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【ニューイヤー●●】

「待て待て。あれは、ノーカウントだろ。ニューイヤーキスは、誰としたって良いんだ。抱き付いてきた女を、突き飛ばす訳にもいかないだろ」

「……」

 黙ってしまうアランの項に、そっと噛み付いた。そこが性感帯のアランは、小さく震える。長い沈黙のあと、ぽつりぽつりと語り出した。

「……大人げないって言うのは……俺だって、分かってる。だけど……」

「だけど?」

「俺の……俺だけの、唇なのに……」

 ……は? えっえっ何だお前、可愛過ぎるんだが! キスが好きなのは知ってたけど、お前俺の唇、「自分だけのもの」って思ってたのかマジかよ可愛過ぎるだろ無理無理無理今すぐ抱きたい、でもそう言ったらお前絶対怒るから取り敢えずキスさせろ、ほら「お前だけの唇」を味わえよ、こっち向けよアラン、なぁアラン――。一瞬の内に頭の中で言葉が渦巻いて、俺はゆっくりとアランの前に回って目を合わせた。ゆっくりと首を傾けて、下からすくい上げるようにしてキスを奪う。

「んっ……」

 ディープじゃなく、アランの好きな唇を啄み合う優しい触れ合いのあと、ブラウンの後れ毛を引いて上向かせ、舌先をつつき合う。鼻の頭を甘く噛むのは、「今日OK?」の合図。アランは吐息で笑いながら、俺の鼻を甘噛みし返した。よっしゃ! だが次の瞬間、アランが噴き出して爆笑し始めた。

「ん? どうした、アラン?」

 吹き飛んだ甘い雰囲気に少し未練を残して訊くと、アランは身を折って笑い続ける。

「だって……よっしゃって……気合い、入り過ぎ」

「え」

 しまった。心の声が漏れていたらしい。アランはまだクスクス笑いながら、軽いステップ交じりに先を行く。

「あ、おい、待てよ」

「俺の気が変わらないうちに、帰った方が良いだろう? そんなに張り切ってるなら」

 意図したものではなかったが、アランの機嫌を直すことには成功したようだ。小走りに離れては立ち止まって振り向き、俺を待っているアランに目を細める。ああ、俺、本当にお前が好きだ。アラン。

「愛してる」

「どうしたんだ急に? お金なら貸さないぞ!」

 可笑しそうに眩しく破顔する。俺はこの笑顔を守るためなら、何だってするだろう。共に、永遠(とわ)に。俺のアラン。

End.
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