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「烈火ァアア!!」
幸村が先陣をきり突撃していく
成実も負けじと、愛槍を構えて突撃する
「ウォラァッ!!」
婆娑羅技を使わずに、右や左から襲いかかる敵をなんなくあしらう成実
流石伊達三傑の武の成実と呼ばれるだけはある。その実力を、いかんなく発揮していた
対する幸村は、信玄公が出るまでも無いと言わん許りに婆娑羅技を使い敵を薙ぎ倒して行く
彼等のあとには敵兵がゴロゴロと転がって居た
「奥州の龍を守りし三傑が一人、伊達成実!押して参る!………なんだよ宗時ィ!その冷ややかな目ッ!」
「いえ、構わず突撃してください。気にしないで下さい、誰も筆頭の真似とは思ってませんよ」
「テメェは口に出てんだよ!!クソゥ!!」
ちょっと格好つけて名乗って、押して参るが被ったなぁと思っていたら宗時に鼻で笑われた
「はいはい、そこ争わないの!総大将ここら辺にいるみたい。気をつけてよね!!」
佐助はそう言うと幸村のあとへつづく
機敏な動きで敵を倒す
「仕方ありませんねぇ」
宗時はすっ、と刀を収めると敵が襲ってくるのを待った
「宗時!?」
「…」
敵が宗時目掛けて飛び掛かる
成実はそれを打ち取ろうとしたが、宗時の周囲に集まっている“気”に気がついて足を止めた
「此花」
ひゅん、と刀を抜いた
そうすると集まっていた気が開放される
「ハァアッ!!」
居合いを抜くように、刀を振るった
婆娑羅技
宗時の属性は風。微力ながらも宗時には属性があった事を思い出した
敵が一気に減る
「量ですよ、量。こんな所で突っ立ってないでさっさと行って下さい。はやく私も帰りたいんですから」
奥州へ
「あ、あぁ!!」
成実はその場を宗時に任せると前へ走った
襖をパン、パン!!とあちらこちらを開けては部屋の中を窺う
室内には、誰もいない
「こっちか!!」
パン!!
「……」
襖を開けた手から、少し力が抜けた
だらん、となる
「…」
開け放った室内には、血の飛沫が散って居た
そして、そこには
ここの主の妻と側室だろうか
それから、女中
それから、それから…幼き子どもが
血を流して倒れて居た
成実は、一歩一歩足を進める
そしてしゃがんで、女を仰向けにして一人一人寝かせてやる
ある女はまだ、多分歩き始めただろう位の赤子を抱き抱えて居た
その赤子には、あるべきものが無かったけれど
成実はあたりをみわたしてそれを見つけた。そしてそれを、女と子どもの亡骸の隣りに置いてやる
それからまた一人、一人と横に寝かせる
そして全てが終わると…、彼女達に頭を下げた
結んだ髪が視界の端に入る
そして気がついた
この傷は懐刀ではない
多分、主か主の部下に…殺されてしまったのだろう
「ごめん、な」
子どもの亡骸にそっと呟いた
そして踵をかえし成実はその部屋から出て行った
自分の妻までを手に掛けてでも逃げ切りたいのか
「させねぇよ…!!」
あんなに小さな存在まで末梢していいわけが無い
男なら、潔く首を差し出せばいいのに
ゆらゆらと怒りのボルテージが上がる
「何処だ…!!」
パン!!
パン!!
襖を休まず開け放つ成実
その瞳には怒りの炎がゆらゆらと完全に灯っていた
「っくそ!」
パン!!
開け放った部屋のそこには、武士数名と気位の高そうな男が刀を向けて立って居た
「お前か、ここの主は」
槍をドン、と床に垂直に立てた
怒気を含ませた声は、敵にも伝わったのだろう
その気位が高そうな男には血がついていた
「盗郎まがいな事をして、追い詰められたら自分の妻や側室や子ども殺し、逃げる。仮にも領主なのに。武士じゃねぇよ、お前」
「き、貴様に何がわかる!!我らの土地はやせ細っており、まともな年貢すら徴収が出来ぬ!!年貢がなければ国は痩せ、我らは潰れてしまう!!仕方なくやっ「仕方なくで、家族を殺すのはおかしいだろうが、えぇっ!」
「来いよ」
龍の爪が地獄に送ってやる
そういった成実の瞳は赤い怒りの炎が宿っていた
■■■■■■■■
宗時は城の中を縦横無尽に走っていた
敵を殺さず、という約束は忘れずに
先にいった若い彼を、敵を倒しながら探してたのだ
するとふと目に入る襖
開け放つと、一体一体寝かされた女の死体があった
赤子の首
血
女
「……」
宗時はしゃがみ込むと手を合わせた
目を閉じて彼女らの為に黙祷を捧げる
そして立ち上がると、勘で成実を再び探し始める
襲い来る敵を薙払い、突き進む
幸村の気合いの声も何処からか聞こえる
まだ総大将は見つかって無いらしい
「成実殿ッ!」
パン!!
成実はそこに居た
その部屋は、天井・掛け軸・畳・障子・襖全てに血痕がついていた
勿論成実にも
槍の矛先には、血のあとがあり下へと血の滴が落ちた
この部屋は全てが異質だった
「…」
宗時は一人の横たわっている人間に近寄ると首筋に触れた
脈がない
振り向いて成実の方を座った状態で見上げると、眉に皺を寄せて怒っているような悲しそうな表情をしていた
「あの女・子どもの亡骸は」
「…この総大将が殺したみたいだ」
「…総大将は?」
「…」
「この武士達は」
ぎり、と槍の持ち手を強く握る音がした
そうか、と宗時は一瞬で理解出来た
この部屋が異質だったのは、成実以外から生気を感じなかったから
武士と総大将の命が事切れて居たからだった
「俺らが乗り込まなきゃあの女・子どもはあぁはならなかったかな」
「さぁ、でも遅かれ早かれこうはなっていたかと」
宗時は障子を開けると、佐助から貰った火薬に火打ち石で火をつけて総大将を打ち取った事を煙で伝えた
「お手柄です成実殿」
「あぁ」
なのに心は晴れないけれど