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アテンションプリーズ!



女審神者なんですって!
サイコメトラーなんですって!
某巨大掲示板みたいな話もあるんですって!

地雷だったらバックですよヾノ・ω・`)









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このチカラを好きだと思ったことは一度もないし、嫌うことがあっても、このチカラがあってよかったと思ったことはなかった。
それほどこのチカラは疎ましいものだった。
人に知られぬようにこのチカラを隠して生きてきた。
現世で知られれば、化け物の様に扱われるか、奇異の目で見られるか、利用されるだけだと幼いながらも心のどこかで理解していたから。
たった一枚の布切れが、"私"を守っている。たかが一枚、されど一枚のそれは、私の秘密を守るのと同時に、"人"としての人生を与えてくれているのだ。
そう、チカラを抑えてくれるグローブは大事なものなのである。



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目の前にいる鶴丸国永は、その大事なグローブに口づけをし、びっくりした一瞬の隙を逃さずグローブの先に噛み付いた。
そしてそのまま引き抜くように、グローブを少し引っ張る。
思わず手を引っ込めようとするが、鶴丸国永は手首を掴みそれをさせない。

「つ、鶴丸国永!止めなさい!」
「止めたら秘密を教えてくれるのかい?」
「秘密なんてありません!」

このままグローブを抜かれ、鶴丸国永に触れてしまえばサイコメトリーしてしまう。
抵抗しようにも普段から鍛えている鶴丸国永に勝てるはずもなく、抵抗は意味をなさない。

「ならグローブを常につけなくてもいいだろう?きみの手は美しいのだから隠さずに晒せばいいのに」

話すまで離さないぞと言わんばかりに、鶴丸国永は手首を掴む力を緩めない。
三日月宗近もそうだが、平安刀は何を考えているのか読めないうえ、なにか見透かされているような気がしてしまう。
刀剣男士に個体差はつきものだが、この本丸の平安刀達は特に[[rb:そう> ・・]]だ。
秘密を言うつもりなんてサラサラない。けれど、きっと何を言っても納得をしないだろう。

「なんてな」

鶴丸国永はそう言うと掴んでいた手首を離す。ニコニコと笑う目の前の神は、先ほどの艶めかしい妖しさをどこに仕舞ったのか、普段と変わらぬ笑みを浮かべ、顔をぐいっと近づけてきた。
普通の女であったなら顔を真っ赤に染め上げ、目の前の神の行動に動揺を全身で表すかもしれないが、警戒心が勝ってる今、私はそんな鶴丸国永に対してグッと、睨んだ。

「あぁ、それだ。その目だ」

そう言ってパッ、と鶴丸国永が離れた。
鶴丸国永は私と目を合わせたまま、満足そうに笑っていた。

「最近のきみはつまらない表情しかみせないからな、少し意地悪をしてみた」
「───意地悪、にしては些か度が過ぎる意地悪です」
「すまない。悪かった」

かいた冷や汗が背を伝う。
ニコニコしながら意地悪だった、と鶴丸国永は言うけれどあれは意地悪をしてやろうという目ではなかった。彼らより大分年若いとは言え、人生をそれなりに歩んで来たのだからそれぐらいは分かる。何か意図があってあのような行動を起こしたのだ。

「端末が鳴っているぞ」

呑気に鶴丸国永は携帯端末を指さす。
けれど、そちらに気が向いた時にまた同じことをされるのではと思うと携帯端末に触る気が起きない。
鶴丸国永はやれやれと首を振り元いた隣の部屋へと足を向ける。
そして先ほどと同じ場所に座り、距離を置いた。
鶴丸国永を見ながら、震える端末に手を伸ばす。画面を見れば、メッセージが届いていた。
鶴丸国永を警戒しながらも、届いたメッセージを見るためにロックを外すと一週間も見れなかったせいか、未読のメッセージがかなり溜まっている。

