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「あーつーいー」
「暑い言うな。余計に暑くなるだろ」
今年の奥州の夏は暑い
今年は何故こんなに暑いのだ?と言う疑問を抱かせるぐらい暑い
「こーゆー日には小川にでも出向いて涼むのが一番良いんだけどなぁ」
「小川!?うむむ…それは行くしかないでしょう!!Let's Go!」
凪は立ち上がって、意気揚々と部屋を出ようとした
「待て待て待て待て待て待て待てェエエェエエ!!お前今から行く気!?太陽見た!?外見たァアア!?ほらジリジリしてるでしょ!!こんな日に馬走らせたら可哀相だろ!!」
「歩いて行きますよー。行かせて下さいよー!!私暑いのいやぁ!!奥州には避暑地無いんですか…!?」
暑さで少し狂って居る凪
それを成実は、どうどうと言って止めた
成実は今大事な執務をしている
無ければ一緒に出掛けても良かったのだが…
「あーうーー」
唸り声は暫く成実の部屋から途絶える事無く続いた
ミーン ミンミンミンミン…
ミーン ミンミンミンミン…
蝉の鳴き声がまたより一層暑さを掻き立てる
凪はふらりと立ち上がると襖をすっと開けた
成実は机からふっと顔を上げて出て行こうとする凪に声を掛ける
「何処行くんだよ」
「…トイレです。トイレ!厠!!分かってますよー!!状勢が不安だから外には出るなー、なんですよね。でもこの部屋暑いんで、ちょっと他の部屋に非難しますー…。あー」
ふらふらりと部屋を出て行った凪
はぁ、と成実は溜め息を付くと政の執務を開始した
今年の年貢はどうするとか、大事な事だ
この暑さでは米がどうなるか分からない
暑さと凪の唸り声とおねだりになんか負けて居られなかった…
――――――――――――
トイレを済ませた凪はその足で涼しげな木の木陰へと腰を降ろした
凪の着物は他の女中より幾分丈は短いし、生地は夏の着物《絽》なのでそれなりに涼しい⋯かのように見せかけて着物は暑い。本っ当に暑い
太陽のジリジリとした暑さも相まって、敵わず唸る羽目になっているのだが
「小川で涼みたい…」
今、皆は状勢のせいかピリピリしており、加えて政等で忙しくて構って貰えない。つまり外出不可である
成実すらもピリピリしながら仕事をしていて、凪の前では出来るだけソレを表に出させ無い様に振る舞って居る
寂しくは無いと言ったら嘘なのだけれど、自分も立場が立場なだけに何も言えない
「うー」
「なぁに唸ってるんだい?お嬢さん」
大きな刀を肩に担ぎ、成実と同じく高い位置で髪を結んだポニーテール
色鮮やかな着物に、小猿が一匹彼の頭に乗っかっていた
人懐っこい顔立ちは、何処かの誰かを思い出させる
彼はニコニコしながらこちらに向かい歩いて来た
立ち上がり、彼を見上げる
「さっきから、うー。だの、あー。だの唸ってさ。何か有った?恋の悩みかい?」
「いえ。恋は既に間に合っています」
「そうかいそうかい。恋はいいよな!命短し人よ恋せよ!!なっ」
その笑みを崩さず、笑う彼
明らかにこちらより厚着な筈だが全然暑そうに見えない
「てゆうか命短し云々は“命短し恋せよ乙女”じゃないんですか?」
たしか大正時代に流行った歌詞の1部だ。命短し恋せよ乙女、紅き唇⋯だった気がする、と歌ってみせる
青年は首を傾げて、その人懐っこい笑顔で「これ俺の決め台詞みたいなのだから分からないなぁ」と言った
「政宗いる?」
「政宗さん?今ピリピリしながら執務してますよ?でも今だと多分気晴らしに道場で鍛練してるんじゃないんでしょうかねー」
うん、多分ストレス解消してそうだ
だってなんか城の何処かから、兵の雄叫びが聞こえているから…
