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「城下に行かない?」
6thコンタクト
凪に少しずつ慣れてきた成実がある日そんな事を言った
「城下、ですか?」
「うんそう。ずっとその服ばっかじゃん?梵が着物買いに行かないとだなって言ってたし」
まだ名前は呼んでくれないが砕けた、そう親しい人と話す話し方になっていた
凪はそれがちょっぴり嬉しいようだ
成実は成実で、異界から来た凪の持ち物に興味が有り暇があれば凪の部屋でそれらを見せてもらっていた
最初の頃に比べればとても距離は短くなった
「でもお金ないですよ」
「馬鹿だな~。それぐらい買ってあげるって!勝手に選んでも良いなら選んで買ってきちゃうけど、柄の好みとかあるでしょ?」
「で、でも悪いですよ!買って貰うなんて…!!」
「梵が出すって言ってんだからいいの!!こういう時は好意に甘えるんだぜ?」
だからといって、この二人が買うというとなれば普通の着物ではないだろう
「安物なら買って頂こうかな…」
「はぁ!?梵が駄目って言うよ?安物なんか」
やっぱり
「それにさ、その服だとちょっとやばいんだよね」
「え?」
成実は机に肘を置き、手を顔につける
そんな動作一つもまた美しく見えてしまうのは血筋なのか
「真田は知ってる?」
「あ、はい。この間話してましたよね(てゆうかゲームしてたから知ってて当然だけど)」
「今度、梵に手合わせをしに来るんだ。で…問題はお前の格好」
「あたしの?」
「真田幸村っつーとちょっとした事でも破廉恥だ―!って叫んじゃう訳。俺らはもう見慣れてるけど、その丈の短さでそうなる事も有り得る。まぁ、真田の目にお前をなるべく入れさせないけど、滞在してる合間に何か問題起こされても困んだよ」
あぁ、そういえば
夫婦で戦!を見ても破廉恥でござる―――!!なんて1で言ってたような…
純粋、では当てはまらない人物のようだ真田幸村という人物は
「わかりました。私のせいで何かあっても困りますから…行きます」
「よーしなら。ぼーん!行こうぜ―!!」
スパーン!と襖が勢いよく開いた
そこには着流しを着た政宗がいたのだった
「小十郎には言ってあるな?」
「もっちろん!」
凪は、二人を見ると諦めたように立ち上がり、二人に付いて行くことにした
馬をつかうのかと思いきや歩いて行くらしい
正面の門から出て行くと、城下町が見えた
色んな問屋や、甘味処、食事処、質屋等立ち並ぶ町中
その中一つの呉服屋に三人は入る
「はい、いらっしゃいませ~。あら殿!成実様!御久し振りで御座います」
奥から出てきたのは40代の多分この店の女将だろう
正座をし、頭を下げたあとにこっと気品ある笑みを見せた
「Hello.女将。元気そうだな」
「こんにちは女将さん。今日はこいつの着物買いに来たんだ。見せてくれる?」
「あらあら。可愛い子ですね。さぁさ、上って下さいまし!」
「し、失礼します…!!」
凪は店に入り、奥の部屋に連れて行かれた
今で言うVIP部屋なのだろうか…
「変わったお召し物を着ていらっしゃるのね。お嬢さんはどの様な色がお好き?」
微笑しながら女将は凪のジャケットを脱がし、下も脱がそうとしたが全力で拒否をした
成実は脱がないとごわつくよーと言ったが、流石に男二人の前で上はシャツ、下半身スパッツ一枚になるのは凪には恥ずかしかった
柄を聞かれたので少し悩み言おうとしたら政宗に遮られる
「本当平「hey.女将。薄いpinkの着物、蒼の着物何着か持って来い」
「畏まりました。では少々お待ち下さい」
女将はそう言うと部屋から出て行く
凪は政宗と成実の顔を伺う様に口を開いた
「あの…私が選ぶんじゃ…」
