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ザァアア…
夜
松明の光だけが頼りな暗闇が支配する世界
元親が松明を持ち、元親の三歩後ろを、凪が歩いていた
一陣の風が丘の草木を撫で行く
静かな空間に、フクロウの鳴き声が響く
丘の先には、闇と混ざりあってよく分からないが人がいた
「すみません、明日出立なのに」
「い、いえ」
紫電が近付いて来た
光に照らされて、はっきりと形が分かる様になった
この間の着物ではなく、色無地
しかし、色無地にしては何処かおかしくて
気のせいでは無い
少しストールのような羽衣が…光っている
暗闇の中ではそうはみえなかったのに…
クスリ、と彼女は笑った
「…今宵、貴方様に」
ふさぁ、と羽衣を空に弧を描く様に投げた
月の光りが透けて幻想的に…
「わたしから、ことだまを」
「言、霊?」
「予言のようなもの、と捉えてくださいな」
ニコリと彼女は笑うと元親を手招きした
「元親様もいつか、関わるでしょうからお聞き下さいまし」
ふよふよとそよぐ衣は落ちなくて、それは幻想的で
四月は歌うように言葉を紡ぐ
巡りしモノは集う
かの人が願いし運命
運命
人
時。
やがて、時は来たる
人と人を結ぶ縁(えにし)
さだめを受け入れ
自分が思うままに
次に来たる縁と最後に来たる縁
かの人が望みし運命を左右する
さだめは変えられぬが
運命はかえられる
宿命、天命は変えられずとも運命は選ぶ事が出来る
魔女の愛し子よ
これは魔女が紡いだ言霊
“音を忘れないで”
あの絡繰り機械はいつか貴方に役立つ時が来る
その時あの音を忘れないでいて
すう、と空に浮いていた衣が光りを失い彼女の手に収まった
彼女は、微笑んでいた
まるで、聖母の様に
「…改めまして凪様、元親様」
「私は四月、言霊使いです」
「貴方様のいらした世界でいうなら、魔女魔法使いという分類に入ります。お分かりになりますよね」
魔女。それは凪をこの世界に飛ばした人
普通とは異なる人
「私達は、貴方様を待って居ました。ずっと、ずっと。心の何処かで生まれた時から」
凪の手を取り、彼女は跪いた。そして凪の手を額に持って来て目を閉じた
「魔女と彼女がどの様に貴方の運命を願ったかは、私達にも分かりません。ただ私達は言霊によって多少未来が見えます」
顔を上げると彼女は
四月は笑った
穏やかで、けれども慈愛に満ちた笑み
視線が絡み、逸らす事は出来ない
したくても出来ない
「成実殿と、お幸せに」
なにがあっても
きっと幸せに
どう願ったかは確かに分からないけれど
行く先を多少見る事が出来る自分だからこそ
彼だからこそ
そう、思う
「きっと、その気持ちが凪様の道を照らすでしょう」
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