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「長曽我部!長曽我部!長曽我部はおらぬか!」
凪達伊達の一行が四国滞在の一日目の夜、慌ただしい訪問者が長宗我部氏の城へと来た
突然の訪問者は長い廊下をいつもらしからぬ歩き方で歩いている
「何だ、何だ」
「元親様、中国の毛利殿が…!!」
と、二枚の襖が左右に大きな音を立てて開いた
そこには見慣れた人物が…
「居るではないか!人が呼んで居るのだから早く来ぬか!!」
その顔は、表情から怒りが伺えた
元親を見下ろす彼はそのままそこから動こうとはしない
あくまで呼んでいるのだから此所まで来いと言う事なのだろう
はぁ、とため息をつくと元親は元就に近付いた
「ふん、来たか」
「お前相変わらず態度デケェな。直せよそれ」
「ふん!!性格は変えられぬ物であろう。それより、貴様我を愚弄しておるのか!我との会談を止めるとは!!」
「だから悪かったって文で謝っておいただろーが」
「それこそ我を愚弄してるだろう!!悪いと思うのならば、その頭を下げよ!」
元親は頭を片手で掻きながら、目の前にいる相手を見た
「元就、眉間に皺寄ってるぜ」
「だから、それも貴様のせいだろうが!!早く謝らぬかッ!!」
「だから文で…」
を繰り返す二人
幾分してから、凪が柱から二人を窺う様に顔を出していた
凪の後ろには 鬼庭もいる
「(凪様、いけませんって。あれは中国を治める毛利殿です。何やら揉めている様子ですから、下がりましょう?)」
「(知ってますよ。アレですよね、戦で何かオクラっぽい帽子と緑っぽい甲冑を着てる人ですよね?うわぁ、帽子取ると結構綺麗な顔してるんですねぇ)」
「(って毛利殿を知ってるんですか?)」
「(知ってるっていうか、(本とPCで2のサイト見て完全装備元就見ただけなんだよなぁ)猿飛さんに教えてもらいました)」
まぁ、嘘なのだけれど
「(猿飛…あぁ、真田忍隊の。それは置いといて、覗きは良くないですよ!うちの城なら未だしも、此所は長曽我部殿の城です!駄目ですよ!)」
「…おい長曽我部」
「んだよ」
元就はつかみ掛かった襟から手を放した
柱から騒がしくこちらを窺っている二人に元就は気持ちが萎えた様だ
「…あの虫は何だ。貴様の新しい駒か」
「部下を駒扱いすんなよ。ありゃ客人だ客人」
「客人?」
「奥州からのな」
「伊達の蒼竜か」
「まぁな。交易組んでてよ。まぁ客人は持て成さなきゃならんだろ」
元就は元親の言葉を最後まで聞かずに、凪の元へと歩いて行った
「あ、おいッ」
「(わ!ほら来ちゃいましたよ!!行きましょうよ!)」
「(あ、はい!!)」
凪と鬼庭はそこから逃げようとした
流石に此所まで来たらやばいと思ったのだろう
「逃がさぬ!」
「うぎゃっ」
元就は歩いていた筈だったのに、凪の背後に既に居た
距離が少なからず有ったのだが…
「き、競歩に出れますね!!」
凪の寝間着の襟を掴んだ元就
「は?競歩?何を分からぬ事を」
「競歩は競技ですよ?あ、そうか。この時代には競歩はないのか」
「おい長曽我部。この娘、頭がおかしいのか?日輪の加護の少ない奥州は矢張り変な輩の多いことよ!」
頭がおかしいと言われて少しカチンときた
なんだか成実や政宗の事を馬鹿にされたような気がして・・・
ジリッと元就に詰め寄り、胸を人差し指でつついた
「変なのは貴方でしょ!全身緑で・・・!光合成でもする気ですか?」
「こうごうせい?何だそれは」
「草木の呼吸のことですよ。」
「凪様・・・!!」
鬼庭はオロオロしている
ここは長曽我部の領地とはいえ、凪が詰め寄っているのは中国地方をその手で治める智将
毛利元就なのだ
輪刀を持ってはいないといえど、あまり反感を買いたくない相手である
自分たちは争いの火種を作りに来た訳では無いのだから、起こさずとも良いゴタゴタは勘弁なのだ
「元就!止めろ!!そいつは俺の客人だ。手を出すことはゆるさねぇぜ」
「フン・・・。助かったな小娘よ」
「小娘じゃないです。名前があります。おくらさんは人の名前を言えないんですか?」
まるで喧嘩を売っているかのような凪
元親は二人の間に入り、どうにか二人を宥める
「てゆうか、お前帰れ!会談は後日って言ったろ」
「ふん!今日はもう無理だ。明日にでも帰る。我を泊めろ」
いきなり来ていきなり泊めろだなんて、なんて人だ
凪は元親さん可哀相ーと思いながらそれを見ていた
「凪様も。もう寝ましょう?」
「はい…」
では、と軽く会釈を鬼庭はすると先に行ってしまう
凪もそれに続いて元親だけにお辞儀をすると、二人に背を向けて歩き出した
「おい小娘」
「なんですか」
呼び止められて足を止める
振り向く事はしてやらない
「なかなか気丈な娘だな、貴様は。我は毛利元就、日輪の申し子なり。覚えておくがいい凪よ」
「え?」
今名前…
「では」
と元就もその場を去って行ってしまった
自分の教えて無いのに、名前を元就は言った
「……」
「あいつはよ」
元親が隣りに立って、だけれど凪の事は見ずに前を見据えて言った
「部下を駒扱いにしたり結構酷ぇ奴だけどよ、ちゃんと見えてるんだぜ?どんな状況でも、な」
鬼庭が何回か凪の名前を口に出していた
元就は、ちゃんとそれを聞いていたのだ
「根は悪い奴じゃねぇんだ。悪い奴だったら同盟なんか組まねぇしな」
「同盟?」
「テメェんとこと武田も同じ様な同盟組んでんだろ?」
同盟…
そういえば組んでいたな
「俺とあいつの国でも似た同盟を、な」
織田や豊臣に対するための同盟
この地方だと豊臣が一番危ないだろう
「まぁ今回は俺がワリィからな。お前等が来る日と会談を同じ日にしちまった俺がな」
じゃあな、と元親は去っていった
「オクラさんに明日謝らなきゃ」
つっかかってすみませんって…
廊下から見える月は
丸い満月だった