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くしゅん!
赤ちゃんの小さなくしゃみが三人の視線をあつめた
「寒いんじゃねぇの?夢吉、温めてやれよ」
慶次はニコニコと笑うと夢吉を赤ちゃんの近くに降ろした
「んんう…」
「服…もう一枚いるかな…」
「服は何処ですか」
「成実さんの部屋」
「私が取ってきましょう」
匡二は立ち上がると、縁側から消えた
残された二人と赤ちゃんと夢吉
赤ちゃんは凪と慶次の間に座り、二人にあやされている
「太郎くん、いないいないばあ!」
「凪は赤ん坊好きなのか?預かって一週間たつけど愚痴の一つも聞かないしさぁ」
「んー嫌いじゃないですよ。可愛いし!」
「ふぅんそう言うもんなのか」
「あたしもいつか自分の子供欲しいって思う分には好きですよ」
「…成実の子供?」
慶次は横目で凪を見た
ぼんっ!と顔が真っ赤になる凪。一気に赤くなった顔はまるで林檎のようだ
「ななな」
「いや、だって恋仲なんだろ?二人は!なんかそうなってもおかしくない感じだし、なったらなったで利達みたいな夫婦になりそうだし!」
いつかそうなるんじゃないの?と慶次は言った
私と成実さんが夫婦…
そういえばと、武田の領地から帰ってくる時の成実の言葉と村人の言葉を思い出した
「…有り得ないですよ」
凪は、手を膝に置いて赤ちゃんから視線を外して空を見上げた。秋が近い空にはトンボが沢山飛んでいて、絵に書かれていそうな感じだ
空を見る凪の目は一瞬虚ろな目をしたが、それはほんの一瞬で慶次には分からなかった
凪は悲しそうに微笑している
「何でだい?」
多分少なくとも成実は凪を娶りたいんじゃないかな、と思ったが凪はゆっくり口を開いた
「私、いつかここから消えなきゃならない」
匡二は言った
私の運命が変わったら、帰らなきゃいけないと
それは別れを意味する
「誰も手の届かない場所へ、帰らなきゃいけない。それは何時か…わからないけど、私はきっと成実さんと深い繋がりを持っては…駄目なんです」
「成実ならそれでも事を運びそうだけど」
どうやら凪より慶次の方が成実を少し恋愛面に関しては理解している様だ
凪は首を横に降ると、慶次の方を向いた
「今はただ恋人って言う関係で、私は満足しています。そのままの…関係で私はいたい。いつか別れがくるなら、傷は浅い方が良い」
その言葉はとても重みを帯びていた
二人は幸せそうに見えるのに、凪は慶次には想像のつかない大きな闇を抱えているのだと理解した
それと同時にまた、成実の恋の道の厳しさも…
「成実さんの事は、大好きです。いつだって優しいし、いつだって悪い時は諭す様に教えてくれる。いつだって…私に気持ちをストレート…真っ直線に伝えてくれる。身内以外でこんなにも好いてくれた人は成実さんが初めてです。だから」
再び沸き起こって来た感情を、私は押し込もうとはもう思わない
あれは成実さんに好きって言われた時
思わせぶりなことはしないでくれと言われ拒絶されて、政宗にぽつりぽつりと呟いた言葉
…本音
「彼の幸せを願えばこそ私は、夫婦には···なれないですよ」
そう、幸せを願えばこそ