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「やっと辿り着いた…」
萌葱色の着物を着て、腰には刀を二本を下げて男は目と鼻の先に有る城に向けてそう言った
「出合い頭たたっ斬ってやる…!!」
胸に憎悪の炎を抱いて
――――――――――――
慶次は暫く匿ってもらうと言う事になり(匿う道理は無いのだが、行く宛も無いと言われてしまい、尚且つ無理矢理居座ったのだった)、色々下働きをさせられていた
仮にも前田の人間ともあろうものが、と思う
だが、働かなきゃ食わせねぇぜと言われてしまえばそれまでだ。とどのつまり政宗に働けと言われたのだ
働けと言われても慶次に出来る事と言えば雑用位
凪と同じレベルだった
「へぇ~、花も育ててんだー」
慶次は花に水をあげて居た
流石に作業中はいつもの格好では無い
動きやすく汚れても良い格好をしていた
「確か、その白いのが毒ぜりもどきって言ってたな。それからその黄色い派手な奴がわたすぎぎく、あと朝顔だ」
未だ帰らぬ花畑の主から名前を教わっていたらしい
※毒ぜりもどきっていうのはホワイトレースフラワー。わたすぎぎくっていうのはサントリナです
「知らない花ばっかりだ」
物珍しそうに慶次は水をあげた
朝顔の色鮮やかな色彩に目を取られながらも、彼の視線は自分の手元にいっていた
「あんたはいっつも農作業してるんだな」
水やりを終えた慶次は草取りを始めて居た
作物に雑草はいらないからだ。ぶちぶちと丁寧に根っこから引き抜いて行く
「前来た時も農作業してたし」
「趣味だ。趣味」
ザクザクと鍬を持ち、小十郎は手慣れた様子で畑を掘り起こす
また何かするのだろうか
「で、この花達のご主人は何処に居るんだよ。手入れはされてるけど、行き届いてるって訳でもないし」
「喋ってねぇで仕事しろ。昼飯抜くぞ」
「わーー!!やりますやります!!」
小十郎は未だ帰らぬ花達の主を思い出し空を仰いだ
■■■■■■■■■■■■■■■
同時刻、城門にて
「何用だ」
城の門で呼び止められた
見慣れない着物に身を包み、怪しい風体の男だからか。顔の半分を隠しているせいもあるだろう
「…私は、ここの客人凪様の知り合いだ。それから伊達成実を出せ。即刻に、だ。そいつなら私がわかる」
男の怒気に城の門番は怯みかけたが、持って居た槍を彼に向ける。チャキッと自分に向けられた矛先を一瞥すると、自分の刀をすらりと抜いた
刀自体は何の変哲もない刀だ。しかし回りに纏う気配は普通の刀とは違う
まるで妖刀だ
「今、すぐっ!連れてこいッ!!」
「はぃいいいいっ!!」
門番は直ぐさま走り出す。闘ってみるという選択肢は彼の中には無い様だ。情けない背中を彼は見送る
すらりと抜いた刀を鞘に収めて、門の柱に背中を預け腕を組み待ち人を待つ
あちらの気候と代わり少し涼しい。というか工房が熱でいっぱいだったから暑さなんて分からない。本当に暑かった…
「刀は世界に誇る製鉄技術とはいえ…」
あんなに作るのが大変だとは思わなかった。全てを作るには至らなかったが…
「“麒麟”、“神楽”」
二本の刀の名前を呼んで柄尻を指でなぞった
■■■■■■■■
変なやつが成実様を呼べと!!言うんです!!と泣きながら訴えてくる兵士に情けねぇなぁ!と喝を入れ、成実は城門へ急いだ
敵であればわざわざ呼び出しなんてしないだろう、との考えから、まぁ行ってみるかと思っての事だったが、城から門を見ると門の前には誰も居ない様に見えた。多分待ち人は柱に隠れてでも居るのだろうか
それにしても凪の知り合いで、自分をすぐに出せ!なんてどういう事だ。訳が分からない
「うーん」
取り敢えず敵かなと警戒してみる。刀に手を掛けて抜かずにそのまま走って門の外に出る。ざっ、と出た瞬間、斬り掛かられた!
ガキィイイイン!!と刃の衝突音がする
鋭い刃(やいば)が合わさり火花が散る。成実は斬り掛かってきた人物を睨む
顔の殆どを隠しているため誰か分からない。けれど斬りかかってきた奴の瞳に宿る怒りの炎だけは確認が出来た
「……!?」
「よーーーやく!会えたな!!糞ガキ!!」
「ちょ!!ま!!俺あんたを知らないんですけど!!」
がっ!と打ち合って居た斬撃を思い切り払うと、後ろへ飛ぶ。砂埃が少し舞い、二人の間にそれが線を引く様に漂う
「俺を覚えて無いだと……!!甲斐の山中で置いて行った事もかッ!!」
「甲、斐の山中…?
あーーーーー!!
匡二ぃいいいい!!!!!!」
「数ヶ月の恨み晴らさずいられるか!!」
顔の半分を覆って居た布を匡二ははぎ取った。その顔は変わらずだった
「あはははー。わーるい。すっきりすっかりすっぱり忘れてたんだその時!!だから許せ!!」
刀を持ったまま彼らは退治したままである
成実は顔を引きつらせながらそう言った。
まさか今まですっきりすっかりすっぱり忘れて居ただなんて口が滑っても言えない。言ったらあの刀の錆になるのは間違いないだろう
暫く対峙していたが、匡二は刀を鞘に戻した
と言うより…鞘に戻してから構え直したのだ。居合いだ。居合いの格好をしている
「刀の錆にしてやりましょう」
いつもの口調に戻ると持ち手に手を掛けたまま突進してきた
ひゅんっ!!と居合い独特の剣筋が成実を襲う!!成実はその一撃をなんとか凌いだ。ビリビリと痺れが腕に伝わる。重い。この細腕からどうしてこんなにも重い一撃が繰り出せる!!
