなら、キスするぞ」
「あ、あのッ……俺も、す……好きです」
言葉尻は聞こえないほど、尻窄みに小さく呟かれた。
「そうか。じゃあ、キスして良いか?」
「どっちにしろするんじゃないですかッ!」
優しげでなよやかな見た目に反して、気の強いところのあるお前の調子が戻り出す。目くじらを立てて何か言おうとする唇を、塞いでやった。唇で。後頭部と背中をホールドし、身長差から仰け反らせるようにして、角度を変えて何度も触れる。お前は大人しく目を瞑り、身体をこわばらせて胸の前で拳を握っていた。お前の性格だ。きっと、恋愛経験は少ないんだろう。そう思って、舌は入れずにバードキスを繰り返した。
「ふ……んんッ!」
三十秒ほどそうしていたが、お前は急に顔を逸らした。腕の中で俯いて、ゼイゼイと肩で息をする。
「どうした? 嫌か?」
「嫌、じゃ……ないけど、苦しいです」
「お前まさか……キスしたことは?」
「ないです、そんなの!」
「は」
俺は驚いて、間抜けな声を上げた。つまり……俺が、何もかも『初めて』のオトコ? オトコって奴は現金なもので、そう思うと愛しさが更に募る。
そうして、後ろ頭をかいて小さく舌を出し、お前はそれを冗談にする。お前は嘘がつけない。やはり冗談にしようとして、失敗していた。まさか……お前も、俺を? そう勘づくと居ても立ってもいられなくなって、俺はお前の手首を握って屋内階段を目指した。十二階建ての死神派遣協会で、階段を使う者は殆ど居なく、いつもガランとしている。向き直ると、お前はひどく戸惑った表情をしていた。
「あの……」
俺は黙ってても女が寄ってきたから、告白というものをしたことがない。勢いがなければ出来ないだろう。何か言いたげなお前を制して、俺は想いを確認した。
「アラン。お前、俺のことが好きか?」
しまった。告白しようと思っていたのに、先に気持ちを訊くのは卑怯だろう。真っ赤になって固まってるお前の横髪をゆるゆると撫でると、キュッと目を瞑られた。思わず本心が口をつく。
「狼の前で目を瞑るなよ」
「え……」
恐る恐るといった風に、上気した瞼が薄らと開かれる。
「んッ」
また横髪を撫でると、掠れた声が漏れた。
「お前が好きだ。俺は今まで節操なしだったけど、今はお前だけが好きだ。付き合ってくれないか」
お前は両掌で口元を覆って、やっぱり固まってる。
「黙ってるんなら、キスするぞ」
「あ、あのッ……俺も、す……好きです」
言葉尻は聞こえないほど、尻窄みに小さく呟かれた。
「そうか。じゃあ、キスして良いか?」
「どっちにしろするんじゃないですかッ!」
優しげでなよやかな見た目に反して、気の強いところのあるお前の調子が戻り出す。目くじらを立てて何か言おうとする唇を、塞いでやった。唇で。後頭部と背中をホールドし、身長差から仰け反らせるようにして、角度を変えて何度も触れる。お前は大人しく目を瞑り、身体をこわばらせて胸の前で拳を握っていた。お前の性格だ。きっと、恋愛経験は少ないんだろう。そう思って、舌は入れずにバードキスを繰り返した。
「ふ……んんッ!」
三十秒ほどそうしていたが、お前は急に顔を逸らした。腕の中で俯いて、ゼイゼイと肩で息をする。
「どうした? 嫌か?」
「嫌、じゃ……ないけど、苦しいです」
「お前まさか……キスしたことは?」
「ないです、そんなの!」
「は」
俺は驚いて、間抜けな声を上げた。つまり……俺が、何もかも『初めて』のオトコ? オトコって奴は現金なもので、そう思うと愛しさが更に募る。