3
あなたの名前
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「待たせたな」
「いえ」
慶次は走って凪に駆け寄って来た
凪の腰には、先刻匡二から貰った刀がある。慶次は一度その刀に視線をやり、凪へと視線を移す
「馬には乗れる?」
「残念ながら乗れなくて」
「そっか…。じゃあ俺の前に乗ってな。北斗も連れてくのかい?」
「はい。私の犬ですから」
慶次は馬に荷物をくくり付けた
慶次はしゃがみ込んで北斗の頭を撫でてくれた。北斗は気持ち良さそうに尻尾を振る
「じゃあ北斗がついて来られる様な速さで行くか」
凪をひょい、と馬に乗せて自身も馬の背に乗った
手綱を引き、馬が動く様コントロールする
「じゃ、行こうか」
パシン!と音がすると馬は前へ歩き出す
始まりとしては良い天気の今日だ
ゆっくりだが、確実に城から離れて行く
馬の歩行リズムは穏やかで、慶次が北斗の速度に合わせてくれているのだと分かった
「…」
凪は、一度だけ振り返った
慶次は何も言わなかった。前を見て手綱をひいて居る。凪が何を想って居るか分かるからだろうか
「だから"なるみ"じゃねぇって。しげざね。しーげーざーね」
――――――――――
「危ないなら…武術教えて下さいよ」
「ハァ?お前に武術は無理。そんな細っちぃ腕で刀・弓・槍が扱えるかよ。それに何かあっても守ってやるから、鍛える必要なんざねぇーよ」
――――――――――
「これは?」
「帯」
「前にも言ったじゃないですか…!!そんなにいらないって!」
「帯があれば着物の種類少なくても着回できんだろうが」
「…成実さん、私そこまで着物着回せませんてば」
「普通だって」
「…………」
――――――――――
「うあ…」
「暑いなぁ、ほら。涼め~」
城を見ると、成実との思い出が溢れて来る
些細な日々の会話とか、辛かった時に話した事とか、本当に些細な事だけれど鮮やかに胸に刻まれている
涙が溢れ出しそうになったけれど、唇をぎゅぅっと結んで表情をくしゃりとさせる
「っ…」
泣くな・泣くな・泣くな泣くな泣くな泣くな泣くな泣くな!!
そう思うけれど、涙は溢れてきてしまう
「泣いてもいいよ」
「 」
涙が溜まった目を見開いて固まる凪
慶次はやはり凪を見ずに正面だけを見て手綱をひいている
だけど言葉は凪に向けられて居た
「暫く離れるだけだけど、辛いなら泣いていいよ。女の子は笑ってるのが一番綺麗で可愛いし、ずっと辛そうな顔されてると俺も辛いし。まずはいっぱい泣いてすっきりしな」
その言葉に凪は甘えた
涙は止まらなくて、とめどなく流れていく
成実さん
成実さん
成、実さん
成実さんをあんなにしたのは私
ごめんなさい、ごめんなさい
私がもっと大人だったら違う考えが出来たかな
…否、きっと大人だったとしても成実さんを傷付けてしまったかもしれない
それでも思います
私が旅にでて、その合間にその傷が癒えている事を
最悪、別れる事になってもいいから…
自分のエゴで傷付けてしまったから、覚悟は出来ています
成実さん
なるみ、さん