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真実を解き明かされた今、凪はどうしようもない気持ちでいっぱいだった
何故自分の前から姿を消したのかは聞かなかった。聴けなかった。自分の為に色々なものを犠牲にしているだろう匡二に、聞くことなんて出来なかった。自分の頭がそれで一杯だったと言うのもあるのだが⋯
「私の未来」
死
その一言だけで気分が重くなる
「…」
凪は体育座りになり、己の腕をぎゅぅっと掴み顔を腕と腕を掴んだ空間に埋めた
「凪―?」
部屋の前で成実の声がした。だけど返事はしない…したくない
凪はだんまりを決めた
けれども相手は成実だ。障子を開けると「なんだいるじゃん」と呟いて凪の前までやってきた
「何かあった?」
微動だにしない凪
こりゃ何かキツい事を匡二から言われたと推測した
腰を降ろして凪の背中に手でそっと触れた
「…お前にしか分からない事なら言わなくて良い。でも言えるなら言え…?一人で抱えたって辛いだろ?そ、それに…こここ、恋仲なんだから分かち合おうぜ」
結局は何があったか教えてほしいのだ成実は
「…」
「凪」
「…」
「ん?」
「⋯10年以上、ある人の為にその人の時間を掛けて頑張って、でも、それは、その人は知らなくて、でも今更頑張るのを止めてって言えなくて」
成実には誰だか分かった。匡二だろう
頑張った事とは多分凪を救う為にした事だろう
「やめて欲しいって…それは、そいつ次第じゃないのか」
「でも」
「あのな、俺は今梵の天下をみたいから、頑張って今も努力してる。それでも、もしかしたら梵は天下を取れないかもしれない。でも今はそんな事考えないし、その時そうなったとしても俺は後悔しないと思う」
「それは成実さんだから…」
成実は首を横に振った。
違う、違うんだよ凪
俺が言いたいのはそうじゃなくて…
「そうだ。それは俺の気持ちだからそいつの考えとは違うはずだ。でもな、一つ分かる事はある」
優しく 優しく 宥めるように
「お前は匡二の時間を奪ってしまった事が、今悲しくてこうなってるんだろ?だけどな。それは匡二自体が頑張って来たことを、否定する事になる。勝手にお前の為に頑張って、頑張って来た先にいるお前だけは…………それを悲しい、無駄だったと言っちゃいけない。それだけは…されたくないだろうよ」
肩が震えて居る
成実は、目を閉じて…それから凪の頭に手を添えて、顔を上げさせた
「あはは、まぁた、ぐしゃぐしゃだぜ 顔」
「う、うわぁあああんっ!!」
凪は、成実に向かって飛び込んで抱き付いた
成実は、よしよしと頭を撫でた
凪の涙で丁度顔が当たっている肩の部分が濡れる
それを感じて、頭を手で押しつける
凪は、めぇめぇと…泣いた
凪にはきっと辛かったのだ
匡二の思いが
凪を愛しているから匡二は頑張ってきた
世界を越えてまで凪を追って来た
彼女を助ける為に
それは確かに、彼女の意思とは関係無く彼が勝手にしてきた事だし、やってきた事はけして無駄だったとは言い切れない
彼らが学んだ知は、彼らを医大という難関への道を開かせた
彼らがつけた武力は、己を鍛え上げる事で精神面も鍛え上げられた
それらはけして無駄とは言い切れない
だって、その力が糧となり彼らを動かす。それは凄い事
誰かの為に何かをしたい
それを思える人間は幸せなのだ
それに彼女が気がつく迄には沢山の時間が掛かるだろう
今はただ好きな人の中で泣いて居る彼女
彼女がいつか
彼女の母親が願った未来
彼女の兄と兄の幼馴染みが願った未来
それを本当の意味で理解する日がくればと思う
命や
人生を
使ってくれる人がいるなんて
そうはない