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あなたの名前
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今でもよく覚えている
あなたと初めて会った日を
甘いデザインのいかにも女の子、のような可愛らしい色の服を着て、ピンクのベッドに寝かされて、その小さな手足をバタバタと動かしまだ見えぬだろう瞳は濁りがない、本当に清らかな瞳だった
貴方は知らないだろうけれど
私は、ずっと貴方と一度さようならをした時の当時の貴方と重ねていたのかもしれない
貴方も成長したのに
―――――――――――――
漆黒が世界を包む時刻。この時間帯に活動をするのは、野生動物か闇に生きる人間ぐらいなものだろう。
そんな時間の林の中を、二人の人間が歩いている
一人は凪だ。珍しくこの世界に来た時に着ていた制服を着ている。ジャケットは夏だからか着てはいなかったが
もう一人は匡二だ
「私が嫌いですか」
静かな林の中、匡二の声がはっきり聞こえた。風の音、葉のざわめきは耳に入ってこない
「いきなり消えて、現われて貴方の運命を変えてみせると訳の分からない事を言って、貴方に付いて回って…。私はそばにいない方が良いですか凪様」
凪は振り返らない
振り返る事が出来なかった
「嫌いだからあの時、消えたのでしょう?甲斐に行ったと、私と居ると息が詰まると糞…成実が言っていましたよ」
確かに、そうだった
息が詰まるから彼がすきを見せたあの時に佐助に連れて行ってもらった
彼の視線から逃れる為に
「凪、様」
「分からないよ。嫌いでもないし好きでもない。だけど」
彼女は振り返り、私を見た。あの頃よりずっと大人びた瞳で
「匡二が真実を。隠している事を話すまできっと私は…匡二が苦手なままよ。教えて無い事を教えて…!!」
「隠している、事ですか…」
匡二は首を振り、暫く下を向いてゆっくりと顔を上げた
「戯言・昔の話だと、思って下さい」
いつもそうだ
匡二は直接的に表現をしない
きっとこれが隠している事なのだろう
凪の心は、漸く聞ける真実の断、否、核心を聞けると思うと嬉しかったが、その反面不安でいっぱいだった
子供の未来…?
えぇ
その魔女の一族には代々、心を見透かす異能と、たった一人の人間の未来を見る力があったそうです
⋯⋯⋯
その子供の未来は、ある時間から先、闇でした
闇、ということは見るべき未来が見えないということ。つまり、死んでしまうのだと、魔女は知った
産んだ我が子が成長し、誰かと恋に落ち、老いて亡くなる、そんな未来でないことに彼女は1度目の絶望をした
彼女は娘の未来を変えるべく、家族に全てを話すことにした
彼女には、夫と彼女とは血の繋がっていない前妻の妻が産んだ男の子供が居ました
そして、その男の子の幼馴染みも、娘の世話役だからと彼女呼び出されました
彼女が話すこと、全てが、彼ら人間には理解しがたい世界が広がって居ました
が、彼女が本気だと分かりました
自分の子供の未来が闇だなんて
紡がれた言葉は嘘だ、狂ったか変な宗教に染まったに違いないと彼女を責め立てた
彼女は絶望した
愛する人に信じて貰えなかったこと
そして夫は彼女を追い出し、離婚した
狂った女に子供の世話はさせられないと親権も奪って
そして夫⋯子供の父親は、自分の妻に似ている娘が段々と気持ち悪くなってきました
日に日に彼女に似ていく
もし彼女の話が本当ならこの娘は人ではない
そう思うと父親は娘と距離をおくようになりました
けれど自分の家柄故に、最低限必要な作法や勉学は勿論叩き込み、知的財産を与えました
さて、話は変わり彼女の娘が生まれた時、彼女と血の繋がっていない、彼女の娘からみると腹違いの兄である男の子と娘の世話役の男の子は、小学校に通っていました
追い出された彼女のことをいたく心配していた彼らですが、そんな彼らの前に彼女が現れます
彼女はひどくやつれていて以前の美貌はどこにもなく、一見すると老婆のようにもみえました
彼女は言います
ー娘を助けるための策を作ったー
ーこの世界で死ぬのならこの世界の運命の理から外れればいいー
ー■■歳の時、それは発動するー
ー違う世界へ娘を飛ばすわー
ーそれが例え現代とかけ離れた昔の世界だろうと
発達した未来だろうとー
ー娘は違う世界へいくー
ー必ずこの術は発動するー
ーそしてそこで恋をして結婚して子供を産むー
ーそれが娘の魂を狩る死神から守れる手段だからー
ーでもあなた達の元へは帰さないー
ーあなた達の元から娘を奪ってやるー
ー運命を変えて、この世界に戻れたとしてもー
ーあなた達の元へは帰ってこないー
そう言うと彼女は倒れそのまま動かなくなりました
⋯それが、術の完成だと、彼らは知らなかった
男の子と幼馴染みは考えました
もしそれが本当なら、自分の、自分たちの妹は二度と自分たちの手の届かない場所へ行ってしまう
彼らは、それはいやだ、と思いました
それから彼らの戦いが始まりました
違う世界へ飛ばないようにするには?
