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「た、び…?」
「あぁ。成実と何があったか俺、知ってるよ。今お前達は近くにいちゃ···、いけないと思う。だから、俺と旅に出よう?」
そろそろ利達が此所を嗅ぎ付けてきそうだし
慶次は立ち上がり、凪の両脇に手を入れて彼女を持ち上げる
急に感じる浮遊感
慶次と同じ目線まで身体を上げられる
「越後から京都なんてどうだい?越後は米が美味しいし、京都は京女は綺麗だし観るところが沢山ある」
ニコニコする慶次
だが、凪にはそんな気分になれなかった
「すみません、今旅だなんて…」
「此所に居ると、成実と凪は壊れる」
「――――!!」
「頭を冷やす時間が成実には必要なんだ。俺・成実と凪の事好きだからさ、そんなの嫌だ。だから旅に出よう」
凪は泣きそうな顔になるが、泣かない様に我慢をする
それが慶次にも伝わって来た
女の子にこんな顔させちゃいけないなぁ、だから今、一時成実から離すんだ
二人の笑顔を見る為に
二人の笑顔を見ると、少し幸せになるから
「最低限の荷物纏めて、行こう」
「…」
「暫くしたらまた帰って来るから。速く」
慶次は凪を降ろす
凪は、フラフラした足取りだが自分の荷物を・最低限の着物、それから現代から持って来た鞄に制服を持った
それから旅に出るなら、と佐助から貰った鳥を空に放った
きっと武田に帰ってくれるだろうと、思って
ふ、と視線を机にやれば四国に行った時四月から持っていろと言われたオルゴールが目に止まる
螺子を巻き・蓋を開けて音を流す
これも、持っていこう。そう思った
「…」
荷物を纏めると慶次がそれらを持ってくれた。部屋を見渡す。最低限の荷物だけを持ったが、存外外に出てる私物は少なかった
成実から買って貰った着物等はタンスにしまってある。だからそう感じるのかもしれない
「…政宗さんに言わないと」
「政宗にはあとで言うよ。先に厩舎に行って待ってて」
慶次はそう言うと、廊下に出た
いつも歩き方では無く、静かに歩いた
凪は「北斗っ」と大声を出した
北斗も連れて行こう。そう思った
「凪様?」
北斗を呼んだつもりが、オマケまで一緒だった
「北斗、貸して」
「はい」
匡二は抱いていた北斗を凪の前に降ろした
「ありがとう、匡にぃ」
「いえ、私の役目ですから。···部屋の荷物がありませんが、一体···」
凪はしゃがみこみ、北斗の頭を撫でた
ふさふさ、ぬくぬくで気持ちが良い
「ここを、出ていくことにしたの」
「誰と、ですか」
「分かってるくせに」
ふぅ、と匡二は溜め息をついた
「現時点で前田慶次の提案した意見に、私も概ね賛成です」
「…」
「凪様が壊れる、それは死と同義かもしれない。そうならない為にも、貴女は此処を離れるべきだ」
匡二は苦笑すると、片足を跪き、まるで騎士のような格好をした
「私が貴方とアイツを夜二人きりにならないようにすれば良かったと、後悔しました。いつも裏目に出ますね。私がする事は」
凪の手を取ると彼は己の額に触れる様に持って来た
「いってらっしゃい」
「え…?」
「私はお留守番してますよ。旅でしょう?腕が立つ人間は一人で十分でしょう。…が些か不安ではありますが…。そうだ凪様、ちょっと待って下さい」
匡二は立ち上がり、その場を去る
慶次に厩舎に行ってと言われたが、少し遅れてもいいだろう。しかし何をするつもりなのだろう匡二は…
五分もしないうちに匡二は戻って来た
手には刀を持っている。白鞘で、拵えに柄頭と鞘尻に一つ、百合の花が施されている
「神楽と言います。持って行って下さい」
「刀は扱えないよ」
「分かってます。護身用と言う形で。これは甲斐でお世話になった刀匠が打ったものです。まだ一度も人を斬ったことがない刀ですが。あ、でも切れ味は抜群です」
「…」
「自分の身が危なくなったらソレを使って危険を回避して下さい」
凪は刀をぎゅぅっと抱き締めた
「分かった」
匡二はニコリと笑った
そして凪は、厩舎に向かい歩き出した
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「じゃあ、行くよ」
「Ah、穀潰しが居なくなって精々するぜ。…凪を頼む」
「分かってるよ」
慶次は、政宗に背を向けて居る
政宗は慶次の背に視線を送る訳でも無く、胡座をかき・煙管を吹いていた
吐き出された煙が宙に漂う
「時間稼ぎって所なんだし、ちゃんと守る。旅なんだし楽しみながら京都まで行くよ」
「I do not allow what it is if I meet」
「何言ってるか分からないよ…政宗。でも何か言いたい事は分かる気が…………する。大丈夫だって!!何もおこさせないから。じゃ」
慶次は立ってから一度も政宗を見ずに、部屋を出た
その背中を政宗もチラッと一度見ただけだった。
これは仕方無い事だと思い、煙管に口をつける
だが、心の何処かでは割り切れない自分が居るのも確かだった
従兄弟の成実の行動が理解出来ないと言う訳でもない。むしろ理解している
自分が成実の立場だったら、成実と同じ事をしていた筈だと思うからだ
「Recover itself early」
立ち上がり外を見れば曇り空がそこにはあった