「お花屋さんってやつじゃなかったっけ?お前」
匡二は防がれた為、成実と距離を置く。そしてまた同一の構えをする。どっからどう見たって居合いの剣筋だった。でも突進しながら居合いだなんて芸当成実には出来なかった。自分の専売特許は槍や棒術だし、刀はあまり相性がよくない。中距離方の人間なのだ
「それって花売りと同じだろ!何で居合いなんか使えんの!ってか刀扱えるんだよ!!!」
「居合に剣道をしてましたから。それに瞬発力は陸上で鍛えあげましたから、或る意味強いですよ私」
「っ!!」
再び突進しては居抜く匡二
またしてもそれを防いだ成実は、ギリッと歯を食いしばり刀を弾く
刃物の衝突音、火花、刃の煌めき
二人の間にあるものは戦場に近いものだった
「だから悪かったって!!」
「…」
やばい、あの目はマジだ。本気だ、やる気だ、俺を刀の錆にする気だ!!
と、成実は思った
二度とコイツは忘れない!!と
(というか忘れる方がいけないのである)
錆にはされたくないので、こうなったら仕方が無い。成実は切り札を出した。匡二にはとても効く切り札だ
「お、俺を傷つけたら凪が悲しむぞー」
「ん…?どういう…」
「はっはっはー!俺たち恋仲だか…」
ひゅん!!
恋仲だからなと言おうとしたら、刀が投げられた。小刀だった。それは成実の頬を霞め、最終的には地面に刺さった。頬からは一筋の血が流れ出る
「へぇ恋仲。ふぅん、恋仲」
成実は冷や汗が、だくだくと流れるのを感じた。
…あれ。凪って切り札じゃねぇの?っていうかさっきより…空気が悪化したような…‥
「お前人を見知らぬ土地に忘れ去りながら何恋愛青春謳歌してやがんだ――――――!!!!」
匡 二 大 噴 火
どうやら切り札というか…まぁ確かに切り札だったのだろうけど、火に油を注ぐ形になってしまった様子だ
もう顔が般若だ。実際には生えてないけど角も牙も生えてるように見える。肝試しで昔親父殿に驚かされた時に見た鬼の面そっくりすぎて、これはもうアカンやつ!と成実も覚悟を決めた
「錆にしてやる、絶対!」
そう言うと匡二は何度目かの突進をしてきた。避けられない事は無いのだけれど、何しろ速さに加えて重みのある剣筋。幾ら成実でも避けて傷一つ無く、というのは厳しい
刀の刀身が目前に迫った
「何してるの!匡二!!」
斬撃が成実を襲う手前で刀の動きが停止した。ぴたりと止まった刀
匡二は顔を上げて、声がした方へと顔を向けた
「凪、様」
「ちょ、成実さんも!!刀なんかしまってください!!物騒ですよ!!」
二人に近付いて匡二の刀を最初に奪い取り鞘に収め、次に成実の刀を奪い取り、鞘に収めた
「お前人を見知らぬ土地に忘れ去りながら何恋愛謳歌してやがんだ――――――!!!!」
匡 二 大 噴 火
どうやら切り札というか…まぁ確かに切り札だったのだろうけど、火に油を注ぐ形になってしまった様子だ
「錆にしてやる、絶対!」
そう言うと匡二は何度目かの突進をしてきた。避けられない事は無いのだけれど、何しろ速さに加えて重みのある剣筋。幾ら成実でも避けて傷一つ無く、というのは厳しい
刀の刀身が目前に迫った
「何してるの!匡二!!」
斬撃が成実を襲う手前で刀の動きが停止した。ぴたりと止まった刀
匡二は顔を上げて、声がした方へと顔を向けた
「凪、様」
「ちょ、成実さんも!!刀なんかしまってください!!物騒ですよ!!」
二人に近付いて匡二の刀を最初に奪い取り鞘に収め、次に成実の刀を奪い取り、鞘に収めた
二人の刀を収めると、凪は二人の間に入った。成実に背を向け、匡二と向き合う形になる
「…おかえり」
「あ…の…」
「取り敢えず、政宗さんに報告しよう!!それから…言いたい事は夜にでも話そう?疲れたでしょ?だからひとまず休んで?」
凪は冷静にその場を収めた。匡二の身形を見れば、一度落ち着く必要があると判断したから、だが
「門番さん、政宗さんに匡二が帰って来たと伝えて下さい。それから湯浴みの用意をついでに頼んで下さい。成実さんは、私と一緒に来て下さい」
凪はそう言うと二人に背を向けて城の中に入ろうとした
ちょっと待ったと言う様に、成実は凪の肩を掴む
「匡二どうするんだよ。湯浴みまでここに放置か」
「…匡二。匡二は、自分の部屋に暫く居て」
「分かりました」
匡二はそう聞くと、二人の横を通って懐かしい城内へと足を進めた。暫く居なくても覚えた地図は忘れる事も無いだろう。部屋まで一人でいけると、凪は思った
「成実さん」
凪の声はその時、凛として居た
背筋がぴんと伸びて居て、瞳は前を見据えていた
「今日の夜、外出って私と匡二だけで出来ますか」