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「太郎君のお祖父さんが?」
寒くなって来たので、成実の部屋に移動することにした
匡二は服を持ってきて凪に渡したあと、すぐに畑へと出掛けてしまい、凪と赤ちゃんと慶次だけで成実の部屋へ
成実の執務の為の書類は赤ん坊を預かったあとから赤ん坊の手に届かないところに置かれるようになり、今成実の部屋の床は何にもない綺麗な状態で。成実いわく、赤ん坊を遊ばせる為だ、とそうで
成実が書き物をしている室内で遊んでいた時に、漸く待っていた人がきた
勿論赤ちゃんの…太郎君の迎えだ
「はい、今城の外にいらっしゃいます」
「そっか、お別れかぁ…。今連れて行きます」
凪は赤ちゃんをぎゅぅっと抱き締めると、1度寝かせて荷物をまとめる
「引き取りに来たのか。じゃあ俺も行く」
成実は筆を置き、立ち上がって凪が持っていた荷物をその手から取ろうとした
「いいですよ。仕事をしていて下さい」
「大丈夫大丈夫」
「仕事投げ出すのはいけないぜー、成実ぇ」
成実は慶次の後頭部を足蹴にする。何度も何度も
慶次はその度に「痛いって!!」と悲鳴をあげるが、成実はおかまいなしのようだ
「いーか、慶次。投げ出すのと中断するってのは意味合いが違うんだぜ―?」
にこやかに慶次を成実の方を向かせると、成実は慶次の胸倉を掴んで拳を慶次の前につきつけた
なんだかんだ言っても成実と慶次は仲が良いのだと思う
凪は、片手に荷物、片手に赤ちゃんを抱いて、こっそりと部屋を出た
静かな廊下を目的地までゆっくり歩く
赤ちゃんに語りかけながら
「ようやく太郎くんのお母さん帰ってきたのかなー?太郎君ー、寂しいなぁお姉ちゃん」
すりすりとホッペをすり合わせる
柔らかい…。小さな手が鼻に当たった
「あぃっ!」
開いた口から小さな前歯が覗く
「太郎くーんッ!!」
世話をした間に情が移り、少しだけ寂しい気持ちになった凪だった
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城の門まで行くと、団子屋のお祖父さんと二人の男女が立っていた
一目でその男女が赤ちゃんの親だとわかる
赤ちゃんは先にいる人に気がつくと、男女の方へ手を伸ばす
はやく抱かれたいのだろう
親も同じようで、凪と赤ちゃんの所へ三人が駆け寄ってきた
「すみません、今までありがとうございました。太郎が迷惑をかけませんでしたでしょうか…?」
お祖父さんと夫婦がペコペコと謝る
凪は赤ちゃんを夫婦に預けて、お祖父さんのそばに寄った
「迷惑なんて…楽しかったですよ。太郎君可愛かったですし」
確かに夜泣きやらおしめやらごはんやらは大変だったが、赤ちゃんが笑う度にそんな大変さが吹っ飛んで逆に癒された
迷惑よりも癒された方が大きい
「またお団子買いに行った時、遊ばせて下さいね」
ニコリと凪は笑うと三人、いや四人を見送った
いいなぁ、と思った
自分にはなかったものをみて
いいなぁ、と、見送りながら、そう、思った