【キスは大人になってから】
「エリックさん、プレゼントされるなら、何が嬉しいですか?」
「ん? 何かくれるのか?」
社食でのランチタイム、不自然なほど不意に発された質問に冗談でそう返したら、アランは何故か頬を染めた。
「い、いえ、違います。姉が旦那さんにバレンタインのプレゼントを選ぶのに、男性なら何を喜ぶのかなって相談されたから……」
しどろもどろに言い訳しながら、その声は尻切れトンボに小さくなる。その『男性』に、お前は入っていないのか? そう訊いてみたくなったが、あまりにもアランが狼狽してるから、小さく笑ってやめてやった。
「そうだな。夫婦ならシャレもきくだろうから、ウケ狙いなら可愛いキャラクターのパンツとか」
俺は、今まで貰ったものの中で、インパクトのあったプレゼントを思い浮かべる。
「あー、ピアスを貰ったこともあったけど、ありゃ駄目だ。アクセサリーや服は、個人の好みだからな。どんなに高くても、気に入らねぇこともある」
「なるほど!」
アランはメモしかねない勢いで、前のめりに聞いている。
「香水は……その、旦那さん、いつも良い香りがするんですけど、香水なんかはどうでしょう?」
「ああ。それもな」
俺はしたり顔で諭してみせる。
「香水をつける奴ってのは、たいていブランドが決まってて、こだわってる奴が多い。自分の好みを押し付ける結果になるから、NGだ」
「そうなんですか……難しいですね」
顎に拳を当て考え込むアランに、俺は名案を思い付いた。
「煙草吸ってっか?」
「え?」
「その、旦那さん」
「ああ、はい」
「だったら、ライターとか嬉しいかもな。もう特別なものを持ってるんじゃなかったら」
アランのライムグリーンの瞳が輝く。
「持ってない筈です。いつも百円ライターだから」
「じゃあ、候補だな。何万もするブランドもんのライターもあるけど、こればっかりは値段じゃない。俺だったら、何の変哲もないジッポが嬉しいかもな」
「ありがとうございます! 参考になります!」
「ん? 何かくれるのか?」
社食でのランチタイム、不自然なほど不意に発された質問に冗談でそう返したら、アランは何故か頬を染めた。
「い、いえ、違います。姉が旦那さんにバレンタインのプレゼントを選ぶのに、男性なら何を喜ぶのかなって相談されたから……」
しどろもどろに言い訳しながら、その声は尻切れトンボに小さくなる。その『男性』に、お前は入っていないのか? そう訊いてみたくなったが、あまりにもアランが狼狽してるから、小さく笑ってやめてやった。
「そうだな。夫婦ならシャレもきくだろうから、ウケ狙いなら可愛いキャラクターのパンツとか」
俺は、今まで貰ったものの中で、インパクトのあったプレゼントを思い浮かべる。
「あー、ピアスを貰ったこともあったけど、ありゃ駄目だ。アクセサリーや服は、個人の好みだからな。どんなに高くても、気に入らねぇこともある」
「なるほど!」
アランはメモしかねない勢いで、前のめりに聞いている。
「香水は……その、旦那さん、いつも良い香りがするんですけど、香水なんかはどうでしょう?」
「ああ。それもな」
俺はしたり顔で諭してみせる。
「香水をつける奴ってのは、たいていブランドが決まってて、こだわってる奴が多い。自分の好みを押し付ける結果になるから、NGだ」
「そうなんですか……難しいですね」
顎に拳を当て考え込むアランに、俺は名案を思い付いた。
「煙草吸ってっか?」
「え?」
「その、旦那さん」
「ああ、はい」
「だったら、ライターとか嬉しいかもな。もう特別なものを持ってるんじゃなかったら」
アランのライムグリーンの瞳が輝く。
「持ってない筈です。いつも百円ライターだから」
「じゃあ、候補だな。何万もするブランドもんのライターもあるけど、こればっかりは値段じゃない。俺だったら、何の変哲もないジッポが嬉しいかもな」
「ありがとうございます! 参考になります!」
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