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それは突然だった
「織田信長が打ち取られただと!?」
政宗の大声に、成実は勿論、伊達の臣下達は眉を寄せる
政宗の前には、夕刻の空の髪色をした猿飛佐助が座っていた
「魔王が打ち取られるってのは随分只事じゃねぇな。どういう事だ」
至って冷静に小十郎は佐助に問う
この場には伊達の主な将が集まっている。伊達三傑は勿論、原田に後藤等もだ
皆真剣な顔をしており、自体は深刻と誰もがわかる
「倒したのは、豊臣だ。しかも、豊臣秀吉じゃなくそいつの部下がやったらしい」
「兵力は?」
「偵察の話じゃ、率いた人数は250名ちょい。」
「織田の城の兵力は最低500位は有るはずだから、⋯化けモン?」
「更に聴いて驚かないでね。その武将、自分の兵は20名程しか動かさなかったらしいんだ。総大将一人で、250以上は仕留めたってさ」
それは並の武将では無理な数字だった
三傑や政宗ならその数字位殺りのけられるだろう
だが、そんな武将が居たら名前が世に知れ渡って居るはずなのだ
皆が驚いて居るのは、そんな武将が豊臣にいたのか。という事
「小さな戦じゃ、ソイツが最前戦で奮闘してるって話だよ。確か二つ名が付けられてる」
「二つ名…?」
「名前は知らない。そっちの地方に行くと二つ名しか知らないって言うんだよね」
ハァと佐助は溜め息を付く
明細柄の忍び装束の布を握り、政宗を見た
「二つ名は《黒衣の死神》。武器は、見た事も無い武器だよ」
佐助はその絵を見せた
火縄銃の様に見えて、火縄銃とは違う作りのソレに伊達家の武将達はどよめいた
成実は、至って冷静だったけれど
「以前は小国を潰して居たんだけど、ここに来て織田を倒した。次に狙われるのは、何処か分からない。でも用心に越した事は無いよ」
だって伊達には凪ちゃんがいるでしょ
その言葉に政宗・小十郎・成実は反応した
「うちの大将も豊臣の動きには危惧している。旦那はまぁいつも通りだけど」
「⋯織田を倒した後は何も動きは無いんだな」
「うん。無いね。取り敢えずこれで俺様の仕事は終わり」
「ご苦労だった。下がっていいぜ」
佐助は一礼すると(取り敢えず礼儀として)立ち上がり一瞬にして消えた
忍びなりの退室の仕方なのだろうか
佐助が居なくなった後の室内は静かだった
「凪ちゃん」
ふと何処からか聞き覚えの有る声がして、凪は辺りを見渡した。周りに人はいない
気のせいかな、と凪は再び本を読み始めた
書きは難しく、まだ書けないが読みは拙いながらも出来る様になっている
「ありゃ、無視?」
再び声がした瞬間、後ろに佐助が立って居た
いつもの忍び装束を身に纏い、存在感を鋭く放って居た
「ここに来てたんですか?」
「うん、ちょい他国が動いたからその報告。一応同盟結んでるしね」
ニコニコと笑う佐助の顔は、いつもとは違った
何処か、偽りの様な笑顔…
それに気がつかない不利をして凪は佐助に近寄った
「なるほど!皆それで軍議の間に集まったんですね~」
そそくさと成実もそこに行ってしまったし、城内が静かだったのにも頷ける
「あ、凪ちゃんさこんな武器見た事無い?」
佐助は先程政宗達にも見せた武器を見せた
おおよそで書かれた者だが、特徴は十分捕らえて居る
「武器ですか」
余り詳しくは無いですけど、と凪は紙を見た
「…ッ」
わなわなと震える手
「…ライ、フル」
紙から顔を、視線を外す彼女は佐助に詰め寄った
「佐助さんは此の銃を目で見た事は?」
「無いよ」
「ですよね。そう、有る筈は無い…のに」
この時代の銃と言えば火縄銃だ
それは、この形状とは違う
「この時代に有る筈は…!というか、世界が違うから有ってもおかしくは無いけど、ほぼ同じ進化をしてるならやっぱり…」