もし飛んだとして自分たちも行けないか?
未来を変えずにこちらに戻ってきたらどうなる?
それについても有識者にきけないだろうか?
協力者を探そう、父親には内緒で動くしかない
■■歳の時までまだ時間はある
その為には何もかも素人ではいけない、体力知力武力それぞれ学ばなければ身につけなければ
女の子を守れるように
二人で魔女の施した謎の術に抗うことにしたんでふ
…そう凪様を俺たちの前から喪わない為に
わ、たし、が…魔女の、こども⋯?
私の未、来は⋯?しぬの、私⋯
…詳しくは分かりませんが…ですがこの世界に飛ばされた事で第一段階目の回避をしたはずです。目に見えるわけじゃないですから、不確定ですけど
私は、私は…人じゃないの…?
お母様が最期の魔女です
凪様は人間ですよ
お母様の血もだいぶ薄いものだったらしく、同族と交わってできた子供ならまだ何とか、というところでしょうけど
魔女の血は受け継いでおりますが、もう水と同じくらいだそうで、力はありません
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「ねぇ…一つ聞いていい?」
「はい」
匡二は頷いた
「この世界で、もし…運命が変わったら、大丈夫になった時⋯、私はどうなるの…?」
凪は縋る様な目で匡二を見た。俯いて、ギュッと手を握る
「………」
「ねぇ…」
「……………多分、元の世界へ帰る、かもしれません。帰れたとしても、貴方たちの前には帰って来ないと彼女は言ってましたから」
匡二はニコリと笑うと凪に言った
「貴方の母親の気持ちも、分からなくはないのです。産んだ子供が大人にならず死ぬという運命を見れば、何が何でも何とかしたいと思うのが親だ。でも、私たちはこの世界で何があなたを待っているのか知らないし、もし貴方にとって悲しい事があるのならそれを回避したかった」
「今すぐ帰る方法だって探せば何とかなるんです。でも、貴方は既に見つけてしまった」
「アレに、恋をしているでしょう?」
「もう貴方の運命を変えるための歯車は回った、魔女の望む通りに」
「魔女にガキ二人が挑んだけど結局勝てなかったかーとは思いますけど⋯」
どうか、自分のせいだなんて思わないで
「あなたの事だから、自分のために俺が色んなことを犠牲にしたと、思うかもしれない。でもそれは違う、俺が俺たちがしたかったんだ。だから、あなたが心苦しく思うことは何一つとしてない。でも、そうだな。悪いと思うなら、昔みたいに呼んで下さい。それで、救われますから」
匡二はそう言った
そんな訳ないのに…
「ん、き…匡…にぃ…」
「はい」
匡二は満天の笑みを見せた
真夜中に聞いた真実。それは夢物語の様で、だけど夢物語ではないんだろう
成実さんや政宗さん小十郎さん達、皆にはまだ話せない
信じてもらえないかもしれないし…そんな事は無いだろうけど