「ha!お前どうせ地味なのをchooseするだろうからな。俺らが見立ててやる」
えー
そしたら絶対派手なの選ぶじゃないですかーと内心思い、政宗と成実の機嫌を損ねない程度に聞いてみた
「じ、地味なのは駄目なんですか?」
「柄は地味でもいい。たださ、ほら折角俺らも付いて来て居る訳だし、好きなの何点かとあとは俺らの選んだの着て貰おうかなって。似たり寄ったりしたのだとつまらないじゃん」
「ぼ、冒険は結構です!!私シンプルなのがいいです―――!!」
誰にしも経験はあるだろうが、冒険をして買った服
試着していざ普段に着ようとし買い着てみると、なんだか自分に合っていない。やはりこの色・もしくはデザインは自分には似合わないのだ…とそんな失敗は一度はあると思う
冒険をためらい、服は同系統の服ばかりという保守的なタンスに化す事も無くは無いはず
凪は正しくそのタイプの人間であり、いつも着る服はモノトーン系で一時期の流行ものではなく、二年は着れる様なデザインを好んで着ていた
政宗が指定した色は小学生以来着た事がないのである
「ピンクとか無理ですって!似合いませんから!!」
「合わせなきゃわからねぇだろ」
「そうそう」
暫くすると女将が着物を持って来た
そこにはやはり何度見ても似合わなそうな色があった
「無理無理無理無理無理無理無理無理!」
「女将。コイツは貰うぜ」
「あ!ついでにそこの蒼!!そー!それそれ!!その着物と、そこの薄桃色のも!!」
「無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理!ってこの着物…!!」
凪はまじまじ着物を見た
生地を手に取りいろいろ触る
この肌触り、布の目の細やかさ、光沢…!!
「絹じゃないですか!!金糸使ってますし!!!何処が地味なんですか!!」
一応説明すると、金糸とは正しく文字のとおり金の色をした糸である
「普通だろ。というか」
「いや、こんなの買って貰えませんって!安物でいいですよ!!浴衣みたいな木綿のでいいですって!てゆうか二人が選んだ着物絶対高いですよね!!!!!????」
凪は二人が選んだ着物を見た
政宗が選んだのは普段着としても使えそうな青色の縞の着物と、もうひとつは上が白で下が桃というグラデーションがほどこされた着物である
グラデーションの着物の方は牡丹が描かれており、とても美しい。花粉の所は金糸が施されていた
成実が選んだ二点のうち一つは薄い蒼の色地に、鶴の姿が描かれたこれまた美しい品物だった
もう一つは政宗の選んだ薄いピンクよりちょっと濃いピンクの色地で裾に控えめたまけれど花が描かれ、色とりどりの花が着物の良さを引き立てている
全て買ったら、現代で買えば100万はくだらないだろうと予測は安易に出来た
それほどに品物は良いのである
「早く選ばないと決めちまうぜ」
「えぇッ!あ!待って成実さん政宗さん!!選びますから!!選びますから―――!!」
普段着にするには勿体ない高いの選ばないで下さい!普段着できるのがいいです!!と二人を押しのけて持ってきた着物を改めて見始めた
渋々、何度見ても高いだろう着物を眺める凪
ふ、と視線を逸らすとシンプルな柄な蒼の着物が目に入った
水の波紋のような、惹かれる柄。青海波、と言っただろうか
「これでいいです」
手に取り、まじまじと見る
ここに並んでるからにはいいものなのだろう。手触りだけで品質がいいのが分かる。
「じゃ、女将。その着物に着替えさせたら呼んでね―」
「は?」
成実は立ち上がると政宗と共に部屋から出て行こうとした
何を言っているのか
「それに着替えたら城下町巡るからさ!よろしく―」
聞いて無い
聞いてませんよ!そんな事!!