「何だ。せーっかく遊びに来たのに。今間が悪いかぁ…。で、お嬢ちゃんは何者?服装からして女中じゃないよな」
意外と見るべきところは見ていた青年
凪は、立ち上がると青年の前に立った
太陽の下に出た事で凪の影が出来る
「私は政宗さんの客人です。貴方は?」
「客人?へぇ、政宗も隅に置けないなぁ。俺は前田慶次!コイツは夢吉っ」
「キキッ!」
「(あーーーー!!どっかで見たと思った!!)」
散々BASARA2のサイトで見た彼を凪は忘れていた
というか凪は1しかしてないので2にでてくるキャラクターは知識としてしか知らないのだから当たり前なのだが…
それにこの世界に来て相当たつ
忘れかけていても不思議では無かった
「あ"ーーーーっ!!前田の風来坊っっっ!!」
と、突然大きな声が聞こえて二人はその声がした場所へ視線を向けた
「な、成実さん…」
窓から成実は身を乗り出している
さっきまで部屋にいたはずだし、部屋からここまでは少し遠い。何故ここに居るかは⋯明らかだ
「何っでお前が奥州にいるんだよ!!確か一年前前田の夫婦に取っ捕まって帰った筈だろ!?」
どうやら成実は凪に気がついて居ない様子だ
木の下にいるから、たくさんの木の葉が凪を隠して居るんだろう。まぁ、見つかったらトイレに行くと行って出て来ているから、何でこんな所にいるんだ!と怒られてしまいそうだ
「〔前田さん!前田さん!そのままでいーんで、成実さんが何か女の子の事聞いたら知らない振りして下さいッ!〕」
「〔知らない振りすればいいのか?〕」
「〔はい〕」
「ソレよりお前女見なかった?背丈は俺の肩ぐらいで顔は…そこらに居そうな奴で、やけに丈が短い・碧地の着物で、帯は鶯色。帯紐が黄色な女だ」
ぐぐっと慶次は凪を見た
成実の言った内容にドンピシャな格好だったのだ
「おぉっと。成実さん意外と見てたんですね私の服装」
「知らない振りすれば良いんだよな?なんか探してる見たいだけど?」
「いいんです。私には涼む権利があります」
「? いやー知らないなぁ。俺今この城に着いたばっかりだから。ごめんなー」
成実は葉っぱの下をじーっと見た
怪しい。何かとっても
「あとで政宗んとこ行く予定なんだけど、もしだったら伝えてくれよ!」
ニカッと成実へ言葉を掛ける慶次
成実はすっと真顔になると、ガッ!と手摺に手を掛けて、足を乗せた
そしてそのまま空へ飛び出す!!
「え?」
「は?」
二階から飛び降る成実
いや、二階と言っても相当な高さがあるのだが…
「「ェエエェエエ!!!??」」
ドンッ!!
成実の落ちて来た衝撃の音と共に、大量の砂埃が辺りを包んだ
慶次も凪も腕で顔を砂埃から守っているが、けほっと咳込んでしまう
「おい、風来坊。俺は嘘は嫌いだぜ。特に、お前の、嘘はな!!居るじゃねぇか!!」
グイッと腕を引っ張られて凪は成実の腕の中に治まった
一つの風が吹いて土埃を一掃する
「テメェこいつに何しようとした?あんな事か?こんな事か!?」
「何想像してるんですかーーー!!いやー!!あーつーい!あつーーーーいー!涼みたいですーーー!!私には涼む権利がーー!!」
「いや!あんな事こんな事って言われても、知らないって言ってって言われたからそう言っただけだって!!だから刀向けるの止めてくれよ!!」
プチ修羅場の発生である
「だったら、婆娑羅技で涼ませてやるから出歩くな!だーッ!暑い!中に入るぞ!!」
刀をひゅっと終い込み、成実は凪を小脇に抱えて城に入る
慶次は目に入って無い様だ
「あれー?俺置いてけぼりー?まぁいっか!失礼しまーす」
「キキッ!」
慶次は二人の跡を夢吉と付いて行った