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「成実、お前重森の里に行って来い」
凪がこの城を離れて暫くたった時、成実は政宗から命令を受けた
それは成実にとって久しぶりの仕事だった。今の今までとても仕事を任せられる状態では無かったのだ
小十郎が喝を入れます!と言って成実の所へ行くとすぐ帰ってきた位だ。あれは放っておくしかありませんな、とあの小十郎がそう判断したのであればもう重症だったのだろう
現に凪が慶二と旅に出たと聞いても、成実はいつものように怒ったりしなかった
ふぅん、と呟いただけだった
それだけ今回のことがショックだったのだろう
だが、このままの状態がよくないことも政宗にはわかっていた
無理にでも動かさなければ、こいつはダメになる
与えられた任務に成実は
「わかった」
と一言だけ言い、立ち上がって部屋を出た
政宗はその背中を静かに見送る
「……」
政宗と成実は、成実が生まれてからずっとの付き合いだ。そんな関係の中で、今の成実の状態は初めてだった
互いに譲れないものがある、ただそれだけなのに
どうしてこうもすれ違ってしまうのか、と政宗はため息をはいた
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何も感じない
まるで何もかもが凍ってしまったみたいだ
「おい、くそ餓鬼」
重森の里に行く準備しないといけないと成実は部屋を出た
しばらく歩いたところで、匡二に捕まる
両腕を組んで立つ姿をみても成実には何も感じることが出来なかった
「何」
「凪様の事さ。凪様はお前のことを思って、求婚を断ったんだ。それは、お前の事を思ったが故だ」
「…俺のことを思って…?笑わせるなよ。俺のことを思うなら受け入れて欲しかったよ」
成実の背中は悲しみに満ちていた
その日の晩は翌日の為の準備に費やされた
縁側で武器の手入れ等が主だったが、無心のままに成実は時を過ごす
「 」
相棒の槍を置いて成実は宙を見つめた
あの日までは幸せだったのに
そう、思ってしまう
後悔と自責の念が彼から覇気を奪っていく
「明日重森の里とやらに行くそうですね」
声が背後からした
匡二だろう。こと最近成実に話しかけて来るのだ
理由はわからない。だがいつも話の内容は凪の事になるのだった
「私も同行をお願いされました。よろしくお願いします」
彼はそう言って隣りに腰を降ろした
「…一つ」
匡二は成実の顔を見ずに空を見上げて言った
「ずっと言ってますから、耳に蛸かと思いますが凪様の事を一つ。もうこれだけを言ったら何もお前には言わないよ」
右足を曲げて膝に腕を乗せた
「傷ついたのはお前だけじゃない。凪様だって傷ついたんだ。うじうじするなら凪様の事を諦めてしまえ。お前がそのままなら、俺は凪様が帰って来たと同時に、この城から連れさってやる。二度とお前と会う事が無いように、な。そして、凪様の運命を変える奴を、お前から違う奴にでも出来ないか探すさ」
「……運命を、変える奴?」
「あ」
やば、口が滑った。と匡二は言うが成実には意味が分からなかった
だが、それでも
意味が分からなくても、成実が立ち直らないとどうなるかだけは言わなければ
凪様が傷つくのは
もう耐えられない。涙より笑ってもらえてればいい
それが···
「···今の言葉は、忘れろ。まぁ言いたい事はだな、お前がそのままなら、凪様は誰かのものになる、ってことだ。凪様が望まなかろうと、あの子の為にそれは必要な事だから。お前がダメなら俺は他の男とあの子をそういう関係にさせるよ」
「 」
ひゅ、と息を成実は吸った
俺、以外の誰かと…?
匡二は成実には聞こえ無い様に呟いた
──────魔女は、そう言った…。運命を変えるのはそう言う事が必要だと
「それだけだ。それだけ、だ。もう何も言わない」
匡二は立ち上がると静かに部屋を去った
成実は聞きたい事が沢山、今の会話で出来た筈なのに何も口に出す事が出来なかった
ただ固まって居るだけだった
「 」
俺とは結ばれず、違う奴と結ばれる……?
俺が運命を変える?
俺が立ち直らないと、俺以外の奴がアイツと…?
ズキン
ズキン
ズキン
ズキン
痛 い
痛い
痛い
痛い
成実は道具と相棒を丁寧に包み、室内に戻った
仕方ないなんて言わないで
ねぇ
運命なんて気紛れなんだよ
だから
はやく
彼女を引き上げてあげて
その前にまずは
あなたが闇から立ち上がらなければ