「着物買ったら帰るんじゃないんです?」
「帰る訳ねぇだろ」
「うん。だって折角城から出たんだしねぇ」
「着物なんて着た事ないからコケちゃいますよ」
だって現代では着物っておしとやかな人が着ると言うイメージが私にはある
因みにおしとやかとおとなしいは違うけれど
「Ha!そん時はそん時だ。行くぞ成実」
「はいはい。じゃあね~」
二人は部屋から出て行き、凪の耳に襖の閉じる音がやけに響いた
「ねぇ梵。あいつの事やたら気に入ってるね」
部屋を出た後、特別に用意された部屋に二人は居た
二階の見晴らしの良い部屋で、下を見れば活気溢れた通りが見えた
二人はしばし無言で、だけど座っていた成実が口を開いてそう言った
政宗は障子の近くにいて通りの様子を眺めながら成実を見ずに、答えた
「Ha!お前もだろうが。しらばっくれるなよ?この買い物、無理矢理くっついてきやがって」
「だってー。女の子の服選びなんて滅多にできねぇじゃん。って梵何。近い。近いから!!」
「しらばっくれるなと、言ったぜ俺は。お前、凪の事好きだろ」
「ハァ!?アイツをー!?有り得ない!!好みじゃないし、友達って奴?俺の好み知ってだろ梵。それに俺にはさー群がる女の子が沢山…」
「ほぉ?じゃ、手を出すなよ」
政宗の言葉に成実は固まる
それは、つまり
「え…梵アイツが好きなの」
「LoveじゃねぇLikeだ。この国で異国語を話す女も珍しい。それになかなか良い目をもってる。面白いぜあの女」
「…」
政宗は妖しく笑った
「...it not is any longer at awareness there...(気付いた時にはもうそこには無いぜ)」
政宗が何言っているのか異国語だから殆ど分からないが言いたい事はわかる気がした
暫く、時間がたった
気まずい空間に女将の声がした
「殿、成実様。出来ましたのでご覧下さいまし」
柔らかな声がしたと同時に後ろから凪の声がした
「女将さん!やっぱり無理です!うなじがスースーします…!!」
「開けろ」
「はい」
スーと襖が開いた
「「…」」
「う、似合わないなら似合わないで反応して下さい…」
開いた襖の先に凪がいた
凪は選んだ着物を着て、帯を締め、いつもは下ろして居る黒髪を上げてうなじを見せていた
カンザシを挿し、帯色が全体の青色を引き締めている
「似合いませんよねー」
むしろその逆
似合っている
異国の服に見慣れていたせいか着物を着た凪が別人にも思える
それはうっすらと施された化粧も関係あるだろう
今まで着ていた服を風呂敷に包み持つ凪
何処かの町娘、いや…町娘より綺麗に見えた
「女将、niceだ」
爪先から頭のてっぺんまで視線を移動させ、なかなかだなと改めて思う
「代金はいつも通り城に後で請求に来い」
「はい。わかりました。あぁ、沢山買って下さいましたから少しお安くしときますね」
「世話になったな。おい成実、凪行くぜ」
ぽーっとしていた成実と着物に未だ戸惑う凪に声を掛けて店を出る
(女は化ける、か)
正しくその通りだな、と政宗は喉を鳴らして笑った
「…」
凪は少し不安だった
二人は反応してくれない
感想を言ってくれない
似合ってないならそう言ってくれればいいのに…
何も言われないと、鬱な気持ちになる
政宗と成実に挟まれ、無言のまま歩いた
ふと町娘の姿が目に入り、あぁあの子みたいに可愛かったらな…と思ってします
凪は歩くのを止めて立ち止まった
「…どうした?」
成実がそれに逸早く気付き声を掛ける
俯く凪はポツリと、呟いた
「……ま…す」
「お前…」
「やっぱり、似合いませんよね!!き、着替えてきます…!!」
バッ、と今まで来た道を逆走し始める凪
成実と政宗は状況を理解し瞬時に跡を追う
が、ここは人が溢れる町中
人の流れにより思うように追いかけられない
「何なんだよいきなり!似合いませんて!似合ってるっつーのに!」
既に視界から消えた凪
成実は、暫く考えて政宗に言った
「梵、城に帰って待ってて」
「おい成実」
「城に戻ってるかもしれないじゃないか。だから戻った方が良い」
それは正論かもしれない
「アイツもさ、馬鹿じゃないとは思うから。危ない所とかは行かないと思う。責任持って連れてくから」
■■■■■■
ハァ…ッ
ハァ…ッ!
