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凪が四国から帰還したあと、成実はべったりとまではいかないが殆ど時間を共に過ごして居た
戦も無く、一週間二週間と過ぎ。
ある日、それを引き裂く事件が起きた
「北斗ぉおお!?」
凪のペット、愛犬の北斗がいつの間にか他の犬を連れて着て居たのである
しかも毛並みが良さげな犬
ハッハッハッ
「も、もしかして!この子彼女!?」
ハッハッハッ!
「北斗…」
北斗の隣りにいる愛らしい犬は明らかにメスだった
「お、北斗。こいつと家族になるのか?」
「成実さん!?」
いつの間にか凪の背後にいた成実
着流しに身を包み、袖から腕を抜き襟の合わせから腕を出している
「ていうか家族云々の前に、この子何処の子⋯?」
凪は落ち着きを取り戻し、問題の犬をよく見た
白い毛の犬
この城で飼っている犬は北斗のみなので、外部の犬となる
勿論首輪も有るはずがないので飼い主がいるかすらも分からない、が。毛並みが良さげなので、多分飼い主は居るだろう
「…北斗、その子の事好き?」
わんっ!
彼女と決まったわけじゃないが、これは北斗の初恋!!
「おい、北斗はほっておいて今から…」
「北斗!お嬢さんの飼い主のお家まで案内しなさい!!お嬢さんを下さいって言いに行きますよ!!」
「えぇ―――――!!」
城に成実の叫びが響いた
■■■■■■■■■
北斗のあとを付いて行くと、城を出て知らない屋敷に行き着いた
「って宗時の屋敷じゃねぇか」
原田宗時
彼の屋敷らしい
「あーそういえば宗時んとこの嫁と子供が犬飼い始めたって言ってたな。いつだったか」
門を勝手にくぐった先には、立派な武家屋敷があった
「おーい宗時ぃー!」
屋敷に向けて成実は家の主の名前を呼んだ
返事はなかったが、その代わりパタパタと可愛らしい足音がする
「あー!みっちゃ!」
足音の主は小さな子供だった
「あ!みっちゃ!!みーちゃ!!」
「こら、千代丸!走らな…あ。成実殿じゃあないですか。お久し振りですね」
凪らが帰って来たあとの宴以来成実は宗時と顔を合わせていなかった
勿論凪もだが
「千代丸、走らない様にとあれ程言いつけておいたでしょう?」
千代丸と言われた男の子を抱き上げると、諭した
宗時に何処か似て居る千代丸は、ごめんなしゃい…としゅんと落ち込んだ
「三(みつ)は北斗殿の所にいたんですね」
千代丸を床に降ろすと、千代丸の手を引いてこちらにやってきた
「数日前からいなくなって探していたんです」
千代丸は三にギューっと抱き付いた
微笑ましい光景だ
見た所2歳ぐらいだろうか
「今日、北斗がこの子を連れて来たんですよ。で、北斗の彼女かなって!!」
奮起する凪
ちょっと、成実は引いた
「彼女⋯?まぁ、いいですが」
パタパタと再び音がした
音からして大人の足音だ
「あぁもう…ッ!走るなって言ってるのに…弓月!!」
今の普段の宗時と違う
焦っているし、何よりポーカーフェイスが崩れて居る
「弓月って嫁じゃねぇか」
成実は名前に反応を示した
凪は奥から来る宗時の奥さんに興味が移っていた
奥から来たのは、武士の妻らしからぬ
普通のお嬢さんに見えた
「宗様、三と聞こえたので居ても立ってもおれず飛んで来たのです。それに少しばかり動かねば身体に悪うございます」
「だからって…」
「心配して下さりありがとうございます。まぁ、成実様でありませんか!あら、そちらの御方は?」
弓月はこちらへ降りて来た
本当に城下町の何処にでもいるような女性で、髪型もそれに近い
しかし話し方や物腰の柔らかさから、武士である夫を支える良き妻だとわかる
「お久し振り弓月殿。こいつは梵の客人の凪」
「は、初めまして!!」
「政宗様の御客人…あぁ、宗様が御無礼を働いてしまった御方ですね。その節は大変失礼な事を…」
無礼と言われ思い出すのは、以前宗時に押し倒された時の事だ
「あぁ、その事ならきちんと落とし前付けたから大丈夫ですよ弓月殿」
凪と弓月は知らなかった
落とし前とは名ばかりの仕返しが行われて居た事を
「まぁそうなのですか?ですが妻として謝らせて下さいまし。申し訳ございませぬ」
「もういいでしょう?身体を冷やすと…」
「宗様は過保護過ぎです!!私は大丈夫と申し上げてますでしょう!?ぐだぐだぐだぐだと、しつこいと実家に帰りますよ!!??」
弓月はおとなしそうに見えて実は怖かった…
弓月の剣幕に宗時は怯む
「それより、三!あぁ、何処にいっていたのです!心配したでしょう?あら、お隣にいらっしゃる可愛らしい子は??」
怯んだ宗時の隣りをすっと抜いて彼女は三の前に座った
三は尻尾を左右に振る。嬉しいらしい
凪は、あ。とここに来た用事を思い出した
「お嫁に下さい!」
そして、その場に居た凪と千代丸と北斗と三以外が固まった
「変な事いいました??」
「話が飛躍し過ぎだろうがッ!!てゆうか主語がねぇッ」
「おおぅ!成実さん主語なんて知ってるんですね」
「…馬鹿にしてる?」
「いえいえ」
三ちゃんをお嫁さんに下さい!と言うつもりが、一部すっ飛ばしてお願いしてしまった
「うちの子がこの子の事好きみたいで…。初恋みたいなので飼い主としては実らせてあげたいなぁ、なんて」
「まぁ、初恋ですか?…ですがお嫁にはあげられませぬ」
「三は私達の家族です。嫁になど…」
「あきらめろよ、初恋は実らねぇってよく言うだろ?」
「ううう…北斗…ごめんよぉ…!!」
「ですが、遊びに行く位でしたら構いませぬよ」
ニッコリと笑う弓月
はっと、凪は弓月の視線を混じらせる
「まじっすか?」
「えぇ、宗様が許して下されば」
満面の笑みの弓月
宗時は、え。と言う顔をした
凪は、宗時にキラッキラした瞳を向ける
…お願いしている…!!
物凄くお願いしている…!!
「や、えぇと。あのですね、弓月は今ややを腹に宿してまして、大事な時期なので、ですから…」
「…成実さぁん…」
おねだりの矛先は成実に向かった
成実は凪のお願いに弱い事を知っててしてるのか、知らずにしているのか
どちらにしても、成実は凪にべた惚れなので…
「むーねーとーきーくん!」
ちょい来い、ちょい来い。と弓月・凪から成実は離れて宗時を呼んだ
宗時は俄かに嫌ーな予感を感じたけれど、行かないと後ろに居る弓月がど突くし、前に居る成実に何をされるか分からなかったので成実の隣りに立った
彼に選択肢など存在しないらしい
「知ってるか?妊娠中って適度に動かないと逆子になるらしいぜ?」
「…まだ二か月なんですが」
「それに、あまり家に籠りがちだと身体によくないだろ?な?城に上がらせてやれよ。凪もお願いしてるし」
「因みに選択の余地ってあります?」
「ある分けねぇだろうが」
やっぱり、と宗時はうなだれた
かくして、宗時さん家の三はたまに城に遊びに来る事になった
…宗時の気が気じゃない様子に、城の武士達はちょっぴり同情したとか