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あの夜決意をしたものの、成実は未だ求婚出来ずにいた
理由は、まぁ言わずもがな。恥ずかしさと…慶次と匡二だった!!
とことん邪魔をしてくるのだ
因みに二人は、邪魔をしているという気持ちは少しも無いだろう
タイミングが無いのだ
二人きりと言う空間が無い
赤ちゃんに構いまくりだし、それ以外は自分の部屋以外…誰かの部屋にいたり、畑にいたり、台所にいる
「はぁ…」
こうもタイミングが合わないと、意思が薄れて行きそうだ
「伊達三傑でも色恋沙汰は…はぁ」
「溜め息とは、どうしました」
いつの間にこの部屋に入ったのだろうか
匡二が目の前にいた
「珍しいじゃん。この部屋にお前が来るなんて」
「太郎君の着替えを取りに。悩みごとですか?糞餓鬼らしくない」
「俺だって悩む時は悩むの!!」
ふと成実は思った
タイミングを逃すうちに、求婚の台詞どうしようなんて考え始めて居た。タイミングが合わないのと台詞は悩みになっていた
「あ、あのさ。(あまり聞きたくねぇけど)お前らの世界の求婚の台詞ってどんなの?」
匡二は目をぱちくりさせて、成実をみた
成実の顔は少し赤くなって居て匡二はその真意が分かった
「ふむ、台詞ですか。まぁメジャーな所だと《結婚しよう》ですね。凝ると後々後悔しますよ?あと結婚といえばウェディングドレスでしょう。真っ白なシルクに身を包み、ベールの下に隠れた奥さんの顔。白無垢も良いですが、私はドレスの方がいいですね」
「ドレス?」
「凪様に求婚でも?」
匡二は背を向けて、成実に聞いた
「ななな、何いっ…」
「隠そうとしても無駄ですよ?…そうか。求婚か」
匡二は嘲笑でもなく自嘲でもない、けれどそれに近い口調だ
「…いつか帰るかもしれない人間を、お前は嫁にするのか?」
匡二の口調が変わった
いつもの口調では無い。多分彼の本来の口調だ
…いつか帰るかもしれない…またその言葉を聞くとは…
成実は拳を握る
決めたはずだ
もう構うものかと
「…帰さない」
「……」
「あいつがそれを願おうが、あいつが望まなくてお前がそれを望もうが、誰かがそれを望もうが…俺は一度手に入れたものを手放すなんてしない。ましてや一生ものだって想う女なんだぜ?凪はさ。帰さないし、帰したくない。例え帰りたい、と言われても帰さねぇ」
「…」
成実の顔はすっきりした表情をしていた
多分、こいつなんだろうなとそう思う
凪の運命を変えるのはこの男なんだと思う。いや、実際彼女は少しこの世界にきて変わった
あそこまで人に懐くなんてのは無かった
ここの人間のお陰なのだろう
「頼む。俺に求婚のちゃんすとやらをくれ…!!しようとしても、なかなか言い出せなくて時間が過ぎて行くばっかりなんだよ…!!」
「…はぁ、まぁいいですけど」
「え…まじ?」
匡二は振り返り成実を見た
その瞳は、以前と違い澄んでいる様な気がした
「お前になら、…きっと任せられると。そう思う。不幸にしないと信じられる。私じゃ駄目だからね。じゃあ、今日の夜にでもチャンスを作ってあげましょう。では」
部屋から出ると匡二は襖を閉めた
成実はまさか良い返事が貰えるとは思って無かったからか、すこし固まっていた
ギシ、ギシ…っ
ギシギシ
木の軋む音がとても鮮明に聞こえる
風がとても冷たく感じる
「限られた時でも私は、彼女の幸せを選びます。だから神様、その時を少しでも…少しでも長く…長く、延ばしてください」
それが私の今の願いです