凪は走った
何処、何処
何処
「あのお店…何処」
着物を買った店で着替えようと考えたのだが、店の場所が分からない
町の外れに出て凪は近くにあった木に寄り掛かった
上がった息を調える
「あ……城に帰れない」
どう此所まで来たかわからない
どう帰ればいいのかわからない
でもこの格好で居たくない
凪は周りを見て人がいないのを確認して近くの小屋に入った
取り敢えず此所で着替えよう
女将がしてくれた帯の形を頑張って解こうとする
がまずは帯紐だ
…ってかなり堅いなおい!!!
「む…むむっ!あ、解けた!」
帯紐に戸惑ったが
なんとか解けたので帯を解き始める
シュルシュル…と衣の擦れる音が響く
着物はとても面倒臭いと思う…
「へぇ…お嬢ちゃん良い事してんねぇ」
だから気がつかなかった
着物に苦戦していて
人が入って来たのを…
■■■■■■■■■■■
ジャリ…
何処だ
何処にいった
城下町とはいえ、夜になると危ない
そこまで馬鹿じゃないだろうからゴロツキの居る様な所は行かないだろう
町人に聞いて凪のあとを追う
…泣きそうだった
あいつ、泣きそうだった
なんで泣く必要があるのか
似合ってないなんて言ってない
言えなかっただけだ
「その子なら小屋のある町外れに走って行きましたよ?」
「本当か!!ありがとう!」
町外れ
なんだってそんな外れまで…!!
「あ!探してるなら急いだ方がいいですよ!夕刻か夜当たりになると小屋のある方には手に負えない輩がうろつくんですよ」
何だと!!
それを聞いて成実は走る速度を上げた
■■■■■■
「や…!!だ、誰ですか…ッ!!」
「誰だっていいだろ。良い事しようぜ」
「良い…事って…やっ何脱がして…!!」
いきなり現れた男は、凪が脱いでいた着物をはぎ取ろうとしていた
「何でぃ。ヤるに決まってんだろ!こんな所で着替えなんてヤって下さいって言ってる様なものだぜ」
ククッと男は喉をならした
風体からして、町人ではない
武士でも無い…と言う事は荒くれ者だ!!
政宗と成実が言っていたのを凪は思い出した
それは幾日か前の事
『もし町に出るなら誰か共をつけて歩け。それと日があるうちに城に帰れ』
『何でですか?』
『荒くれ者やゴロツキがいるんだよ。城下とは言え安心とは限らない。人が沢山集まる所は、それを目当てに来る荒くれ者やゴロツキも集まるんだ』
『…』
『下手したら殺されるか、又は春を売る場所に売られるかされる』
『分かりました…気をつけます』
男は抵抗する凪の着物を脱がす
「っ…!!やだ!!やだやだ!!やだぁっ!!」
自分だって子供じゃない
この行為がなんなのか分かる
抵抗が、無駄だとは思わない
だけど男の力に敵う事は無い
「けっ…小振りな胸」
胸を掴み揉みしだく
嫌だ!!いやだいやだ!!