とボソボソと呟き始めた
顔には冷や汗だろう。汗が浮かんでいた
「結論からお願い。知ってるんだね」
コクン、と頷いた
「これは私の世界で見た事があります…。実物っていうか写真ですが。これはライフルです。未来の未来の武器ですね。ぶっちゃけ火縄銃より威力は有るかと」
「まじで…?そーいや結構酷いって…」
「これどうしたんですか。今のこの世界の技術じゃ出来ないですよね」
「あー、一応機密に近いから…ゴメンね。教えられないんだ」
「そうなんですか…」
ふと再び凪は紙に視線を落とした
よくよくしっかりと見れば、何処か見た事がある形状
(…死神)
思い出せそうで思い出せない
ズキッと凪の頭に頭痛が走った
(黒衣、の死神)
「ま、凪ちゃん。一応身の回り気をつけてね。結構怪しい流れが来てるから。俺様の鳥置いてくから何か有ったら文を付けて飛ばしてね。付けなくても大丈夫だけど」
佐助は凪の肩に手を置くと目線を合わせてそう言った
視界の端に彼の髪の色が入る
「何か、は多分政宗さんとか小十郎さんとか成実さんが居れば起きないとは思いますけど、有り難く貰って置きます」
その鳥は白い鳥だった
佐助と言えば黒い鳥のイメージだが…
「これは特別な鳥だから。じゃ、またね」
シュン、と佐助は一瞬にして消えた
彼が居た後には何も残っていない。向こう側の景色が見えるだけだった
■■■■■■■■■
きみに たどり着くまえ に
おれは 少しでも
障害を うちぬかなければ
「…風谷…」
大きな門構えを彼は見上げて、既に屍と化した門番に目もくれず屋敷へと入って行った
そこは純日本庭園
しかしそれに似つかわしくない武装集団が彼の前に居た
「…私達を殲滅しに来たの?」
「分かっているのでは?お前等はそう言う人種だろ。変えられない運命に変な言葉を与えて、希望という名前の光を与えやがる。でもそれは希望何かじゃねぇ。絶望だ」
「そうね、でも人は運命に抗い超える事も出来るわ。私達はその手伝いをしているだけ」
すっと彼女は指を彼に指した
『退きなさい。妖弧の血筋の我の言霊の前に』
そう言うと彼の手がダランと垂れた
『そう…良い子…』
彼女は妖艶に笑うと彼に近付き武器を奪おうとした
バァアアン!
しかしソレを奪う事無く、彼女は肩を打ち抜かれた
弾は貫通し、打ち抜かれた所から血が流れ始めた
白い布が鮮血に染まる
じわりじわりと赤くなるのを彼はじっとは見て居なかった
そのまま再び銃口を彼女に向けて、引き金を引いた
銃声が数度轟く
周りへの威嚇射撃をしながらも確実に彼女の四肢を打ち抜く
無表情で彼はそれをやった
銃口から白煙が上がる
硝煙の匂いも微かに鼻につく
彼女を取り巻く集団は、銃の威力に恐れを成したのか青ざめていた
「かはっ…あつ…い!えぇい!『止まらぬか!!』」
鮮血は噴き出すのを止めた
己に言霊を掛けたのだろう
緋色に染まったそれは、既に元の色と違う色合いに染まった
四肢を打ち抜かれながらも彼女は立ち上がる
「何故、貴方は狩るの?もう、その手は血で染まっているのでしょう?黒くなる迄殺るつもりですか?」
彼は己の手を見て、ギュッと握った
「多分救いたいものがあるから、俺は後悔無くコイツを引ける。血で染まろうが、な」
ばいばい、と呟いたあと彼は彼女の額に狙いを定めて打ち抜いた
打ち抜かれた身体は意思を無くし、ドサリと地に身体を沈める
「…」
弾を入れ替えて彼は残りの集団を手に掛けた
美しい日本庭園は血染めの庭園となり、先刻までの美しさとは対極な美しさとなっている
その中佇む黒衣の青年
空を見上げて、そのまま倒れた
「運命は、変えられない。結局あちらの世界にいても、いつか最悪は起きる。だったら…だったら帰る術を無くしてしまえばいい。なぁ凪」
彼は愛しい彼女を思った
「お前は今何処に居る――?」