最新のを見ると、とうらぶちゃんねるで知ったホワイト本丸の引き継ぎ審神者さんからで、『スレ見た、大丈夫ですか』という心配するメッセージだった。
そのメッセージにすぐ返信を行う。
そして溜まったメッセージを見ると、ホワイト本丸の引き継ぎ審神者さんからのものから、政府のどうしようもない営業メッセージが来ていた。
携帯端末のメッセージに一つ一つ目を通しつつ、自分がたてたスレをみ、書き込みを続けているとボーン、ボーンと柱時計がお昼の時間を告げた。

「鶴さん、主。ご飯持ってきたよ」
「あぁ、悪いなぁ光坊!」

この一週間、執務室から外に出るのは入浴と御不浄の時だけで食事はこうして食事当番が近侍と私の分を運んでくる。
本来なら食事も大広間で取る予定であったが、断固としてそれは嫌だと拒否したのだ。刀剣男士達はなかなか折れなかったけれど、近侍と一緒に食事をするならと言う事で納得し、今に至る。
鶴丸国永は障子を開け、燭台切光忠から食事を受け取った。
今日のお昼は南瓜のグラタンとサラダとスープで、毎日三食違うバランスの良い食事が出される。この一週間で痩せた身体もそれなりに元に戻りつつあり、三食のバランスのとれた"食事"が身体にとって当たり前の様に変わっていった。

「…いつもありがとうございます」
「主、ちゃんと食べるんだよ?」
「大丈夫さ光坊。俺がしっかり見ている」
「分かっているよ。残しちゃダメだからね?」
「努力はします」

彼の作る食事は美味しい。
けれど簡易的な食事を取り続けた人間の胃袋には量が多く感じる。
その為、用意された食事の三分の一は残してしまっていた。
着物を着ている事も少食の原因であるのだろうけど、厨房を預かる刀剣男士達は私が食事を完食することを目標に、この一週間、様々な料理を出してくれている。
片付けていた座卓を出し、食事をセッティングすると燭台切光忠はその場から去っていった。鶴丸国永とは向かい合うようにセッティングされたそれは美味しそうな匂いと湯気をたてていた。
座卓に置かれたその食事の前に座る。
そしていただきます、と手を合わせた。

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702 サイコメトラー審神者
ご飯食べてきた

703 名無しの審神者
反応がないと思ったら

704 名無しの審神者
ちなみにこの一週間の近侍は誰?

705 名無しの審神者
ご飯は?

706 サイコメトラー審神者
704>>鶴丸国永。この一週間隣の部屋で大人しくこっち見てる

705>>燭台切の手作り南瓜グラタン

707 名無しの審神者
美味そうだな...
光忠はどこの本丸でもおかんだな

708 名無しの審神者
(= ・ω・)っ歌仙

709 名無しの審神者
うちの歌仙は光忠と楽しそうに台所仕切ってるわ

710 名無しの審神者
うちは太郎太刀と歌仙と燭台切だな

711 名無しの審神者
びっくりジジイが大人しく待機だと...!?

712 名無しの審神者
うちの鶴丸なんて落とし穴掘って自爆してたぞ、さっき

713 名無しの審神者
うちは悪戯しすぎて初期刀の加州に怒られてる(現在進行形)

714 サイコメトラー審神者
この本丸の平安刀はなんか見透かすような瞳でこっち見てくるから苦手なんだけど、鶴丸国永はその中で群を抜いてる

さっきもグローブとられかけたし

715 名無しの審神者


716 名無しの審神者


717 名無しの審神者
チカラを使わないようにしてるグローブを?

718 名無しの審神者
鶴丸がとろうとした?

719 名無しの審神者
えぇぇぇ!?

720 名無しの審神者
どうしてそうなった!?

721 サイコメトラー審神者
目が合ったあと近くによってきて、手を掴まれてグローブの指先に噛みつかれ、とられかけた
睨んでやったら「あぁ、それだ。その目だ」と言って満足そうに笑っていたけど

722 名無しの審神者
その鶴丸病んでない?

