2
あなたの名前
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
凪が一人で赤ちゃんを返した時、ギャーギャー騒いでいたあの二人は凪がいない事に漸く気がついた
「あっ!あいつ、一人で行きやがった…!!」
「本当だ。荷物も無い…。今から行けば間に合うかも!」
喧嘩もどきをしていた二人は、立ち上がり廊下に出た
と、慶次が思い出したかの様に突然成実に聞いた
「成実はさ、凪を嫁にするのかい?」
「…誰に聞いた。梵か、匡二か」
「え、まじなんだ!!」
慶次は成実の前にまわると足を止めた
成実の前に止まった訳だから、勿論成実も足を止めることになる
「俺の結婚話は、お前にゃ関係無いだろう?どけよ。早く行かないと別れの挨拶出来ねぇ」
片手を腰に当てて、空いている片手で“しっしっ”とあっちいけ!とやる成実
しかし慶次は退こうとはしない。あー、だの唸って悩んでいる様だ。大きい図体で立たれると本当に邪魔だなと成実は思った
「慶次。いい加減に…」
「凪に求婚しても、返事は“否”だよ」
………
……………
…………………
成実は固まった
ゆっくり、ゆっくりと視線を慶次の足元から上へと移動させて慶次の顔まで持ってきた
「冗談も大概にしろ。お前“人よ恋せよ”とかよく言ってるくせに、邪魔する訳?ツマらねぇ冗談吐くんじゃねぇよ」
「冗談なんかじゃない!今日、凪がそう言った」
「凪が…?」
成実は一歩、二歩と後退し嫌な動悸がする胸をグッと押さえる
「…有り得ないですよ」
「私、いつかここから消えなきゃならない」
「誰も手の届かない場所へ、帰らなきゃいけない。それは何時か…わからないけど、私はきっと成実さんと深い繋がりを持っては…駄目なんです」
「今はただ恋人って言う関係で、私は満足しています。そのままの…関係で私はいたい。いつか別れがくるなら、傷は浅い方が良い」
「成実さんの事は、大好きです。いつだって優しいし、いつだって悪い時は諭す様に教えてくれる。いつだって…私に気持ちをストレート…真っ直線に伝えてくれる。身内以外でこんなにも好いてくれた人は成実さんが初めてです。だから」
「彼の幸せを願えばこそ私は、夫婦にはなれない」
「なぁ、俺そんなに馬鹿じゃないから、凪が何か大きな秘密抱えてるのが分かるよ。その秘密を政宗や成実や小十郎、あと匡二達が知ってるのも何となく分かるよ。だけど、女の子にあんな…あんな諦めた様な顔をさせる秘密なんて何なんだよ!」
慶次は成実に詰め寄る
肩を掴み、成実を揺さぶる
成実はゆっくり口を開いた
「あいつ、がそう言ったのか」
慶次は縦に首を振った
成実は、自分の肩に有る慶次の手を退けると踵を返し、今来た道を戻ろうとする
「門に行くんじゃないのかよ!」
「用事が出来た。一人で行って来い」
成実は振り返りもしないで、歩く。背中から、怒気を感じられる
残された慶次は、その背中をただ見送ることしかできなかった
(恋はいいものだけど、楽しいものだけど……、どちらかが諦めたらこうなるんだよな)
彼女の顔と、成実の背中が慶次の脳内に浮かぶ
二人が納得のいく形で収まれば、それはそれでいいのかもしれない。それが一緒にいることなのか。いない事なのかはわからないけれど………