何でこんな場所に来たんだろ
成実さんと政宗さんから逃げなきゃ良かった
…おとなしく二人に付いていってれば…
後悔をしても遅い
…ハジメては、強姦なんて…洒落にならないよ…
もう凪は諦めた顔をした
誰も周りには居なかった
声を出してもきっといない
なら諦めるしかないじゃないか
助けが来るなんて思っていても来なかったら絶望に曝されるだけ
「お、大人しくなったな」
男は上機嫌になると襦袢に手を掛けた
でも。
「助けて…ッ!嫌だァッ!!」
諦めたくは無い
これが最後の足掻き
だけれど誰も来ない
…無駄…だったみたいだ
覚悟を決めた凪はゆっくり目を…閉じた時だった
小屋の暗がりの中、ジャリ…ッと砂の音がした
そちらの方をみる
そこには暗闇の中でも分かる、冷気を纏った成実がいた
「テメェ…!」
■■■■■■
小屋近くにたどり着いて当たりを見渡したが人がいない
だがその時、声が聞こえた
そう、聞こえたんだ
刀を構え俺は小屋に入った
そこには、男に組み敷かれた凪
脱がされた着物
はだけた襦袢
…諦めたような顔をした…あいつがいた
自分でも分かった
頭に血が上る感覚を
足元から自分の気が抑えきれずに流れ出るのがわかる
「な、なんだテメェ!」
「……」
上を向いていた凪
こちらを、見ない
だけど聞こえた
助けて
そう、ココロの声が聞こえた
男は刀を構えると成実に切りかかった
それをなんなく避けると、成実は背後を取り、男の首もとを刀の持ち手で打ち気絶させる
やはりゴロツキ
なんて事はない
一応手をきつく紐で縛り刀を男から遠い場所に置いた
そして凪の所に行った
凪は体を起こして、近付く成実をみて、ほっ…とした様な顔をする
成実は腰をおろし、はだけた襦袢を…胸をあまり見ない様に直す
「あ、あの…な、なる…」
「…の…」
「?」
「この馬鹿野郎ッ!!!!!!!!」
襦袢を直すと成実は凪に怒鳴った
「この間言った事覚えてなかったのかよ!!」
『下手したら殺されるか、又は春を売る場所に売られるかされる』
『分かりました…気をつけます』
それは覚えている
「覚えてましたよ!」
「なら、何で一人走り出した…!!何であんな顔で、逃げた!!」
成実は、凪の肩を掴み力を入れた
今まで見てきた成実の不機嫌な表情や警戒している顔とは違う怒りの表情だった
そんな表情に凪は何も答えれない
「っ…いたッ!!」
「答えろ」
肩に爪が食い込む
痛い
痛い
だけど、痛いけど
成実さんの方が
・・・
痛そうだった
「ィッ…!だ、だって…何も言ってくれなかったじゃないですか…!だから……似合ってないんだって思って…悲しく、なって…」
あぁ、泣きそうだ
思い出すだけで…泣きそうだ
「あたしよりも可愛い子とかいるんだから、そういう子に着せてあげれば…着せ替えてあげればいいのに…」
それが泣きそうだった理由
逃げた理由
グシャグシャになった髪が、梳かれた
癖の無い髪なのか梳いたら元の真っ直ぐな髪型に戻る
サラ…
成実は、その様子を見て眉の皺を深めた
「それが理由か…」
「…」
無言の肯定
肩に置かれた手を退けようと凪は成実の手に触れた
「悪い。俺らが悪かったな」
成実の謝罪の言葉が凪に痛く響いた
違う
違う
二人は悪くない
逃げた私が悪い
「わ、私こそ逃げてごめんなさい・・・・」
「それ、もう一回着て。似合ってるから」
「でも・・・」
「誰が似合ってないって言った?誰も言ってないだろ?似合うって!証拠が欲しいなら証明してもいい」
グッと成実は彼女に近づいて顔を近づけた
キスしてしまいそうになる距離
凪の左側に手をつく
その動作に凪はドキリとしてしまう
「城に帰ろう。その格好皆に見せてやればいい」
「で、でも!私、着物着れないんです・・・」
「え・・・」