723 名無しの審神者
>>722
ホワイト本丸の刀剣男士だぞ
病んでるなんてこと:(´◦ω◦`):ガクブル

724 名無しの審神者
>>723
そうだぞ、ホワイト本丸の刀剣男士が病んでる訳ない!

725 サイコメトラー審神者
むしろ私が病んでくわ

とりあえずまだ鶴丸国永がこっち見てるし、仕事もしないといけないから一度落ちますわ

胃が痛い

726 名無しの審神者
( ・´ω`・p[お疲れ様ァ]q

727 名無しの審神者
( ¯−¯ )ノシ

728 名無しの審神者
( ^ω^ )」 マタナ

729 名無しの審神者
俺も仕事するかー





[newpage]




初めて彼女を見た時、薄暗い何かを背負った人の子だと思った。








一本筋が通っているかように背を真っ直ぐにし、鴇色の着物、唐織の帯を身に纏い、髪を結い上げ、その姿に似つかわしく無い黒のグローブを手につけて彼女はこの本丸へやって来た。


この本丸の後任としてやって来た彼女を、刀剣男士は遠くから見ていた。
研修で。けして優秀とは言えない成績だった彼女が、巷でいう『ホワイト本丸』の引き継ぎ審神者になる為の最初の一歩を俺達は廊下の柵にもたれ掛かって見ていたり、屋根の上から眺めていた。






────命の終わりが来るのを私は知っている
────命が尽きる前に。私は、私の為に、次の審神者を、私が生きている間に招きたいと思っている




ある日突然、前任者の審神者はそう言った。
前任者が病に侵されていることは本丸の刀剣男士全員が知っていた。
前任者が───、主が居なくなれば自分達は散り散りに他の本丸へ譲渡されるか、新しい審神者を迎えてこの本丸を続けるか、どちらも受け入れる事が出来なければ本霊に帰るかだと思っていた刀剣男士達は、主が決めた事ならばとそれに従った。
勿論、全員が最初からそれを受け入れたわけではなかった。
和泉守や加州などはその代表格であり、彼らは反対したが主の説得に渋々折れ、そうして後任者───彼女を迎えることとなった。


主が何をもって彼女を選んだのか。
主はどうして他人に本丸を譲る事にしたのか。
その理由は、きっと主と古参の五振りにしか分からない。


本丸に少しずつ馴染んだ彼女は、後任者として、新たな審神者として日々真面目に主から審神者とはなんなのかを学んだ。
刀剣男士達と笑い、怒り、泣き、毎日を過ごした。
そして、主──前任者が亡くなり、彼女は新たな『主』となった。

日々慣れない審神者の仕事。
もう、学べる師はいない。
それでも彼女は前任者に任されたこの本丸が"落ちた"と言わせないように頑張っていた。
俺達も前任者が築きあげたものが無くならないように気を配った。
だが、きっと俺は、────[[rb:俺達は > ・・・]]何処かで間違ったのだろう。
彼女が離れに篭もるようになって、そう気づいた時には彼女との間に見えない溝が出来ていた。
現に、目の前でパソコンを使い作業をする彼女はこちらを警戒している。
離れに篭もり、痩せ、やつれていった彼女はこの一週間の生活で以前とまではいかないが、その体型を戻しつつあった。
それは、きちんとした食事をさせている事の成果だ。
しかし、彼女の中から溢れ出る警戒心は一週間経っても消えない。いや、警戒心というより不信感だ。
母屋で以前と変わらぬ生活をすればいいのではないかと言った刀剣男士がいた。けれど彼女が勝手に作った溝は埋っていない。
けれど、どこかにあったはずなんだ、溝を生んだ原因が。

(あのグローブ...)

グローブをはめている手を見て、顔を上げると一瞬、彼女と目が合った。
すぐさま、彼女は視線をパソコンの画面に戻してしまったけれど。
俺はそんな彼女の態度に内心ため息を吐いた。



(とりあえず、もう一度原因を探るか)













































俺は。


前任者がまだ生きていたあの頃のように、彼女と俺達が、もう一度隣同士で笑い会える日を夢見ている。

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