「私一人で着物着れないんです。さっきも女将さんが全部してくれたんで、今着れと言われても」
「あー・・・着物羽織る位は出来るよな」
着物を肩にかけて凪はこうですか?と成実に聞いた
そして成実は少し困りながら、着せてあげると言った
「え・・・!」
「女将がやった感じにまでは出来ないけど簡単なのならな。はい此処持って」
テキパキと着物を着せる成実
男の人にこんなことをしてもらうなんて凪には初めてだった
心臓がドキドキする
真剣な目に、吸い込まれそう
あのごろつきは起きないだろうかとか色々考えて気を間際らせる
と、考えていたら残すところ帯を巻くだけとなっていた
「着物着たこと無いっていったよな。お前の世界に着物はないのか?」
「有りますよ。ただ、普段着で着ている人はそんなに居ないです。多分」
「多分って・・・」
本当の事だ
「ねぇ、成実さん。独り言だって思って聞いてください」
私、色が嫌いなんです
かわいい色とかかっこいい色とか、似合わなくて遠ざけていたんです
似合わないって一人の人に言われてから避けていたんです
実際買ってみてみると似合ってなくて・・・
だから、服も地味なのしか持っていません
選びません
「人の言葉って、大きいですよね」
その言葉一つで救われるし、傷つけられもする
冒険しても失敗すると、なんで思い込んでしまったのだろう
「成実さん。私この着物似合っていますか?」
この人の目をみてそう思った
成実さんの目は、あの人の目とは違った
どうして勝手に似合ってないって思ったの
自分のネガティブ思考が嫌になる
帯を締め終わった成実は、凪の正面に立ち笑みを浮かべて言った
「うん。似合ってる!」
流石俺だね。此処まで出来るって凄いよね!と成実は自画自賛した
城に帰ったら政宗さんに怒られて
小十郎さんにも怒られるんだろうなって思いながらも、
似合ってる
その言葉が私の中でいっぱいだった
6THコンタクトEND
おまけ
あれから一晩たち、城へ帰って事の次第を政宗に話したら呆れたようにため息を吐き、着物を着た私を見て
『随分Negativeな思考だな』
と言うと、私に制服よりそっちの方が似合うぜ。と私にだけ聞こえる様に耳元で囁いて何処かに政宗さんは消えてしまった
それからこっぴどく小十郎さんに怒られ、(私を襲おうとした男を何故連れて来なかったのか。とか、このご時世に女が一人でいるなんて…と小言を聞かされ続けた)お風呂に入って寝た。
随分と疲れていたようで直ぐに寝入ることができた。
スッキリして目覚め、身支度をして部屋を出た。
「good morning.」
「おはよう」
「あ。おはようございます政宗さん、成実さん」
小十郎さんの所に行って朝のご飯作りを手伝おうとしたら前から政宗さんと成実さんが来た
「買った着物は着ないのか?」
「政宗さん。あたし着物着れないんです。昨日だって成実さんに着せてもら」
「わ―――!!馬鹿!そこは言わなくて…!!」
「ほぉ…?着せてもらったのか」
隣りに居る成実を鋭い眼光で見る政宗
昨日の話しじゃそんなの聞かなかったがなぁ…
と嫌な笑みを浮かべていた
「馬っ鹿!梵にそれ言ってなかったのに何で言うんだよ!!」
「だって何で着物着ねぇのかって言われたから…!」
「クックック…」
「あー!梵!!誤解だから!!お前が考えてるような事は一切無かったから!!」
「Ha!成実…昨日言った事覚えてるか?」
「え…あぁうん」
「やっぱりそうなんだよ、お前」
と政宗は凪の横を通り抜け歩いていった
残されたのは二人だけ
片方はその意味がわからず政宗を見ていた
「若いねぇ。アイツ」
と言っても対して年も変わらない従兄弟なのだが…
「あそこ迄してまだ気が付かないたぁ、鈍感っつーか、通り越して馬鹿っつーか…」
成実が自分のココロに気が付くのがいつになるのか少し楽しみな政宗でした…